横浜市を舞台に3年に1度開催される国際美術展「ヨコハマトリエンナーレ2014」が8月1日に開幕した。展覧会を構成するアーティスティック・ディレクターは、美術家の森村泰昌さん。「忘却」をテーマに、世界から65組の作家が参加。横浜美術館と新港ピア(新港ふ頭)の2会場を中心に400点を超える作品が展示される。オープニングでは、巨大なトレーラーが舞台へとトランスフォームする、やなぎみわさんの「移動舞台車」が初披露された。
■台湾で制作された移動舞台車でポールダンスのパフォーマンス
やなぎさんは、ジェンダーや若さと老いなど、女性を取り巻く問題をテーマに作品づくりをしている作家だ。近年は演劇にもそのフィールドを広げ、次回作では7人の老女が住み慣れた熊野から大型冷凍トレーラーであてどのない旅に出る「日輪の翼」(中上健次原作)を舞台化。台湾で制作された移動舞台車で巡業公演するという。ヨコハマトリエンナーレのオープニングでは、トレーラーが舞台へとトランスフォームする様子を公開、華やかなポールダンスのパフォーマンスも行われた。
巨大なトレーラーが電飾輝く舞台へとトランスフォーム
出現した舞台でポールダンスのパフォーマンス
■「どこかに置き去りにしてきてしまった忘れものを取り戻す旅」
今回、ヨコハマトリエンナーレのテーマは「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」。開幕にあたり記者会見した森村さんは、こう語った。
「饒舌なアピールや大声でなされる演説といったものに目が行ってしまいがちですけれども、それとは対極にある沈黙やささやき、こういう世界が内に含み持つ豊かさや深さを私たちは忘れてはならないのだと思います。役に立たないと思われて、捨てられていくものもたくさんあります。そうやって忘れられていくものに眼差しを向けることが、無意味とは思えません。見てはならないとされるもの、語ってはならないとされるもの。あるいは、子どものころには持っていたのに、大人になって忘れてしまったもの。これらも普段見落としがちな忘れ物ではないでしょうか。私たちがどこかに置き去りにしてきてしまった忘れものを取り戻す旅を目指したい」
展覧会は序章と11つの「挿話」から構成され、忘却をめぐる旅をするかのようにアートの世界を堪能できる。「アイ・オー−ある作曲家の部屋」を出展している作家、毛利悠子さんは、1950年代にアメリカから来日、2012年に死去した音楽家の遺した自作楽器を再構成。来場者が持ち込むホコリを感知して楽譜を自動生成させ、自動演奏装置として再生させた。
毛利悠子さんの作品「アイ・オー−ある作曲家の部屋」=横浜美術館
また、絵画やコラージュ、映像など多彩な表現で知られる大竹伸朗さんは、30年にわたって個人的に収集してきた世界の家族アルバム2、30冊をベースにした作品「網膜屋/記憶濾過小屋」を発表した。大竹さんは、「ここ数年の作品も記憶がベースになっています。今回、入り口は忘却というテーマですんなり入れた。記憶ということを考えた時に、今から以前のことと結び付けられることが多いのですが、未来の記録や今の記録とはなんだろうということが頭に浮かんだ」と話す。
「集めてきた家族アルバムの写真を見ていて、ここからが妄想ですが、偶然アルバムを手に入れた人物が、アルバムからその人の記憶の中に入り込む。いろんな国の家族アルバムを紡いでいく記憶を操れる人物がいたら、どういうところに住むのか考えました。そうした妄想との繰り返しで行き着いたのが今回の新作になりました。音とか、ノイズとか組み合わせてあるのですが、皆さんに見て頂いて、いろいろ感じていただけたらありがたいです」
大竹伸朗さんの作品「網膜屋/記憶濾過小屋」=新港ピア
ヨコハマトリエンナーレは11月3日まで。横浜市内では、さまざまな連携プログラムも予定されている。
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