小渕優子・経済産業相の政治団体が開催した観劇会の収支が大きく食い違っている疑惑が指摘されていた問題で、小渕氏は10月20日午前8時30分前、首相官邸に入り、安倍晋三首相と会談。「国民の理解を得るのは難しい」として辞表を提出した。
安倍首相は、辞表を受理した。NHKによると、経産相の臨時代理には高市早苗・総務相を充てるという。
小渕氏は自らの後援会など政治団体が会員向けに開いた「観劇会」で、収入と支出の差が3年間で約4300万円にのぼっていたことなどが政治資金収支報告書などから明らかになり、観劇費用の一部を政治団体が負担した可能性が指摘されていた。
小渕氏は午前9時40分ごろから経済産業省で記者会見に臨んだ。
【冒頭発言】
このたびは私の関係する政治資金団体の収支報告書の記載に際して、様々な疑問を提示されました。そのことにつきまして野党の皆様から数々のご質問を頂き、本来やらねばならない審理に大きな影響を与えてしまったことを重く受け止めています。このように大変お騒がせをしてしまったこと、ご心配をおかけしていることに対し、国民の皆様、私を長く支援して下さっている後援会の皆様、地元群馬の皆様、ご迷惑をかけているすべての皆様に心からのおわびを申し上げます。
今回大きく分けて2つの問題が指摘をされていると理解しています。まず資金管理団体における物品購入。2つめは後援会の観劇旅行など行事費用に関する問題。
まず物品の購入についてご説明申し上げます。事務所費や組織活動費に計上されている物品購入等につきましては、実際に購入したことを領収書などで確認する作業を進めておりますが、公私の区別についてはしっかりつけさせていただいていることを改めて申し上げたいと思います。その上で報道などで指摘された点についてご説明します。
地元名産の下仁田ネギやコンニャクは、政治活動でお付き合いのある県外の方への贈答であり、なおかつ地元の名産を紹介することは、地元群馬の振興にもつながると思っておりました。ベビー用品や化粧品は、私が子を持つ女性議員であることから、報道などで私の子や自分用ではないかとの誤解を示されるコメントがありました。しかしベビー用品は父の代からご支援頂いている県外の方の家族の出産祝いや誕生祝いといった社交儀礼として購入したものであり、また化粧品や服飾品は私が団長として海外出張のお土産として購入しお渡ししたものでした。一部報道には関係者に品物を送るのは個人としての社交だからポケットマネーで行うべきとの指摘がありますが、会社や団体が経費で社交儀礼をするのと同じく、政治家が政治活動を行う中で、様々な人と交流を持ち人脈を広げていくことは重要な仕事の一つであり、政治活動の経費として認められるものと思っています。
また、私の義理の兄が経営する服飾雑貨店から物品を購入している点ですが、このお店は私の姉がデザインした品物を販売しており、一般の品物とはまた違った話題で交流を深められるので大変重宝しています。
次に小渕優子後援会が実施した後援会の観劇行事の収支について。後援会の収支報告書によれば、観劇費用として計上された入場料やバス代などの支出額が、観劇の参加費として参加者から徴収した収入額を上回った年があることから、後援会が不足額を補塡したのではないか。そうだとすれば選挙区の者への寄付であり公職選挙法に抵触するのではないか、とのご指摘がありました。観劇会は、私の後援会の女性部大会の一環として行われている重要な後援会行事であり、私も毎年ではありませんが、日程が合えば毎年ご挨拶にうかがっています。ただ私は、参加された方や事務所の関係者から、「皆さん実費を頂いている」と聞いていたので、そもそも後援会が参加費の一部または全部を肩代わりしているとは思っていませんでした。今回このような報道に接し、大変驚き、すぐに後援会の方に確認をお願いしました。そして今日までに後援会から報告を受け、分かったことについてご説明します。
まず観劇会は、小渕優子後援会女性部大会の一環として行われた後援会行事の一つであるとのことです。H19年から毎年行われ、今年も10月に行われたとのことであります。H24年の収支報告書には観劇会の記載がありませんでしたが、実施したことは後援会事務所で確認しました。この観劇会は公演を貸し切って行っています。だいたい1回の公演で1000人程度、これを2グループで行っていますので、毎年の参加人数は2回を2000人超で実施しているとのことです。参加者から頂く費用はH19年は1人1万1千円でしたが、その後は今年まで1人1万2千円になっているとのことです。費用の中には入場料や食事代、バス代も含まれます。なお、一部報道で、観劇の参加費だけで1万2千円程度になるとのご指摘がありましたが、通常の公演に比べ、貸し切りの場合は入場料を相当安くしてもらっているとのことであり、その点での疑念はないものと思います。
劇場の定員に限りがあるので、毎年後援会の各地区に参加可能人数を割り振りします。そして各地区の責任者が取りまとめます。申し込み書に名前などを記入していただき、参加費として1万2千円を責任者が預かり、持参して頂いていたとのことです。
