同性愛者を受け入れるとしていたカトリックの改革は、失敗に終わった。それでも改革を推進する法王フランシスコは「神は新しいことを恐れていない」と人々に呼びかけている――。
ローマ法王庁(バチカン)で開かれた「世界代表司教会議(シノドス)」の臨時総会は10月18日、「家族」に関する最終報告書を発表した。13日に発表した暫定報告書には「同性愛者らはカトリック社会に恩恵をもたらす」との表現が盛り込まれており、カトリックの改革に注目が集まったが、教会内からの強い反対で削除。結局、同性婚をタブーとするカトリック教会の基本姿勢が維持されることになった。ニューヨーク・タイムズなどが報じた。
会議には200人近くの枢機卿や司教らが参加。13日に公表した中間報告では「同性愛の人々を受け止めること(Providing for homosexual persons)」と題した項目を設け、「同性愛者もキリスト教社会に貢献できる才能と資質がある」とする文章を盛り込んだ。
しかし、内部の保守派が強く反発したため法王庁は「同性愛指向の人への配慮(The pastoral care of people with homosexual orientation)」とトーンダウンした項目に変更。「同性愛者については敬意と配慮をもって迎え入れなければならない」とする内容の案で折衝を試みた。ところが、この部分さえ賛成118、反対62と、採択に必要とされる3分の2の支持を得ることができなかった。
イギリスのカトリック・ヘラルドによると、最終報告書では2003年に教理省から発表された「同性婚を、神が定めた結婚や家族と類似のものとする理由は、全くない」という文書を引用することになったとされる。
■法王フランシスコ「神は新しいことを恐れていない」
それでも、改革を推進していた法王フランシスコは、「シノドスの参加者にもし偽りの平静のために皆が同意し、活発な議論がなかったとしたら、私は大いなる不安とさみしさを感じただろう」と語り、さらには報告書について同意を得られなかったものも含めて異例の公開を決定した。否決されたのは同性愛に関する項目のほか、離婚や再婚に関する一部の項目だった。
イギリス・BBCは、参加者の半分以上が賛成票を投じていたことをあげ、今後議論に対する余裕ができたと評価している。イギリスのカトリック雑誌「ザ・タブレット」の編集者も、「シノドスで議論が行われたという自体だけでも大変な成果」と述べた。
法王フランシスコは最終報告書の発表から一夜明けた19日、「神は新しいことを恐れていない」と述べ、人々を勇気づけた。当時は一切避妊を認めていなかったカトリック教会のなかで「生活苦にある夫婦の場合は、妊娠しやすい期間に性的関係を避ける避妊法は認められる」との回勅を出して議論を巻き起こした法王パウロ6世の列福のミサでのことだった。
「神は新しいことを恐れていないのです。神が絶えず思わぬ方法で私たちを驚かせ、私たちの心を開かせ、私たちを導いていることからもわかります。神は私たちを新たなものにする。神は常に私たちを”新しいもの”にしているのです。(中略)どれほど神は“新しさ”を愛しているのでしょうか!」
(ローマ法王庁:パウロ6世の列福式での法王フランシスコからのメッセージより 2014/10/19)
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