安倍晋三首相は11月18日に首相官邸で会見を開き、21日に衆議院を解散し、2014年内に総選挙を行うことを表明した。2015年10月に予定されていた消費税率の10%への引き上げは1年半、「延期すべきだと結論に達した」と話した。
会見冒頭の安倍首相による解散表明の全文は、以下の通り。
■安倍首相「デフレ脱却のチャンスを手放すわけにいかない」
本年4月より8%の消費税を国民の皆さんにご負担いただいております。5%から8%へ、3%への引き上げを決断したあの時から、10%へのさらなる引き上げを来年10月に行うべきかどうか、私はずっと考えてきました。
消費税の引き上げは、我が国の世界に誇るべき社会保障制度を次世代に引き渡し、そして子育て支援を充実させていくために必要です。民主党政権時代に私たちは野党ではありましたが、税制改革法案に賛成いたしました。
しかし、消費税を引き上げることによって景気が腰折れしてしまえば、国民生活に大きな負担をかけることになります。そして、その結果、税率を上げても税収が増えないということになっては、元も子もありません。
経済は生き物です。昨日、7〜9月のGDP速報が発表されました。残念ながら成長軌道には戻っていません。消費税を引き上げるべきかどうか、40名を超える有識者の皆さんからご意見を伺いました。そして、私の経済政策のブレーンの皆さんからご意見を伺い、何度も議論を重ねてまいりました。
そうしたことを総合的に勘案し、デフレから脱却し、経済を成長させる「アベノミクス」の成功を確かなものにするため、消費税10%への引き上げを来年10月には行わず、16カ月延期すべきだとの結論に至りました。
しかし、ここで皆さまに申し上げておきたいことは、「三本の矢」の経済政策は確実に成果を挙げつつあります。経済政策においてもっとも重要な指標は、いかなる国であっても雇用であり、賃金であります。政権発足以来、雇用は100万人以上増えました。今や有効求人倍率は22年ぶりの高水準です。この春、平均2%以上、給料がアップしました。過去15年間で最高です。
企業の収益が増え、雇用が拡大し、賃金が上昇し、そして消費が拡大していく。そして景気が回復していくという「経済の好循環」がまさに生まれようとしています。ですから私は何よりも、個人消費の動向を注視してまいりました。昨日発表された7月から9月のGDP速報によれば、個人消費は4〜6月につづき、1年前と比べ2%以上減少しました。
現時点では3%分の消費税率引き上げが、個人消費を押し下げる大きな重しとなっています。本年4月の消費税率3%引き上げに続き、来年10月から2%引き上げることは、個人消費を再び押し下げ、デフレ脱却も危うくなると判断いたしました。9月から政労使会議を再開しました。昨年この会議を初めて開催し、政府が成長戦略を力強く実施する中にあって、経済界も賃上げへと踏み込んでくれました。「ものづくり」を復活させ、中小企業を元気にし、女性が働きやすい環境を作る、成長戦略をさらに力強く実施することで、来年の春、再来年の春、そしてそのまた翌年の春、所得が着実に上がっていく状況を作り上げてまいります。
国民全体の所得をしっかりと押し上げ、地方経済にも景気回復の効果を十分に波及させていく、そうすれば消費税率引き上げに向けた環境を整えることができると考えます。そのためにも個人消費のテコ入れと、地方経済を底上げする力強い経済対策を実施します。次期通常国会に必要となる補正予算を提出してまいります。
財政再建についてお話しいたします。「社会保障と税の一体改革」法では、経済状況を見て消費税引き上げの是非を判断するとされています。今回はこの景気判断条項に基づいて、延期の判断をいたしました。しかし、財政再建の旗を降ろすことは決してありません。国際社会において我が国への信頼を確保しなければなりません。そして、社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たしてまいります。安部内閣のこうした立場は、一切揺らぐことはありません。
「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後にさらに延期するのではないか?」といった声があります。再び延期することはない、ここで皆さんにはっきりと、そう断言いたします。平成29年(2017年)4月の引き上げについては景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。「3年間、三本の矢をさらに進めることにより、必ずやその経済状況を作り出すことができる」。私はそう決意しております。
2020年度の財政健全化目標についても、しっかりと堅持してまいります。来年の夏までに、その達成に向けた具体的な計画を策定いたします。経済再生と財政再建、その2つを同時に実践していく、そのための結論が本日の決断であります。ただいま申し上げた内容を実現するために、来年度予算の編成にあたるとともに、関連法案の準備を進め、来年の通常国会に提出いたします。
このように国民生活にとって、そして国民経済にとって重い重い決断をする以上、すみやかに国民に信を問うべきである。そう決心いたしました。今週21日に衆議院を解散いたします。
消費税の引き上げを18カ月延期すべきであるということ、そして平成29年(2017年)4月には確実に10%へ消費税を引き上げるということについて、私たちが進めてきた経済政策、成長戦略を前に進めていくべきかどうかについて、国民の皆さまの判断を仰ぎたいと思います。
なぜ、今週の解散か説明いたします。国民の皆さまの判断を仰いだ上で、来年度予算に遅滞を引き起こさないギリギリのタイミングであると考えたからであります。現在、衆議院において私たち連立与党、自民党・公明党は多くの議席をいただいております。本当に有り難いことであります。「選挙をしても議席を減らすだけだ。何を考えているんだ?」という声も承知しております。戦いとなれば厳しい選挙となることは、元より覚悟の上であります。しかし、税制は国民生活に密接に関わっています。「代表なくし課税なし」、アメリカ独立戦争の大義です。
国民生活に大きな影響を与える税制において重大な決断をした以上、また私たちが進めている経済政策を……。賛否両論あります。そして抵抗もある。その成長戦略を国民の皆さんと共に進めていくためには、どうしても国民の皆さまの声を聞かなければならないと判断いたしました。「信無くば立たず」。国民の信頼と協力なくして、政治は成り立ちません。
今、アベノミクスに対して「失敗した」「うまくいっていない」というご批判があります。しかし、ではどうすればいいのか。具体的なアイデアは、残念ながら私は一度も聞いたことがありません。批判のための批判を繰り返し、立ち止まっている余裕は今の日本にはないのです。私たちが進めている経済政策が間違っているのか正しいのか、本当に他の選択肢があるのかどうか、この選挙戦の論戦を通じて明らかにしてまいります。そして国民の皆さまの声を伺いたいと思います。
思い返せば政権が発足した当初、大胆な金融緩和政策に対しては反対論ばかりでありました。法人税減税を含む成長戦略にもさまざまなご批判を伺いました。しかし「強い経済を取り戻せ」。それこそが、2年前の総選挙で私たちに与えられた使命であり、国民の声である、そう信じて政策を前へ前へと進めてまいりました。岩盤規制にも挑戦してまいりました。
あれから2年、雇用は改善し、賃金は上がり始めています。ようやく動き始めた経済の好循環、この流れを止めてはなりません。15年間、苦しんできたデフレから脱却する、そのチャンスを皆さん、ようやく掴んだんです。このチャンスを手放すわけにはいかない。
あの暗い混迷した時代に再び戻るわけにはいきません。デフレから脱却し、経済を成長させ、国民生活を豊かにするためには、困難な道であろうとも、この道しかありません。景気回復、この道しかないんです。国民の皆さまのご理解をいただき、私はしっかりとこの道を進んでいく決意であります。私から申し上げたいことは以上であります。
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