これは今年の参加費と小渕優子後援会女性部大会の申込書が入って後援会事務所に持参して頂いたもののコピーです。中には「会費を添えて申し込みます」と書かれてお名前、住所が書かれたものが人数分すべてそろっています。マスコミの皆様も地元で取材を行って、後援会もH22年参加者名簿をもとに電話や訪問で参加費徴収について確認しています。昨日現在までにお尋ねした753人全員が1万2千円を払って参加されていることを確認しています。また、参加費を集めて頂いた後援会責任者の中には、預かった会費を専用の入金口座に入金し、管理していた方もいらっしゃいました。この方はH22年から後援会の複数の地区を回り、各地区ごとに参加費を預かると、預かり専用の銀行口座に入金し管理していただきました。これが専用口座の預金通帳のコピーです。全地区の参加者が集まると、事務所にご持参を頂いているとのことです。このようにきちんと後援会の皆様からは参加費を頂いております。
とすると、暦年の後援会の収支報告書の記載には大きな疑問があると言わざるをえません。実費として徴収した収入が過小に記載され、不記載となっているものが多額に上っていると思われます。すなわち毎年の参加人数の実数は名簿などをもとに再確認していますが、観劇の1回公演で少なくとも1千人参加していることからすれば、2回で2千人の参加があり、1万2千円×2千人=2400万円の観劇代参加費用が収入に計上されていなくてはならないことになります。しかしH22年は372万8000円、H23年は369万3000円となっています。H24年に至っては収入も支出も計上されていません。これではご指摘を受けている通り、大きな疑念があると言わざるをえません。H24年の支出も含め、かかった費用の点も再度確認する必要があると思っています。
このように収入と支出の双方にその実態があったのか否か、私自身大きな疑念を持ったところであり、収支報告書の内容のすべてを関係政治団体の報告書を第三者的な観点から調査して頂く必要があると考えています。そこで関係ない外部から弁護士や税理士などの専門家を入れて客観的な調査をして頂くことにしました。政治団体間の資金のやりとりも収支報告書上あったとされているので、その収支と支出が真実あったのかも含めて調査をしていただくことにしました。ただ、調査範囲は多数の団体、個人に及ぶことから、相応の調査期間を必要とする状況にございます。このような状況となっていることは、まことに不徳の致すところであり、自らの関係政治団体の資金問題について引き続きしっかり調査をし、正すべきを正し、一日も早くご支援を頂いている信頼を取り戻すことに専念したいと思います。自らのこうした問題によって、経産大臣として経済政策、エネルギー政策に停滞をもたらすことは許されることではありません。ここで大臣の職を辞し、こうした疑念を持たれていることについて、しっかり調査をし、こうした疑念を持たれていることについてしっかり調査をし、皆様方にお示しできるよう、このことに全力を傾注して参りたいと考えています。安倍内閣の一員として経済の再生、女性の輝く社会の実現、その他様々な課題に対し、何一つ貢献が出来なかったことを心から申し訳なくおわび申し上げたいと思います。
【質疑応答】
Q 改めてご自身の政治資金団体の収支報告に厳しい声があがっているが、受け止めは。
A 私の関係する政治資金団体の収支報告の記載をめぐって様々な疑念を提示され、このような形でお騒がせしていることを大変申し訳なく思っています。今日ここでお示しできたこと、そして引き続きしっかり調査をしていかなければいけないことがあります。もう一度皆様の信頼を取り戻すことができるよう、出来る限りの調査をし、お示しさせて頂きたいと思っています。
Q 辞任しなければならないと決めたのはいつか。
A 先週の委員会の中で、自分自身、そのような気持ちを持っていったと思います。
Q 経産省の所管では原発再稼働や再生エネルギーなど課題山積だが。女性の活躍推進として期待する声も大きかった。
A 経済産業大臣としても様々な課題がありました。また女性政策についても多くの期待を頂いていたことは十分承知しています。その中で役割を十分に果たすことができなかったこと、本当に残念に思っているとともに、たくさんのご期待を頂いた方々に申し訳ない思いでいっぱいです。
Q なぜ見抜くことができなかったのか。なにがいけなかったのか。福島第一原発に就任後すぐ訪れ、全力で取り組むと強調していたが、信頼回復のために政治活動をどのように取り組んでいくのか。
A 私自身、自分が代表を務める政治資金管理団体には監督責任がありました。それ以外の資金管理団体について、長年私が子どもの頃からずっと一緒に過ごしてきた信頼するスタッフのもとで、お金の管理をして頂いていました。その監督責任というものが十分ではなかったのかと思っています。
福島の件については、経済産業大臣ではなく議員の一人としても、これまで経験したことのない事故に対して、次の世代のためにしっかりやらねばならないことをやらねばならない。一政治家であっても同じことだと思っています。後任の大臣の方がしっかり進めて頂けるものと思っています。
