アルゼンチン政府は、債務問題の期限を目前に控えてもホールドアウト債権者との交渉がまとまらず、過去12年で2度目のデフォルト(債務不履行)に陥る可能性が濃厚になってきた。
米連邦地方裁判所のトーマス・グリーサ判事は、ホールドアウト債権者に13億3000万ドルの債務を利子とともに返済するようアルゼンチンに命じた。
支払い猶予期限の30日までに和解できなければ、アルゼンチンは債務減額に応じた債権者への利払いが滞り、支払い余力があるにもかかわらず債務返済が不能な「テクニカル・デフォルト」とみなされる見通し。
アルゼンチンは既に、景気後退、外貨準備の減少、インフレ高進に直面しており、さらなる窮地に追い込まれることになる。
アルゼンチンは国際資本市場から締め出されているため、世界経済へのリスクは限定的。問題をどの程度迅速に収束させられるかで、国内への影響が決まる。
今後予想される展開は以下の通り
シナリオ1:
過去の債務再編で定められた「RUFO条項」に基づき、ホールドアウト債権者により良いリターンを支払うことが禁じられている。この条項が期限切れとなる12月31日の後、迅速に解決する構えがあることを示し、債券保有者らを説得できるかどうか次第で、早期の返済要求が抑えられる。
このシナリオでは、アルゼンチンが国際資本市場から締め出された状態は続き、同国の企業などの借り入れコストが上昇。キャピタル・エコノミクスのデビット・リーズ氏によると、資本の流出で通貨を圧迫し始める可能性もある。
アルゼンチンのドル保有を増加させ、公式レートで既に年初来の下落率が20%となっているペソが、一段と軟化することになる。
ジェフリーズの中南米戦略責任者、シオブハン・モーデン氏は「スタグフレーションが悪化するリスク」を挙げる。民間の統計ではインフレ率は既に30%超となっている。
アルゼンチンは大豆の輸出で世界3位で、デフォルトが発生した場合、農家は作物をとめ置く意向を表明しており、短期的に世界の食料価格が上昇する可能性がある。
シナリオ2:
債務再編後の新債券保有者の25%以上が早期返済を求めれば、収束には長期間がかかることになるとみられる。
アルゼンチンは、自国法に準拠した債券で再編を実施することも可能。だが、確率は低いとアナリストはみている。代わりに、国外の法律に引き続き準拠した債券交換が考えられ、国際市場への復帰に希望を残すのであれば、ホールドアウト債権者も含める必要性が出てくる。
しばらくは、利払いなどのコストが上昇し、準備高が激減することが考えられ、「60億ドル規模のボーデン債が償還期限を迎える来年になっても収束しなければ、資金繰りに問題が生じるようになる」(証券会社エキゾティックスのリサーチ部門責任者、スチュアート・クルバーハウス氏)という。
シナリオ3:
米連邦地裁のグリーサ判事は、アルゼンチンのデフォルトを「想像し得る最悪」のシナリオと表現しており、命令の執行を停止することもできる。
ホールドアウト債権者が執行停止を要請する必要があり、その代わりに、アルゼンチン政府に金銭的な保証を求め、RUFO条項の期限が切れた後、来年1月から交渉に臨む可能性もある。[ブエノスアイレス 26日 ロイター]
関連記事