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「夫婦で育児休暇を取りました」 仕事も子育ても楽しむP&Gの働きかた

「『ママの髪、さらさらで綺麗』っていってくれるんです」そう微笑むのは、P&Gでシャンプー「パンテーン」のマーケティングを手がける、ABM(アシスタント・ブランド・マネージャー)の廣畑直子さんだ。
Michinari Kitamura

「『ママの髪、さらさらで綺麗』っていってくれるんです」

そう微笑むのは、P&Gでヘアケア「パンテーン」のマーケティングを手がける、ABM(アシスタント・ブランド・マネージャー)の廣畑直子さんだ。

理系の大学院を卒業後、情報テクノロジーの部署を経て「大好きな商品に直接携わりたい」とマーケティングに異動した廣畑さん。2人の子供を出産した際は、夫ともに育休を取得したという。今は上司やチームのサポートを得て、家族と協力しながら、仕事と家庭を大切にする毎日を送っている。

今回は、廣畑さんに、仕事と子育てを両立するP&Gでの働きかたと、新商品への想いを聞いた。

■理系の大学院を経て、P&Gの就職説明会に参加

理系の大学院では、様々な企業と新商品を開発するプロジェクトを進めていた廣畑さん。就職活動の際は、職種にこだわらず、いろんな業界の説明会に参加したという。

「全部の業界を見てみようと思って、いろんな説明会に行きました。そのなかで『人の日々を変える何かをしたい』と思ったんですね。たまたまP&Gと出会ったんです。説明会で、お話させていただいた社員の方も魅力的でした」

「私の母はずっと働いていたので、子供を育てながら働き続けるのは当たり前のことだったんですが、大学院では男子ばかりの世界にいたので、もしかしたら理系の専門職では、女性は働きづらいのかもと思ったところもありました。男女に関係なく生き生きと働いているP&Gの方の話を聞いて『ここで働きたい』と思ったんです」

■「消費者の近くに」IT部門からマーケティングへ部署異動

部門別採用制のP&Gで、廣畑さんは2003年、理系の専門性を生かしてIDSといわれるIT部門に入社した。その後、「もっと消費者に直接働きかける仕事がしたい」と、同部門内のウェブマーケティングに関わる業務を経て、さらに、2010年にマーケティングの部署に異動している。

P&Gでは、ジョブ・ポスティング制度があり、そのときの組織の状況にもよるが、自分のやりたい職種があれば応募することができる。また年に1回、上司とキャリアについてディスカッションする場があり、自分がやりたいことや将来のキャリアについて話す機会があるという。

入社後に「やりたい仕事」を見つけた廣畑さん。「実際に、やりたい仕事をしているチームの上司にランチのアポをとって、『どんな仕事をしているんですか、興味あるんです』と情報を集めたりしましたね」と当時を振り返る。

■ウェブマーケティングの経験が、今の時代のマーケティングに生きる

廣畑さんは、化粧品「SK-Ⅱ」を経て、現在はヘアケア「パンテーン」を担当している。「やりたかったマーケティングの仕事に、以前のデジタルマーケティングの経験が生きている」と話す。

「今の時代、スマートフォン(スマホ)は消費者のみなさんにとって、一番近くにあるメディアですよね。そこを切り離してマーケティングはできません。そういう意味で、デジタルマーケティングというものが世に出始めた頃から、デジタルマーケティングに携わることができたのは、貴重な経験だったと思います。今もそのときに一緒にお仕事させていただいた方から刺激をもらっています」

「今年入社したメンバーのスマホの使いかたや購買行動は、すごく新鮮です。何か気になったらすぐスマホで調べますし、その場で何か欲しくなったらすぐに買います。私が学生だったときは、携帯電話がカラーになって『iモードが始まった』って喜んでいましたから、本当にこの移り変わりはすごいです」

