イギリス国内では、ユダヤ系住民に対する暴力や嫌がらせが、2014年前半6か月で36%増と大幅に増えている。専門家たちは、中東で繰り広げられている紛争をきっかけとする事態を含めれば、数はさらに増えるだろうと予測する。
イギリス国内の反ユダヤ主義活動を監視する団体「Community Security Trust(CST)」が把握した反ユダヤ主義者による事件数は、今年1月から6月までで304件だ。そのうち22件は暴力行為だが、重傷とされる被害者は出ていない。
CSTによれば、ユダヤ人墓地の破壊や、「一見しただけでユダヤ系だとわかる」人々に向けた暴言などが起きているという。ひどいケースでは、北ロンドン地区のユダヤ系住民の自宅で「ユダヤ人はみなネズミ(Rats)だ。パレスチナを解放しろ」との落書きが見つかった。
304件のなかには、ソーシャルメディアの上で確認された54件の暴言もあるが、CSTはソーシャルメディア上の動きはすべて捕捉できていないと注意している。
304件という数字には、7月はじめにイスラエル軍のガザ地区攻撃が始まって以降に、CSTならびに警察に寄せられた100件以上の事件は含まれていない。CSTが先週発表した報告によれば、7月にイスラエル軍のガザ地区攻撃が始まって以来、次のような事件が発生している。
- パレスチナ支持者らが、イスラエル支持を表明したユダヤ人女性へ暴行を加え、暴言を吐いたうえ、「シオニズム主義のユダヤ人」と呼んで携帯電話を奪った。
- ロンドン北部でラビ(ユダヤ教の宗教指導者)が道を歩いているのを見つけた集団が、「パレスチナを解放しろ」「シオニストは糞野郎だ」「ユダヤ人は糞野郎だ」「アッラーは偉大なり」などと叫んだ。
- ベルファストにあるシナゴーグ(ユダヤ教会堂)の窓に、レンガが投げ込まれた。
- リバプールにあるシナゴーグに集まった信者らに対し、「赤ん坊殺し」という言葉が浴びせられた。
- ロンドン北部で自転車に乗っていた「明らかにユダヤ系と思われる」少年が投石された。ニカブ(アラブ系女性が顔を覆うベール)を身につけた女性が投げたとされる。
CSTの報告はイギリスだけだが、欧州のほかの国でも、ユダヤ系住民が標的となっている。パリ郊外のサルセルにあるユダヤ人居住区では7月20日、「ユダヤ人をガス室に送れ」と唱える抗議グループによる襲撃を受けた。
サルセルの商店街では7月20日、暴徒により店舗やレストランのガラスが破られたほか、自動車が焼かれ、店舗が強奪された。MIGUEL MEDINA via Getty Images
また、ドイツ駐在のイスラエル外交官は「Berliner Zeitung」紙で、ドイツで行われたパレスチナ支持の抗議行動では、「まるで1938年であるかのような」反ユダヤ主義のプラカードが目撃されたと述べている。
ハフポストUK版は7月28日、イスラエルへのユダヤ人移住を推進する団体「ユダヤ機関」(JAFI: Jewish Agency for Israel)が発表した統計を紹介した。それによると、イギリスに住む離散ユダヤ人(ディアスポラ)がイスラエルに移住した割合はそれほど増えていず、4%の伸び、数にしておよそ200名だが、その他のヨーロッパ諸国からイスラエルに移り住んだユダヤ人は驚くべき数に上っている。フランスでは、2014年に入ってから2830名が移住しており、昨年同時期に比べ249%増だ。移民の増加率はイタリアが88%、ベルギーは38%となっている。
JAFIは英ハフポストに対し、フランスからイスラエルに移住するユダヤ人の数は2014年末までに5000人に上るだろうと予測した。フランスにおけるユダヤ人の人口は約50万人なので、その1%が1年間でイスラエルに移住することになる計算だ。
なお、CSTによれば、今年に入ってからの反ユダヤ主義的な事件の急増は、2009年2月以来の最高件数だ。このときは、2008年12月にイスラエル国防軍(IDF)が「キャストレッド作戦」と称してガザ地区への空爆を開始。翌年1月には地上戦へと発展し、パレスチナ側に1300人を越える犠牲者が出た直後だった。
イギリス東部のハートフォードシャー州で見つかった反ユダヤ主義ポスター
ブラックリー墓地では墓地が毀損された
ロンドン北部の家の壁で見つかった落書き
反ユダヤ主義者からの脅しのツイート
われわれは、イギリス在住のユダヤ人たちに対する闘いを行っている。この国が再び自分たち自身の国になるまで闘いは止めない。
[Jessica Elgot(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]
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