エボラ出血熱に感染後に回復したヨーロッパ人の看護師2人が、日本製の「アビガン錠」の投与を受けて回復していたことがわかった。患者が立て続けに回復した「アビガン錠」に、エボラ特効薬としての期待が高まっている。
10月19日、スペイン人の女性看護師テレサ・ロメロさんが、エボラ出血熱から回復した。彼女に投与されたのは、富士フイルム子会社の富山化学工業が開発した「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)だったと、CNNが報じた。
まだワクチンが存在しないエボラ出血熱と戦うために、彼女は2つの主要な治療を受けた。まず最初は、エボラ生存者の抗体を用いた点滴だった。この抗体は、西アフリカの病気を生き延びたカトリック修道女からもたらされた。
また、ロメロさんは実験的な抗ウイルス薬「ファビピラビル」を投与していた。スペインでは、他の試験薬「ZMab」も輸入していたが、世界的に品薄になっており古いバージョンしか使うことができないため、医師は使用を取りやめたという。
(Spanish nurse's aide is Ebola-free in third test - CNN.com 2014/10/20)
同様にエボラ出血熱に感染したフランス人の女性看護師にも、アビガン錠が投与されて治療を受けていたが、10月4日に回復して退院した。エボラ出血熱は、西アフリカのギニアやリベリアなどで流行が続いており、疑い例も含めて、10月17日の時点で死者は4555人、感染者は9216人に上っている。
10月10日の世界保健機関(WHO)の発表を元に、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が作成した感染マップ
■「アビガン錠」とは
「アビガン錠」は、富山化学工業の古田要介氏によって1998年に発見された抗インフルエンザウイルス薬。2014年3月に日本で製造・販売の承認を取得した。抗インフル薬として一般的な「タミフル」や「リレンザ」などは、ウイルスの遺伝子が細胞内で複製された後の放出を阻害して感染の拡大を防ぐ。これに対してアビガン錠は、ウイルスの遺伝子複製そのものを阻害するという特徴がある。
2014年8月ごろから、インフルエンザウイルスと構造が似ているエボラウイルスの治療に、この薬が有効ではないかという説が持ち上がり、富士フイルムのアメリカでの提携相手であるメディベクター社は「アビガン錠」をエボラ出血熱感染者の治療に使えるよう申請する意向で、アメリカ食品医薬品局と協議している。
■エボラ感染拡大に備えて増産へ
10月20日には、富士フイルムがエボラ出血熱対策として「アビガン錠」を追加生産することを発表した。
11月中旬からは、フランス政府とギニア政府が、エボラ出血熱に対する「アビガン錠」の臨床試験をギニアで始める予定だ。感染拡大が懸念される中、この臨床試験で効果や安全性が認められた場合、より大規模な「アビガン錠」の提供要請が見込まれるため、増産を決定したという。
本臨床試験で「アビガン錠」のエボラ出血熱に対する効果並びに安全性が認められた場合は、より大規模な臨床使用のための薬剤の提供要請が見込まれます。
当社は、現時点で2万人分の錠剤を有し、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有しています。今後、さらなる臨床使用が進む場合に備え、エボラ出血熱向けとしての「アビガン錠」の生産を11月中旬より行います。
感染規模がさらに拡大した場合においても十分な量を継続的に供給可能とするため、追加生産により備えておくべきと判断いたしました。
(「アビガン(R)錠200mg」のエボラ出血熱向け生産について : ニュースリリース | 富士フイルム 2014/10/20)
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