中国の香港で激化した民主化を求めるデモ。催涙ガスをよける雨傘から「傘の革命」とも呼ばれている。参加者は10万人を超えると地元紙が報道するなど、1997年にイギリスから中国に返還されて以来、最大の混乱となっているが、なぜこんなことになったのか。これまでの経緯を簡単にまとめてみた。
■返還時の約束とは
香港は返還50年の2047年までは、中国の社会主義は導入しないことになっている。イギリス統治時代と同じく資本主義を維持することが、香港の憲法に当たる「基本法」で定められているからだ。ポルトガルから返還されたマカオと同様に、鄧小平が提唱した「一国二制度」が導入された結果だった。
行政トップに当たる行政長官は、これまでは定数1200人の「選挙委員会」が選んできた。委員の任命は中国が影響力を持っており、8割が親中派とされる。
ただし基本法では、行政長官の選出は「指名委員会が民主的な手続きで指名した後、普通選挙で選出する」と規定されていたため、2017年からはついに、一般有権者による普通選挙が導入されることになった。
■中国政府に都合のいい人間しか立候補不可能
その選挙制度が、中国の国会に当たる「全人代」で8月31日に確定した。しかし、候補者を選ぶ「指名委員会」の構成は、既存の「選挙委員会」とほぼ同じ。さらに、最大3人の立候補しか認めない内容だった。確かに行政長官は市民の投票で選ばれるが、これでは中国政府に都合のいい人間しか立候補できない。
毎日新聞では、次のように報じている。
2017年の香港特別行政区の次期長官選挙について、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は8月31日、選挙制度改革の進め方に対する原則を決めた。
(1)「指名委員会」を新設して2〜3人の候補を指名(2)その中から有権者が1人1票を投じて選出する−−との内容。経済界などに割り当てられた「選挙委員会」が選ぶ従来の制限選挙から市民に「投票権」を広げる一方、選挙委を廃止する代わりに指名委というハードル設定を義務づけた。共産党政権の意中の人物が幅広い民意を集めて選ばれた体裁を取れるような制度設計だ。
(毎日新聞「香港:全人代、次期長官に制限 指名委設置し候補決定」より 2014/09/01 01:38)
行政長官を「民主的な手続きで指名する」という、返還時の約束は骨抜きになってしまった。これに対し、デモ隊を組織する民主派のグループは、一定数の市民の支持があれば誰でも立候補できる制度の導入を求めている。
■天安門事件の再来になるのか?
激化するデモに対し、中国が人民解放軍で武力行使するという観測もある。その場合は1989年に民主派を弾圧して国際的な非難を浴びた天安門事件の再来となることが必至だ。東京新聞・論説副主幹の長谷川幸洋氏は、以下のように警告している。
香港が中国のものであるのはその通りである。だが、中国は対応を一歩誤ると火の粉が自らにふりかかり、大きなダメージを受けるだろう。たとえば、最終的には人民解放軍が出動して実力で抗議行動を制圧するのではないか、という観測もある。
そうなると、1989年の天安門事件の再現になる。香港の状況は逐一、世界中に報じられており、もしも香港が血の雨に沈むようなことがあれば、中国は天安門事件どころではない、世界中から非難の嵐を浴びることになる。
(現代ビジネス「香港はどこへ行くのか? 自由や民主主義のありがたさを知る人々の反対に、習近平は追い詰められている」より 2014/10/03)
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