■出産後3カ月で職場に復帰、夫婦で育児休暇を取得

4歳と6歳の女の子の母でもある廣畑さん。出産の際は、上司のアドバイスもあり、出産後3カ月で復職。夫婦で育児休暇(育休)を取得したという。

「当時の上司はインド人の女性でしたが、私の妊娠を一番喜んでくれて、とても協力的でした。出産前に、彼女に『4カ月で戻ってくるなら、ポジションを空けておいてあげるよ』といわれたんです。彼女にも子供がいて『1年後、人間関係がないところに小さな子供がいる状態で戻って、一から信頼を得るよりは、ちょっと早くても、今の仲間のところで復帰したほうが楽だよ』ってアドバイスしてくれました」

「そう思って調べてみたら、神戸市の保育園に入所できるのは、生後6カ月すぎからだったんですね。認可外の保育施設も調べてみましたが、いっぱいで入れなさそうで......。そこで、夫に相談してみたら『じゃあ、僕が育休とろうか』といわれて『じゃよろしく』みたいな感じで決まりました」

廣畑さんは、産前の1カ月と産後の3カ月、計4カ月間の育産休を経て職場に復帰。その後、夫が3カ月間の育休を取得した。その当時、夫の勤務する日系企業では、男性初の育休取得者だったそうだ。

■小さな子供がいることで、仕事のプランニングは効率化

2人の子供は今、保育園に通っている。子供の送り迎えは、夫婦で曜日ごとに分担しているという。家事や育児は「夫と平等に分担しています」と話す廣畑さん。限られた時間のなかで、働きかたを工夫していることはあるのだろうか。

「どのお母さんも同じようなことをいわれると思いますが、プライオリティ・セッティング(優先順位付け)が変わりましたね。ひとりのときや、夫だけのときは、夜遅くに帰っても迷惑はかかりませんでしたが、子供がいるとそういうわけにはいきません。保育園のお迎えは絶対ですし、子供が熱を出したら、面倒見るのは私です」

「明日、子供が熱出すかもしれない。『明日やろう』と思っていることが出来ないかもしれない。そう思うと『今日これは絶対やっておかなきゃ』『上司にメール書いてここは進めておかなきゃ』と、その日のタスクやプランニングの効率を考えるようになりましたね」

■身近な人の「良かったよ」が、仕事の原動力

廣畑さんは、結婚や出産などによってライフスタイルが変化したことが「マーケティングに生きている」と語る。

「子供は、ふたりとも女の子で髪を伸ばしているんです。保育園は制服なので、おしゃれが楽しめるのは髪型だけなんですね。髪をどう可愛く結んだり、スルスル、さらさらに見せるために子供たちなりに工夫しているのは微笑ましいです。『母ちゃんの髪、いい匂い 私にもしてー』といいながら、私の髪を触ることもあります。まだ小さいですけど、子供たちを見ていると、髪がこんなにも美意識を目覚めさせるものなんだって実感します」

家族や友人など身近な人の思いがけない感想をもらうこともある。廣畑さんは以前、SK-Ⅱを担当していたときにも、母親から喜びの電話をもらったことがあるそうだ。

「母がSK-Ⅱを使い始めたら、すごく綺麗になっていったんです。あるとき、同窓会に参加した母が、友だちから『綺麗になったね』っていわれたらしくて、思わず私に電話してくれました(笑)。友だちが『気になる彼に、肌きれいになったねと声をかけられた』といってくれたこともありました」

「家族や友人は、一番率直な意見をいってくれる厳しいユーザーでもあります。そんな人が喜ぶなら、世の中の人も気づいて反応してくれているかもしれないと思うんです。身近な人からの『良かったよ』が私の原動力ですね」

■85%以上の人が違いを実感した、新しいパンテーン

そんな廣畑さんが「このパンテーン、本当にすごいんです」と自信を持ってすすめる新商品が8月に発売される。すでに日本でNo.1のシェアを誇るロングセラーのパンテーンは、どう変わったのか。

「新しいパンテーンは、友人も含めて、初めて使用した人の85%の人が、『すごく良かった』といってくださったんです。今回は、本当に自信があるので、みなさんに実感してほしくて、"実感"というキーワードでキャンペーンを展開しようと思っています」

