チャレンジとチャリティーに有名人を加え、Facebookで一気に過熱して焼き上げると、はい! アイス・バケツ・チャレンジのでき上がり。この流行があなたのFacebook のフィードを席巻することは間違いない。
氷水の入ったバケツを頭からかぶった人たちが、他の人にも同じことをやってみろと挑戦をしかける、というアイデアなのだが、これがALS(筋萎縮性側索硬化症 )協会への多額の寄付に拍車をかけ、Facebook 史上最大のバイラルヒットの1つとなった。Facebook社は8月18日、240万の動画が同社SNSで「 アイス・バケツ・チャレンジに関連してシェアされ」、2800万人以上がアイス・バケツ・チャレンジ関連の投稿を行い、また投稿にコメントしたり「いいね!」を付けたりした、と伝えた。
「インターネットのチャレンジ好きな特性と、寄付やチャリティーを結びつけたのは天才的なひらめきです」、とアメリカのニュースサイト「Gawker」の元編集者でバイラル現象の専門家として定評のあるニートゼン・ジマーマン氏 がハフィントンポストに語っている。「もう単に見事そのものとしか他に言いようがありません」。
ジャスティン・ティンバーレイクもチャレンジした
本来アイス・バケツ・チャレンジはその本質自体が拡散しやすいように出来ている。簡単にやれるし、公共の場で指名されるし、他の人にタグ付けする行為にはチェーンメール のような「次にまわす」的な特質がある。
「人は他人に良く見られたいと思うものです。ですから社会的意義があるものを支持する行為を拒否するのは難しいものです」、と 「Contagious: Why Things Catch On(伝染性:なぜ物事は広まるのか)」の著者ジョナ・バーガー氏 がハフィントンポストUS版にメールで答えている。「ALSの社会的認知を広める、というのは素晴らしい理念ですから、誰かが直接これをやってと頼んできた場合、嫌な人間だと思われずに断るのは難しいですね」。
インターネットは、突き詰めれば様々なチャレンジを展開させるもの、と ジマーマン氏は「シナモン・チャレンジ」(スプーン1杯のシナモン粉末を一気に飲み込む)やプランキング(公共の場所などで腹ばいになって横たわる行為)を参考に挙げて言う。こうしたばかばかしい行為を映した動画をアップロードし、チャレンジを達成したぞ、と人に見せるためだけにやっている。
現在は匿名で秘密を共有できるアプリ「ウィスパー」の編集長を勤めるジマーマン氏 は、アイス・バケツ・チャレンジにはまたハッシュタグ・アクティビズムやスラックティビズム(実際にお金を寄付する代わりに、自分の時間を割いてソーシャルメディアに投稿することなど、労力をかけずに社会貢献らしきことをする行動)の要素もある、と言う。気分が良くなることを自分のパソコンから(この場合は庭からでも)やるのだが、実際はその行為が何かの役に立っているわけではない(アイス・バケツ・チャレンジでは、氷水を浴びれば寄付から免れられる。このキャンペーンはその点で批判も受けている)。
Kony2012(ウガンダの反政府ゲリラ指導者ジョセフ・コニーを逮捕しようというキャンペーン)、そしてそのキャンペーンのハッシュタグ#stopKonyを誰が忘れることができよう。
Facebookやツイッター上で広まったアフリカの反政府軍の指導者についての短いビデオだったが、現実には「意識の向上」以外には何の役にも立たなかったし、それが(他にもいろいろ批判された中で)批判の対象にもなった。同じような批判は、2013年に、300万人がFacebookのプロフィール写真を平等サインに変えたLGBT婚姻平等運動でも見られた。
アイス・バケツ・チャレンジのキャンペーンはALS 協会にとっては素晴らしいキャンペーンとなっている。ルー・ゲーリッグ病という名でも知られる衰弱性の神経障害である筋萎縮性側索硬化症の研究を行い、患者支援を行う非営利団体だが、同団体は19日の朝、7月29日以来2290万ドルを受け取ったと伝えた。これは昨年同時期に比べて190万ドルの増加である。しかも寄付は既存寄付者からだけでなく、50万人近くの新しい寄付者から集まっている、という。
有名人たちがこの意義をしっかりとつかみとったことも、バイラルが加速した理由であることには間違いない。現時点でまだ氷水を頭からかぶっていない有名人を見つけるのはほぼ困難だろう。ゲイル・キングがオプラ・ウィンフリーに水をかけた。ジミー・ファロンとそのセレブ友達もやった。コービー・ブライアントもレブロン・ジェームスもやった。ジャスティン・ビーバーもやっている、2回もだ。
「有名人がやっているのと同じことを自分もやれば、有名人の代役をやれるような気になるでしょう」と、南カリフォルニア大学でインターネット文化と歴史を研究する人類学者のジェニファー・クール教授は言う。「あなたもレディー・ガガやビル・ゲイツと同じ立場になれるんですから」。
当然ながら自己顕示の側面もある。Facebookの本質は、自分自身を見せびらかし宣伝する場所である、という点にある。ユーザーはうんざりするくらい休暇中の写真をアップし、恋をし、何かにチャレンジして克服する(休暇中に南米でハイキング、なんていうのが理想的)思いにふけっているんだ、と友達全員に伝える。あなたの友達の中にも、アイス・バケツ・チャレンジのビデオでビキニやスイムトランク姿の体を見せびらかしていた友達がいるかもしれない。
氷水をかぶるにしても、他と差をつけようとする有名人もいる。ビル・ゲイツは、自分に水をかぶせるための装置を本人が設計する姿を撮影し、綿密に制作された(でもチャーミングな)動画を発表している。ホッケー選手のポール・ビソネットはなぜかわからないが、ヘリコプターから氷河の水を自分に落とさせている。タイラー・ペリーの動画には「自分が立っているこのプールのばかばかしさを見てみろよ」的な要素がある。
有名人たちは、指名する時にネームドロップ(自分に有名人の知り合いがいることを見せつけること)をやりたがっているようにも見える。オプラは「どこに住んでいるか知っているのよ」と、スティーブン・スピルバーグにチャレンジを受けるよう指名する時に言っている。
すべてのバイラル現象がそうであるように、アイス・バケツ・チャレンジもネットで炎上した時とおなじくらい速いスピードで消えていくことが予想される。
「もう実質的には消えかかってます」とジマーマン氏は言う。彼は有名人や億万長者がPR目的でこのチャレンジを「人気取りに利用」していることに批判的だ。「誰かが常軌を逸するくらい押しまくって2週間、新しいサイクルが加わったとしても3週間程度、そして消えていくのです」。
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