福島第一原発の事故で、避難生活を余儀なくされた女性が一時帰宅中に焼身自殺したのは東電に責任があるとして、女性の遺族が東京電力に約9100万円の損害賠償を求めた裁判で、福島地裁(潮見直之裁判長)は8月26日、「自殺と原発事故の間には相当な因果関係がある」として遺族の訴えを認め、東電に約4900万円の支払いを命じる判決を言い渡した。原発事故が原因で自殺したとして東電に賠償を求めた訴訟では、初の判決となる。朝日新聞デジタルなどが報じた。
訴えていたのは、亡くなった渡辺はま子さん(当時58)の夫の幹夫さん(64)ら遺族4人。遺族側の弁護団によると、原発事故と自殺の因果関係を認めた判決は初めて。
はま子さんは原発事故から約3カ月後の2011年6月、川俣町山木屋地区の自宅から福島市に避難した。勤めていた山木屋地区の農場の閉鎖によって仕事を失い、慣れないアパート暮らしで不眠や体重減少に苦しみ、「山木屋に戻りたい」と繰り返した。約3週間後、一時帰宅中の自宅の庭先で焼身自殺した。
(朝日新聞デジタル「原発事故後に自殺、東電に4900万円賠償命令」より 2014/08/26 13:25)
裁判では、はま子さんの自殺の原因が原発事故だと言えるかという点が争われた。遺族側は「避難先のアパートで、はま子さんが夜眠れないと頻繁に訴えるようになり、自宅に帰れないと悲観して自殺したのは明らかだ」と主張。一方、東京電力側ははま子さんが事故前から睡眠障害で薬を飲んでいることを指摘。「遺書が見つかっていないなど、自殺の原因がはっきりしない」として、事故以外の原因を考慮するべきだと主張した。
はま子さんの夫・幹夫さん(62)は、「東電は妻の死に責任を感じていないのか」と、東電の反論に悔しさばかりが募ったという。
はま子さんの長男は、裁判中に職場の同僚から「母の死をいいことに、金取りにかかっている」とやゆされ、職場を退職した。幹夫さんは、自分たちと同じ思いをしている人が何人もいると思い、引いてはならないと自分に言い聞かせたという。
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