新潟県加茂市の小池清彦市長(77)が10月1日、市内約2千人の小中学校の児童・生徒に「なるべく自転車に乗らないように」と呼びかける文書を配布した。文書で小池氏は「自転車に乗ることは、きわめて危険」としており、どうしても自転車に乗る必要がある場合はヘルメットをかぶることなどを求めている。
同日付で保護者向けに配布された文書では、小池氏は自転車の事故をなくす一番の方策として「なるべく自転車に乗らないようにすることである」と述べており、自動車の通行量が増えたことを受けて、自身も自転車に乗らない方針であることを示した。
加茂市長 小 池 清 彦自転車の事故を完全になくするために
先日、加茂市内で、自転車に乗っていた中学生が自動車にはねられて死亡された、いたましい事故がありました。
私達は、自転車の事故を完全になくするために、全力を挙げなければなりません。
自動車がたくさん通る中で、自転車に乗ることは、きわめて危険であることは、誰もが認めることであります。
私も、若い頃は、自転車をこの上なく愛用し、サイクリングを楽しんでおりましたが、当時は、自動車はあまり通らない時代でございました。
しかし、自動車がきわめて多く、ひんぱんに通るようになった、現在においては、私はとても危険なので、自転車に乗る気になれず、自転車の運転をやめざるをえなくなっております。
そこで、小中学生のいたましい自転車の事故を完全になくするための一番の方策は、なるべく自転車に乗らないようにすることであると私は思います。
つきましては、このたび別紙の文書を小中学生の皆様に差し上げた次第でございます。
文書には、なるべく自転車に乗らない方がよいと思うという私の思いと、どうしても自転車に乗らなければならないときは、必ずヘルメットを着用するよう心がけること等の大切なことを書かせていただきました。
皆様におかれましては、私の切なる思いを御理解下さいまして、皆様のこの上なく大切な御子様を十分に指導され、しっかりとお守りして行って下さいますよう、衷心よりお願い申し上げます。
(加茂市「自転車の事故を完全になくするために」より 2014/10/01)
サンスポによると、同市では8月に男子中学生の乗った自転車が車にはねられて死亡する事故が起きており、市長は痛ましい事故を二度と起こしたくないとの思いで文章を作成したという。新潟日報によると、同市の中学校の校長らからも賛同を得られたという。
これに対して自転車に詳しい有識者からは「本末転倒な事故対策だ」などの厳しい声があがっているという。
国の自転車ガイドラインの策定に携わった三井住友トラスト基礎研究所の古倉宗治研究理事は「交通事故をゼロにするためには外出するなという考えにつながる。行政として事故対策を放棄している」とし、「必要なのは事故の原因を分析した上で防止策を考える姿勢だ」と話した。(中略)
自転車政策を提言するNPO法人「自転車活用推進研究会」の小林成基理事長は「まずは速度を落とすなど車の対策をすべきだ」と訴える。さらに「市長は車を優先するという考えから抜けきれていない。指導しやすさから自転車を規制している」指摘した。
(毎日新聞「自転車:なるべく乗るな 新潟・加茂市長が小中学生に」より 2014/10/03)
自転車活用推進研究会理事の疋田智氏は、自身のメルマガで「子供の教育機会を奪うな」と指摘している。
本来ならば「不幸な事故が起きた、だから、教育を徹底する、インフラを整備する」というのが常道だろう。それが政治であり、行政というものだ。または事故の内容によっては「加害者側(つまりクルマの通行)に規制をかける」というのもあるかもしれない。(中略)
本来、自転車というものは、小学生のうちに触れ、親しみ、乗れるようになり、交通ルールを覚え、社会の一員となっていく、と、そういうものだろう。その時点で、交通ルールを教え込み、してはならない運転、事故回避のための手段などを学ばせる。安全運転の大切さ、事故の怖さを教える。それが教育というものだ。危ないから隔離、禁止、というのではなく、危ないから危なくならないように教える。刃物だって火だって何だってそうだ。ところが、加茂市では「禁止」。(中略)
しかし、考えてみていただきたい。その子たちが、やがて育ち、高校生になる。自転車禁止が解けた後、交通ルールを知らないまま路上に放り出される。絶対に事故を起こすのだ。
(疋田智の「週刊 自転車ツーキニスト」「【ちょっと寄り道】自転車を排除するという発想の」より 2014/09/24)
【関連記事】
ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています。
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー