2014年も残すところ、一週間余り。ハフポスト日本版の編集部員が今年一番、印象に残った取材や編集について記します。
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インタビュー取材の約束の時間から遅れること、10分近く。「ごめんなさい。お待たせ致しましたー」「すみません、宜しくお願いいたしますー」。ディー・エヌ・エー(DeNA)創業者の南場智子さん(52)は、明るくはじけるような笑顔と大きな声で、私たち取材陣の前に登場した。その元気と愛嬌(あいきょう)の良さに、魅了された。
今年11月上旬、南場さんに単独インタビューを実施した。今から15年前、渋谷の代々木公園近くの20平米余りの小さなアパートの一室で、たったの5人で起業したIT企業のDeNA。今では従業員数約2000人を有する東証一部上場の企業にまで成長した。プロ野球球団さえも持っている。
南場さんは津田塾大卒後にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。そして、ハーバード・ビジネス・スクールで経営学修士(MBA)を取得した。肩書きだけをみれば超エリートの才女だが、実際にインタビューをしてみると、たいへん大らかで飾りっ気のない方だった。
1時間にわたったインタビューの後半、個人的にも聞きたかった、いくつかの質問を南場さんにぶつけてみた。ハフポスト日本版の現場の編集スタッフの中では、私は46歳で、一番の年長。南場さんも従業員の平均年齢32.1歳という若い職場で働いている。気をつけるべき点は何か。
「(若い世代は)やはり私には見えていない物が見えている世代なのです。世代、世代で見えるものが違うのです。ですから、自分が見えていないものを提案されたときに、頭ごなしに否定しないことが重要だと思っています」
南場さんは、かつてフリーマーケット(フリマ)アプリの案が若手社員から出されたときに、その案をつぶしてしまったことがあったという。そして、その後しばらくして、フリマアプリ専門のベンチャー企業が台頭してきたという。
「ああ、あのとき、私には見えていなかったのだと思いました」。南場さんは当時をそう振り返った。
今の若者へのメッセージについても思いを込めて話してくれた。
「いろいろなことが後の世代にツケ回しにされているのだけれども、どういうことになるかって、若者には知らされていない」「今の若者は、負の遺産を先輩方に作られてしまっている。それに対し、もうちょっと怒ってもいいかなと思う」と南場さん。
そして、「今、幸いなことに、為政者もインターネットを気にする。ネットは若者が圧倒的にマジョリティー(多数派)なので、そこでがんがんと声をあげてほしい」と、若者を叱咤激励していた。
そして、今後、活躍が期待される人材については、「日本人とか、何々会社の社員とかいうアイデンティティではなく、この地球の上で、いろいろ枠を超えて、固有名詞で何か成し遂げることができる人材になって欲しい」と直言。「これからというのは、良い大学から一流企業というレールもまったく無意味で、いろいろな枠を超えて、個で勝負をして通用する人材かどうか、が問われる世の中になる」と繰り返し述べていた。
とはいえ、自分の適職や人生の目標をなかなか見つけられず、海図なき人生航路にさまよう若者はきっと多いと思う。
そんな若者はどうすればいいのか。南場さんは、自分の人生を主体的に意思決定し、実力を付けながら、熱情を持って取り組むことができる分野を見つけるよう、訴えていた。
「何か思いを持って、それを突き詰めてみる、深めてみる。自分という人間のアイデンティティや強さ、何ができるのかを意識して作っていかないといけない」。
新規事業を次々と仕掛け、競争の激しいIT業界を生き抜いてきた南場さんは、今も「ベンチャー企業経営者」を名乗っている。そして、「永久ベンチャー」をDeNA社内の共通のスローガンにしているという。
南場さんの背中が若者に生き方を教えている。
今年、一番元気をもらったインタビュー取材だった。
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