作家の村上春樹さんが、ドイツの新聞社が主催する「ウェルト文学賞」を受賞した。村上さんは11月7日、ベルリンで開かれた授賞式でスピーチし、1989年のベルリンの壁崩壊から四半世紀を迎える今、世界には「民族、宗教、不寛容といった壁」があると指摘。「壁のない世界」の実現に向け、努力することの大切さを訴えた。オーストリアのザルツブルガー・ナッハリヒテン紙などが報じた。
村上さんは約200人の聴衆を前に英語でスピーチ。25年前のベルリンの壁崩壊について「ついに壁がなくなり、世界は変わった。人々は安堵した」と話した。
「しかし、すぐに別の壁が現れた」と村上さんは続けた。アメリカの同時多発テロや紛争、中東問題など、世界中で混乱が生じている現状について「人種や宗教、不寛容性、原理主義、そして欲望や不安などの壁だ。私たちは、壁なしで生きることができないのか」と指摘する。
村上さんは「壁」が人々や異なる価値観の間を隔てる象徴であり、自分たちを守るために「他者を排除する」ものになっていると述べた。
一方で、村上さんは壁のない世界の実現は可能だと説く。「かつてジョン・レノンが歌ったように、私たちには想像する力がある。暗く暴力的な現実に直面する世界で、それは無力ではかない希望に思える。だが、その力は、私たちが気を落とさず、歌い、語り続けることの中に見いだせる」として、自由な世界について語り続ける「静かで息の長い努力」が重要だと強調した。
村上さんはベルリンの壁の崩壊が、市民の平和的なデモによって行われたことも紹介。スピーチの最後に、「このメッセージを自分たちの壁と今この瞬間も戦っている香港の若者たちに伝えたい」と述べ、香港で民主化を求め大規模なデモを続けている若者たちにエールを送った。
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