メディアアーティストの真鍋大度(まなべだいと=写真)さんらを招いたシンポジウム「メディアとアートの現在と未来」が11月26日、目白大学(東京新宿区)で開催された。
真鍋さんがデータ解析とインスタレーションを担当した「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」は、2014年カンヌライオンズでグランプリ、2014年D&AD賞で最高賞を受賞。第18回文化庁メディア芸術祭でもエンターテインメント部門で大賞を受賞した。アートやエンターテインメント、広告の世界で、webとリアルをつなぐ斬新な演出は世界中から注目を集めている。
「Sound of Honda / Ayrton Senna 1989」
シンポジウムは、真鍋さんが手がけた作品や、実験中の動画を紹介する形で行われた。以下に一部を紹介する。
■ダンス×ドローン
真鍋さんは、これからのメディアやアートの方向性は「双方向=インタラクティブ(Interactive)」から「認識=コグニティブ(cognitive)」になると語った。
ジェスチャ解析技術を利用した映像との双方向の表現は、1970年代よりMyron W.Kruegerをはじめとした研究者によって研究が行われ、TVゲームなどで15年ほど前から試みられており、次の方向性はビックデータを活用した「認識」にあるという。双方向の可能性も引き続き模索しており、その一例としてダンサーとドローンといった新しいインタラクションの方向性を紹介した。
従来はドローンの動きをデザインするソフトウェアを使用していたが、振付家がドローンの動きを直感的に制作出来る環境を構築することで新たな振り付けを生み出す可能性があるという。
■歌×人工知能
2013年に森美術館で開催された「LOVE展」では、音声解析と人工知能システムにより、来場者が発する言葉に反応して、ミュージシャン・やくしまるえつこの歌声を生成するインタラクティブ・インスタレーション《LOVE+1+1》を発表したという。
例えば「夏の終わり」といった言葉を観客が発すると、楽曲のデーターベースなどをもとに5・7・5・7・7の定型詩がリアルタイムで生成される作品だ。
■写真×人工知能
雑誌「Ginza」では、「人工知能は、プロのフォトグラファーを超えることができるのか?」という連載を開始。プロのカメラマンが撮影した写真を、人工知能を用いて再現するために、心拍数、表情筋や目線の動きなどを分析。同じ条件で撮影したときのクオリティを実験するという。
■ライブ×ビッグデータ
Perfumeのライブでは、観客参加型の「3DScan System for Perfume」を利用。観客の身体を3Dスキャンしたデータによって、当日に行われたライブの映像を作成。合計で1万体のスキャンデータを取得。現在は計算量が多くリアルタイムでは難しい表現だが、5年以内にはこういった表現もリアルタイムで可能になっていくという。
その他、ライブ向けのアプリ「Perfume Music Player」を公開。観客の楽曲視聴情報や位置情報などのビックデータを映像制作の際に使用する試みも行っている。
真鍋さんは、『Perfume Official Global Website』のディレクションのほか、2013年には世界中で反響を呼んだカンヌ国際クリエイティブ・フェスティバルでのPerfumeのパフォーマンスの演出を手がけている。
■言葉×データ
5月に放送されたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」では番組の最後に、「プロフェッショナルとは」という言葉をデータ分析によって表現した。Twitterでの発言や、プロフェッショナルとされるTEDスピーカーの言葉などをデータ化、生放送で生成されたのは「炎上を呼ぶときに集まる人」「伝えるレベルを選ぶ人ですかね」「トップ、言葉、限界を捨てる人の巻き」だったという。
現在も特設サイトでは、「生成」をクリックすると言葉を生成できる。
膨大なデータから作品のストーリーを生みだすデータマイニング。データを可視化することで生み出された作品は、観るものにリアルな感動を与えている。
※初出時、真鍋大度さんの名前を誤って表記しておりました。お詫びして、訂正いたします。(2014/11/28 09:00)
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