重武装した、黒づくめの服装の男たち。幼い子供と手をつなぐ母親は、肩に自動小銃「AK-47」を掛けている。そして、インターネットカフェでフランスにいる相手とチャットする若い女性たち――これが「イスラム国」(旧称ISIS)の本拠、シリアのラッカでの日常だ。
この抑圧的な体制下での生活の様子を、わずかなりとも世界に伝えようと、ある勇気あるシリア人女性が、全身を覆うブルカの下に隠しカメラを仕込んで、貴重なビデオを撮影した。
この暗い雰囲気の映像は、フランスの放送局「France 2」の依頼で制作されたもので、YouTubeにも投稿されている(冒頭の動画)。
映像の中には、ヒヤリとするような場面がある。この若い女性が知らない男性に呼び止められ、「しっかり顔を隠せ」と注意されるのだ。「神は顔を覆った女を愛される」と諭した男は、女性がその一部始終を撮影していることには気付かなかった。
もうひとつの痛ましい場面は、全身を覆った女性たちが、インターネットカフェで、フェイスブックやスカイプを使って祖国の家族と連絡を取り、「もう家へは帰らない」と伝えているところだ。
「ママ、そっちへ戻るつもりはないの」と、ある女性が話しているのが聞こえる。「もう私は帰って来ないって、あきらめてもらうしかないのよ」。
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着用が義務付けられている黒いブルカに身を包んで、彼女はラッカの街を歩く。3月以来、ここでは「戦士たち」が、人々にイスラム法を守らせている。
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街中のいたるところに、武装した男たちがいる。
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時には、ブルカを着用し、子供の手を引く女性さえも、肩からAK-47を提げている。
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突然、隠しカメラを持つ女性を、男が呼び止めた。男は遠くからこの女性を見て、何かに気づいたようだ。
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男:「こっちへ来い! 街に出るときは、自分の行いに気をつけるんだ」女性:「どういうことですか?」
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男:「お前の顔が見えているんだ」 女性:「本当ですか? それは申し訳ありません。生地が少し薄かったのかもしれません。気をつけます」
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男:「気をつけて、しっかりと顔を覆うんだ。神は顔を覆った女を愛される」
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女性:「はい、わかりました」
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ブルカや祈りの強制、音楽や娯楽の禁止。それがいまのこの街の掟だ。
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大勢のシリア人女性が、こうした掟に苦しめられている。だが、自分の意志でフランスから来た女性たちもいる。
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ラッカ中心部にあるインターネットカフェ。
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女:「久しぶり……。ええ、フェイスブックを再開したわ」
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女性たちはそれぞれコンピューターの前に座り、完璧なフランス語で会話をしている。
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どの女性も、フランスにいる親族と話をしているようだ。
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女:「ママ、私はもう戻らない。それは、はっきり言っておくわ」
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「私は帰らないということを、しっかり理解してもらうしかないの」
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「帰りたくないのよ、ママ。私はこっちでうまくやっているから」
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画面の向こうにいる家族は、娘たちの過激な選択を理解できず、途方に暮れているのかもしれない。
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「戦士」と結婚するために、あるいは夫を追ってここへ来た女性たちは、イスラム国にとってプロパガンダと戦略の重要な武器となっている。
[Charlotte Meredith(English) 日本語版:水書健司/ガリレオ]