イスラエルとガザの紛争は、人々の怒りや非難ばかりでなく、クリエイティビティも呼び起こした。現地の様子を客観的に報じる記事に混じって、数多くの「風刺画」がメディア上に溢れ、暴力を批難している。
これら風刺画作家のメインターゲットはイスラエルだが、それを取り巻く国々(直接的ではなく間接的であっても虐殺にかかわる者たち)もまた、標的となっている。
■「アラブの沈黙」
この紛争におけるアラブ諸国の行動、そして「行動を起こさなかったこと」は、作家たちに多くのインスピレーションを与えた。アラブ諸国の沈黙を、作家たちは次のように表現している。
サウジアラビアの漫画家、Abdullah Jaberさんは、イスラエルとアラブ諸国の関係を、石油で表した。
イスラエル軍の戦車が給油するスタンドには「アラブの沈黙」の文字が。ツイートには#ガザ_攻撃の裏でというTwitterタグが付けられている。
同様に、ヨルダンのEmad Hajjajさんは、高い壁にぐるりと回りを囲まれて地域への出入りの自由がないパレスチナの状況を、沈黙するアラブにかけて表現した。
イスラエル軍の戦車が悠然と門を通り抜けるのを、アラブ人が諸手を上げて素通りさせている。なお、パレスチナから外に出るためには、イスラエル側、もしくはエジプト側にある門を通らなければならない。
■「戦争はビジネスである」
一方、チュニジアのLotfi Ben Sassiさんはアラブ諸国の「怠惰」を、それほどひどいものだとは思っていない。
「アラブの国々は西側諸国の“傀儡”であり、政治・経済的に依存している“衛星国”。だからパレスチナ人は勇気を持って平和交渉に臨まなければならない。これは彼らのビジネスであって、カタールやサウジアラビア、その他のアラブの国々のビジネスではないのだから」
Lotfiさんはハフポスト・マグレブ版に対して繰り返し「戦争はビジネス。そこではお金と権力が争点になる」と述べる。
彼の描く鳥のキャラクターはガザ情勢のニュースを見ながらこうつぶやく。
「アラブの国々を散々に荒らし回ったように、カタールがイスラエルでも同じことをするといいのに」
カタールは、リビアのカダフィ政権を反政府勢力が倒した際にも、密かに先鋭部隊をリビアに送り込んで反政府勢力を支援していた。なお、カタールはパレスチナとは友好関係にあり、この紛争の仲介役を狙っているとの報道もある。
■イスラエルへの抗議デモを禁じるフランス、「背後にいるのは…」
チュニジアの漫画家「Z」さんは、漫画家の活動が事態に及ぼす影響は軽微であるとみている。
Zさんは「絵は長い文章よりも伝わりやすいし、ソーシャルメディアでシェアもしやすくなった」としながらも、「イスラエルを支持する西側諸国と、第三世界のちからのバランスが変わらない限り、本当の変革は起こらないだろう」と述べている。
Zさんは西側諸国の動きについてフランスを取り上げ、イスラエルに対する抗議デモが禁じられたのは、フランスのManuel Valls首相の背後にイスラエルに肩入れするBernard-Henri Lévyさん(BHL)などの存在があったことを示唆している。
BHLさんはハフポストUS版に「パレスチナを守れというデモなんて馬鹿げている」という記事を寄稿した。
■ガザを標的扱いする国連
アルジェリアのLe Hicさんは、国連をワールドカップの審判に例えて表現した。ただし、どう見ても中立ではない。
フランス語で国連を意味する「ONU」のシャツを着た審判員は、ワールドカップでPKのラインを記すときに使われていた「バニシング・スプレー」のように、ガザを照準マークで取り囲み標的扱いしている。
----
チュニジアのZさんは「たとえ絵が文章に比べて現実的ではなくとも、作品の中に作家が伝えたいストーリーが埋め込まれている」と話す。スライドショーでは、発表されている風刺画の幾つかを紹介しよう。
[マグレブ版]
【関連記事】
ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています。
ハフィントンポスト日本版はTwitterでも情報発信しています。@HuffPostJapan をフォロー