しょせん、一般教書演説は「合衆国の現状」に関する内容であって、「世界の現状」に関するものではない。だからバラク・オバマ大統領が、1月20日の夜に行った演説で国内の経済などについて長々と述べ、世界の経済的・政治的危機を無視したとしても、仕方がないだろう。
演説では、アメリカが大不況から立ち直ったという話や、新しい政府プログラムや減税を適用することで中間層の所得の伸び悩みに対処しようという大統領の計画(共和党員が過半数を占める議会では却下される可能性が高いが)については、広く取り上げられた。
しかし、オバマ大統領はアメリカ経済の耐久力と創造力については威勢よく述べたものの、経済、テロ、環境などに関する国際的な問題についてはあまり語らなかった。
国内の指導者たちは、アメリカが「必要不可欠な国家」であると主張する。もし本当にそうならば、オバマ大統領は20日の演説以上に、世界の現状に対して率直に、そして行動的になり、より明確なビジョンを打ち出すべきだ。
まず初めに、パリでの出来事についてはほとんど触れられなかった。大統領は、宗教の本質は寛容で平和を望むものだといった、いつもの決まり文句は述べたが、新たな懸念を述べることも、地球規模でテロへの強迫観念が当たり前のようになっていることにどう対処するか新たな考えを述べることもなかった。
このことは世界中に影響をもたらしている。アメリカも例外ではない。経済が強化されつつある今、テロや国家安全保障が有権者の高い関心を集めているという世論調査の結果も出ている。
ご存知の通り、大統領は戦争に関する話題を避けた。
ドローン(無人航空機)による攻撃は、外交政策ではない。アメリカが本当にアフガニスタンやイラクへの軍事関与をやめたとは、誰も信じていない。イランの指導者が核保有を切望する状況を断念させるために、誠意を持って交渉している証拠はどこにもない。
一方、大統領が提案する「中間層の経済対策」を理解するのは難しい。グローバル化した資本主義の負の側面、つまり容赦なく賃金を押し下げる圧力を和らげる方策が見えないからだ。
しかし、ジョージ・W・ブッシュ前大統領の政策を引き継ぎ、アメリカの金融業界を救済し保護したオバマ大統領が、世界的な制度改革を提案することはないだろう。実際、20日の演説では提案されなかった。
その代わり彼は、中国を除くアジア諸国との間で、包括的な貿易協定(TPP)を新たに結ぶことを強く求めた。そうする地政学的な理由はもちろんある(アメリカはアジア地域で中国が主導権を握ることを望んでいない)。しかしTPPは、オバマ大統領が救済したい中間層にとっては、ありがた迷惑でしかない。そのことはアメリカの労働組合に知れわたっているという事実に、オバマ大統領は言及しなかった。
最後に、当然ながら、地球温暖化も話題にあがった。この点に関してオバマ大統領は、進展があった証拠として、中国との間で合意された温室効果ガス排出削減について述べた。これはもちろん、歓迎すべき進展である。
しかし、科学者の主張が正しく、気候変動が絶え間なく増大しているのであれば、大統領は包括的な緊急対策を一般教書演説で提案する義務があった。そして実現させるために、環境対策に取り組むというオバマ大統領の新たな自信を活用すべきであった。
20日の夜、オバマ大統領は意外にも自信たっぷりの態度を見せた。だがそれに感銘を受けたのは、国外の人間よりも、アメリカ国内の人間であったことは間違いないだろう。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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