「正露丸」訴訟、「ラッパのマーク」が決め手で大幸薬品が敗訴

「正露丸」訴訟で「セイロガン糖衣A」を販売する大幸薬品が敗訴した。決め手になったのは「ラッパのマーク」の有無だったとされる。どのような内容だったのか。

ラッパのマークで知られる胃腸薬「セイロガン糖衣A」を販売する大幸薬品(大阪)が、キョクトウ(富山)の販売する「正露丸糖衣S」は類似商品だとして、パッケージの使用差し止めなどを求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は、10月9日付で、大幸薬品の上告を退けた。「ラッパ」のマークがパッケージに使われていないことなどが決め手となったとされる。14日、テレ朝newsなどが報じた。

訴状などによりますと、セイロガン糖衣Aと製薬会社のキョクトウが販売している「正露丸糖衣S」とは、表示名のほか、箱の色もだいだい色で似ていることなどから、大幸薬品がキョクトウに対して表示の差し止めや1000万円の損害賠償を求めていました。

 

1審の大阪地裁は「表示の文字の大きさや字体が異なっている」「『正露丸』の名称は1954年には普通名称になっていた」として、大幸薬品の訴えを退けました。2審の大阪高裁もこの判決を支持したため、大幸薬品は上告していましたが、最高裁は9日付で上告を受理しない決定をしました。

 

大幸薬品の敗訴が確定 「正露丸」の表示めぐる訴訟:テレ朝newsより 2014/10/14 17:49)

大幸薬品の「セイロガン糖衣A」(左)とキョクトウの「正露丸糖衣S」(右)

大幸薬品は製品名を発音すると「エー」か「エス」の部分しか違いがないことなどを主張していたが、1審、2審ではアルファベットの「A」と「S」は発音上紛らわしいものではなく、聞き違えによる誤認の可能性はそれほど大きくないと判断された。また、キョクトウの商品の箱にラッパのマークがないとして、表示の類似性も否定されたという。

■かつての訴訟でも「ラッパ」のマークが決め手になっていた

正露丸はもともとは日露戦争時にロシアを征服するという意味で「征露丸」の名称で服用されたもので、複数の企業から「正露丸」や「セイロガン」などの名前で販売されている。

インターネットユーザーが調べた複数社から出ている「正露丸」〜「こんなに正露丸」ホームページより

大幸薬品は2005年にも、「正露丸」に似た包装で、同じ名称の薬を販売するのは不正競争防止法違反に当たるとして、和泉薬品工業(大阪府)を相手に販売差し止めと損害賠償などを求めて大阪地裁に提訴していた。和泉薬品の「イズミ正露丸」は、含有成分などが若干異なるが大幸薬品製と同様のオレンジ色の背景に赤字で「正露丸」と表示されており、ラッパの代わりにひょうたんのマークがつけられていた。

大幸薬品の「正露丸」(左)と和泉薬品工業の「イヅミ正露丸」(右)。

しかし、最高裁は2008年に「ラッパの図柄に対し、和泉薬品製はひょうたんの図柄で類似しないことは明らか」と判断。大幸薬品は敗訴した。「ラッパのマークの正露丸」などと大幸薬品が宣伝していたことから、同社が提供する「正露丸」だと消費者が識別する出所表示機能は「ラッパのマーク」のみであり、色などを含む他のパッケージ部分については認めないとしたためだった。

また、この時の裁判では「原告(大幸薬品)が『正露丸』の名称で本件医薬品の製造販売を行っている他の業者に対し、その名称の使用を排除するための措置をとり、実際にその使用を中止させたことは一度しかない」として、大幸薬品それまで他社に対して「正露丸」の名称で他社に製造販売を辞めさせる努力を怠ったことも指摘されていた。

【関連記事】

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています

注目記事