過激派組織「イスラム国」に属する覆面の殺人者が、約2年前にシリアで行方不明になっていたアメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏を「処刑」する場面とされる動画が、現地時間8月19日にソーシャルメディア上で公開された(日本語版記事)。
情報当局は、処刑を行った覆面の殺人者は「イギリス英語を話している」として、その情報収集を進めている。
イギリスの大衆紙「ザ・サン」が「イスラム戦士アリ・G」と呼んだこの男の身元に関して確実な情報はほとんどないが、仲間内から「ジョン」と呼ばれていることや、左利きであることなどがわかっている。
「ジョン」に関して、これまでにわかっている事実10件を以下で紹介しよう。
1.「ザ・ビートルズ」と呼ばれるイギリス人グループのひとりだ。
シリア北部の街ラッカで、1年間ISIS(「イスラム国」の旧称)によって拘束されていた元人質のひとりが「The Guardian」に語ったところによると、殺害者は、イギリス生まれの3人の過激派のリーダー格だった。人質たちは、3人がイギリス人と思われたことから、このグループを「ザ・ビートルズ」と呼んでいたという。
2. 外国人の人質たちを監視する者たちのリーダーだ。
フォーリー氏を殺害した覆面の殺人者は、そのグループでは「ジョン」として知られていた。
3. 左利きだ。
世界の全人口のうち、左利きはわずか10%しかいない。この人物の武器の持ち方、身長、動作、言葉のアクセントを含めて、ビデオから得られる情報は、情報当局によって徹底的に分析されることになる。
4. おそらくロンドン南部の出身だが、アフガニスタンとつながりがある家系かもしれない。
ランカスター大学の言語学専門家、クレア・ハーデイカー博士は、複数のメディアに対し、この男の母音の発音にはイングランド南東部の出身と思われる特徴があり、最も可能性が高いのはロンドンだと語っている。
また、犯罪科学における声と発話の分析を専門とするエリザベス・マクレランド氏は、「The Telegraph」の取材に答えて、この男のアクセントには「ペルシャ語の影響が感じられ、アフガニスタンとつながりのある家系という可能性を示唆している」と述べた。
5.「イギリス風のアクセントは、欧米のビデオ視聴者により強い衝撃を与える」という理由で、殺害役に選ばれた可能性がある。
キングス・カレッジ・ロンドン(ロンドン大学)「過激化・政治暴力研究国際センター(ICSR)」の責任者を務めるピーター・ニューマン教授は、「The Guardian」に対して次のように述べた。「これには大きな意味がある。欧米を敵と見なすという姿勢を明確に示しているからだ。そちらが爆撃を行うのなら、自分たちも欧米人を狙うというメッセージだ」
6. 殺害前にフォーリー氏の家族に対して電子メールを送り、米軍の空爆についての激怒を語り、殺害を予告した。
フォーリー氏の家族は、現地時間8月14日の時点で、すでに同氏の殺害を予告する電子メールを受け取っていた。米軍がイラク北部の拠点に空爆を行ったことに対する報復であるとの内容だった。
アメリカの海外ニュースサイト「Globalpost」の報道によると、イスラム国はこのメールで特に具体的な要求をせず、家族にフォーリー氏を処刑すると伝えてきただけだったという。家族はメールの送信者との会話を試みたが、相手側は「激しい怒り」に駆られており、成功しなかった。
7. イスラム国は以前にフォーリー氏の身代金を要求していたが、アメリカ政府は支払いを拒否していた。
家族の代理人や、フォーリー氏と共に人質になっていた人物に取材をした「New York Times」によると、イスラム国はフォーリー氏の身代金として、アメリカ政府に1億ドルを支払うよう要求していた。ヨーロッパの複数の国は、それぞれの人質について身代金の支払いに応じたが、アメリカはこの提案を拒否した。
8. 11人の人質がトルコに引き渡されたとき、イスラム国側の中心的な交渉人だった。
2014年3月に、2人のスペイン人ジャーナリストなど11人の人質が、トルコ当局に引き渡された。なかには、半年以上拘束されていた人もいた。
9. アメリカ特殊部隊による人質奪還作戦は失敗していた
フォーリー氏殺害から2日後の8月21日には、アメリカ政府高官の話として、オバマ大統領は以前、イスラム国によって拘束されている、フォーリー氏を含む複数のアメリカ人を救出するため、シリアに数十名規模の特殊部隊を派遣したが、人質を発見できなかったと伝えられた。作戦が行われた場所と日時は公表されていない。
人質が拘束されている場所を特定したと考えた米軍は、空からのパラシュート降下で特殊部隊を現地に送り込んだ。しかし、特殊部隊は人質を見つけることができず、イスラム国戦闘員との小規模な交戦の後に撤退した。
この戦闘でイスラム国側は複数の戦闘員が死亡し、米軍側に死者はなかった。
10. フォーリー氏への態度は他の人質と異なり、より過酷な扱いだった。
解放されたフランス人ジャーナリストのニコラ・エナン氏が「BBC」に語ったところでは、エナン氏は、フォーリー氏と同じ施設に拘束されて7カ月をすごし、そのうち1週間は同氏と同じ手錠でつながれていたという。
エナン氏によれば、フォーリー氏は「一種のスケープゴート」となっており、殴られる回数も多かったという。
「アメリカやイギリスなど一部の国は、(イスラム国との)交渉に応じていない。これらの国々の政府は、自国の人質を危険にさらしていると言える」と、エナン氏は述べた。
[Jessica Elgot(English) 日本語版:水書健司/ガリレオ]
ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています。
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー
関連記事