8月26日にイスラエルとパレスチナが、無期限のガザ停戦に合意してから約1カ月が過ぎた。報じられるニュースの数やGoogleでの「ガザ」の検索数も大きく減り、人々の関心は薄れてしまっている。
この状況について、8月11日から9月3日までガザ地区を取材したジャーナリストの藤原亮司さんは「ただ“人が死なない”状態になっただけに過ぎないのに、ガザは平和になったと勘違いされている」と話す。どういうことだろうか。
パレスチナ・ガザ地区頭部の激戦地シュジャイヤ。付近に軍事トンネルがあるという理由で、イスラエル軍は民家もろとも破壊し、更地にした。 撮影・藤原亮司(ジャパンプレス)
「停戦でもイスラエルの占領下のまま。自由はなく、家畜のような日々」
ガザ地区は、イスラエルと地中海にはさまれた長さ約42km、幅約6〜10kmに渡って細く延びる細長い区域で、南端をエジプトに接している。周りを海と壁、フェンスでぐるりと囲まれて封鎖されており、国境は封鎖されているため、人々の出入りは極端に制限されている。
7月初頭から約50日間続いた戦闘でも、イスラエルの空爆があっても封鎖のために人々は区域外に逃げられず、また、負傷しても救援部隊も入れない深刻な状況となっていた。
左:ガザ地区の地図、右:ガザ地区を取り巻く高い壁(An Israeli soldier prays on top of a tank next to the wall seperating Gaza and Israel on the morning July 18, 2014 near Sderot, Israel. Photo by Andrew Burton/Getty Images)
しかし、藤原さんはハフポスト日本版の取材に対し、停戦になっても封鎖がなくなるわけではなく、人々の自由はないと指摘する。
「ガザ停戦は、ただ“人が死なない”状態になっただけなのです。イスラエルの占領下であることは変わらず、周りを囲む高い壁がなくなったわけでもない。東京23区の約6割の広さにあたる土地から、ガザの人々は出ていく自由もないのです」。
ガザ地区では、高校までは無償で学ぶことができ、区域内に大学もある。しかし、いくら学んでも壁の外に出られない。ガザ地区の失業率は高く、卒業後は仕事が無い。それでも、ガザでは飢えることが無いのだという。
「国連やNGO、外国などからの援助によって、衣食住は維持されていますから。ですが、これは人間の暮らしといえるでしょうか。いい大人が何もすることがなく、ただ毎日をやり過ごすだけ。いくら生活が維持されているからといって、人間は、家畜ではない」。
将来に希望を持って学校を卒業しても、そこには1967年から続く「占領」という現実しか無い。イスラエルにも外国にも出稼ぎにも行けず、他人からに物を与えられて生きることに虚しさを感じるのだと、藤原亮司さんは説明した。
自宅の一階を改装し自動車修理の仕事をしていた男性は、ハマスの軍事トンネルが近くにあるという理由で預かっていた車ごと自宅を破壊された。撮影・藤原亮司(ジャパンプレス)
イスラエル軍機甲部隊の戦車による砲撃で左足のひざから下を失った。自宅を破壊された彼には帰るべき家はもうない。 撮影・藤原亮司(ジャパンプレス)
イスラエルの空爆によって殺害されたハマスの地区指揮官に別れを告げるため、大勢の人が祈りをささげた。 撮影・藤原亮司(ジャパンプレス)
「援助することが、ガザの人々を助けることになるのか」
なぜガザの人々は外に出られないのか。なぜガザは封鎖されたままなのか。国際社会は停戦を報じても、根本にあるはずのイスラエルによる占領は報じないと、藤原さんは批判した。10月4日には、札幌においてガザへの医療支援を行っている団体や報道関係者らとトークイベントを開催。ガザの現状や援助のあり方などを議論するという。
「ガザは世界から“オープンスカイ・プリズン”と呼ばれています。ガザに住む180万人の人々が閉じ込めてられていることは、不問とされているのです。占領者であるイスラエルがガザを破壊しても、復興に金を払う必要は全くない。国連や諸外国の支援が、イスラエルに代わって自動的にガザを復興させてくれる」。
藤原さんは援助が占領地維持の役割を担っていると、支援のあり方にも疑問を投げかけている。
■イベント:『ガザ』って、何だ!?-最新情報を、実態を、妥協なく語る-
日付:10月4日(土)
場所:札幌市北区北8条西3丁目 札幌エルプラザ・環境研修室
出演:藤原亮司、小田切拓(ジャーナリスト)、坂東和之(北海道新聞/前カイロ支局長)、猫塚義夫(医師・北海道パレスチナ医療奉仕団代表)など
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