Q このタイミングは野党から求められた国会での説明責任を放棄することになると思うがどうか。現時点で議員辞職についてどう考えるか。
A 今回、様々な調査をし始めたところ、ここから先のことについては私の事務所や後援会による調査ではたぶんわからない。しっかり第三者を入れて調査しないと解明できないと思っています。そうしたこととともに、それでは果たして経済産業大臣の重責を両立できるのかと言われれば、それは難しいと判断しました。大臣の職は辞することになりますが、議員としてしっかり政治家としての説明責任を果たしていきたいと考えています。
Q 大きな疑念とおっしゃっていたが、他人事に聞こえるところがある。ご自身が代表を務めている団体からも観劇会の支出がなされている。ご自身の責任をどう感じるか。
A 決して他人事という思いではありません。ただ本当に申し訳ないのですが、私自身が分からないことが多すぎます。私自身も「何でこうなっているのか」という疑念を持っています。私が代表を務めます政治資金管理団体において、「信頼するスタッフが収支報告書を提出してきます」という報告をもらっていました。何かあれば私の方に言ってくるものだと思っていました。ですので、代表者としての監督責任は私自身が甘かったと思っています。
Q 公選法違反の可能性もあるが、議員辞職は今後どうするのか。
A これから調査を進めて頂きますが、法律にひっかかっていくのかも含めて、これからのことでありますし、私自身がしなければならないことは、私を信頼して応援してくれていた多くの方々がいますので、その方々にきちんと説明できる状況にしなければいけないと思います。
Q ワインを贈っていたとの報道については。
A 私も今日の新聞を読んで知ったこと。そうしたワインがあることも承知していますが、当然のことながら選挙区外に何かの形で使っているものと承知しています。私がお渡ししたことではないと思います。しかしそのあたりのことも含めて調査していきます。
Q 監督責任の話をしているが、小渕さんでさえチェックしきれなかったのか。振り返って具体的にどういう点が甘かったのか。
A こういう形になった以上、全てが甘かったと思います。私自身の責任は重いと思います。
Q それは分かるんですが、どういう形で不満があるのか、どう解消するのか。
A これについては私自身も全体像、お金のやりとりというものもあります。なぜそのときにそういうお金の出入りがあり、どうしてこういう収支になるのか。現段階ですべてを見通すことができない状況にあります。この場ですべてを明らかにして皆様方にご理解頂くことができないことは私も忸怩たる思いですが、正直申し上げて全体像がわからない。ですので第三者も入れて中立的な方に入ってたいただき、一から調べて頂くしかないと思っています。
Q 総理とはどのようなお話を。
A 私からはお詫びを申し上げました。総理は自らが今回のことに対して、公式にお話しされる機会があるのか分かりませんが、総理のコメントはそちらから聞いて頂ければと思います。
Q 小渕さんは改造内閣の目玉だった。その大臣が辞める。第2次安倍内閣でやめた人はいない。安倍政権への影響は大きいと思うが、どう思うか。
A 自分自身が目玉であったかは分からないが、しかし安倍政権においては様々な政治課題が山積している中、一丸となってやっていかなければならない矢先に私自身の問題で大きな影響を及ぼしてしまう。そのことについては重く受け止めています。
Q 地元の有権者への贈り物は一切していないと言い切れるか。もし法律違反が明らかになったら議員辞職の考えはあるか。
A これまで物品購入に様々なご指摘を頂きました。ワインの購入については、しっかり調査していきたいと思いますが、現段階で提示されていることについては、今確認されている段階では、選挙区内でお配りしたことはないものと承知しています。まずは今、しっかり調査し、それをお示しすることがいちばん大事なことではないかと思っています。
Q 閣僚の中にはもっと大きなスキャンダルを抱えた方がいる。なのに小渕大臣は自分の騒動が目くらましに使われたんじゃないかという無念さはないか。
A 今ご指摘を受けて、そういうことを思われているのかと初めて知りました。
Q 34歳で閣僚入りされて、40歳で初の女性経産相。そのことをどんなふうに受けて止めていらっしゃるか。今後の政治に向き合う姿勢を。
A 34歳で少子化担当相、このたび経産相の重責を頂戴し、このようなことになってしまいました。特にそれ以上でも以下でもありません。政治家としては、すべて一から出直そうと思っています。私が大事にしていた後援会の皆様の名誉を傷つけることでもあり、かつ私に頂いていた信頼を損ねてしまうということになってしまいました。もう一度、ゼロから信頼を取り戻していけるように出直しの気持ちでやっていきたいと思います。
ありがとうございました。大変お世話になりました。
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