「大きなところでは、コンディショナーのテクノロジーにリニューアルがありました。パッケージにあるように、ポイントは『ピンポイントでダメージ補修』です。今までは、髪のダメージに関わらず、毛先にも根元にも均等に補修成分がついていましたが、"この子"は、髪のダメージを感知して、そこに集中して成分を届ける、最新のテクノロジーが導入されています」

新しいパンテーンは、一人ひとりの髪のダメージを感知して、集中的にケアをするテクノロジーが導入されているという。

■髪のダメージを補修「使った瞬間から、手触りが違う」の声

新商品のアンケート調査では、多くの人が「コンディショナーを使っているときから、違いが分かる」と回答している。廣畑さんによれば「その違いは"手触り"にある」という。

「コンディショナーは、使う人によって、軽いと感じたりヌルヌルすると感じたりするものですが、今回のパンテーンは、非常に高評価をいただいています。違いは、"手触り"です。コンディショナーをすすぐときの、手の感触が気持ち委いいんです。ベタつかず、コンディショナーの成分が、髪にキュッと綺麗にくっつく感じがすると思います」

「髪がパサパサするときは、毛が空洞になっているイメージなんですが、新しいテクノロジーによって、空洞に補修成分がガーッと届いて、空洞が埋まるんですね。洗っている最中から、スルンとした髪の手触りを感じていただけると思います」

■グローバルの新商品、「消費者の目が厳しい」日本で先行発売

パンテーンの新商品は、世界に先駆けて、日本で先行発売される。「一番消費者の目が厳しい」とされる日本での反応を、グローバルのP&Gが見守っているという。

「P&G では、グローバルでテクノロジーを開発しています。その新商品を、どこから展開していくかを考えるんですが、やっぱり、一番消費者の目が厳しい日本で成功することが、アジアや他の国での成功につながると考えています。大きなテクノロジーの変更・導入は、まず日本から。日本のみなさんに、一番最初にお届けできることはうれしいし、やりがいがありますね」

新商品は、ダメージケアにフォーカスした黄色と、潤いにフォーカスした青のツーライン。廣畑さんは「No.1のシャンプーブランドだからこそ、女性の髪の悩みに合わせたケアを提案していきたい」と意気込む。

■「髪の綺麗から人生までも輝かせる」パンテーンの哲学

新しいパンテーンのことを、"この子"と呼ぶ廣畑さん。我が子のように愛情を注げるのは、ブランドが持つ世界観や、フィロソフィー(哲学)に大きな力があるからだろう。

「パンテーンというブランドは、『髪の毛の綺麗さから、その人の人生までも輝かせたい』という夢を持っています。壮大かもしれませんが、私にとっては、そうだよねって思えるんですね。たとえば、前日に『明日はデート、こんな服を着てお出かけよう』と思って寝たとします。翌朝『準備しました、メイクもお洋服もばっちり。でも、なぜか髪がまとまらない......』ということ、ありますよね」

「お洋服やお化粧に気を遣われている方でも、ヘアケアまでも同じくらい重要視している方は、あまり多くないと思います。でも実は『今日、イマイチ髪型が気に入ってない』『雨だから、髪がまとまってない』と気にされている方は多い。みなさん、意外と『髪型が決まってないんから、今日ちょっと気分乗らない』と思っているんです」

「シャンプー替えるだけで、毎朝気持ちよく過ごせるかもしれない。だからこそ、もっとヘアケアを楽しんでもらって、もう少し真剣にヘアケアを考えてもらいたいです」と廣畑さんは微笑む。

■「周りに助けを求める」という選択肢、チームで働くP&G

消費者に一番近いマーケターとして「24時間、パンテーンのことを考えています」と話す廣畑さん。夫と家事や育児は協力しているが、多忙な日々のなかでプライオリティについて悩むこともあるという。

「今もしょっちゅう悩んでいます。キャリアをとるのか、子育てをとるのか。将来どうするのか、私はどうありたいのか。そんなときに、先輩から『どうなるかわかんないから、そんなに悩むな』とアドバイスされて、肩の力が抜けたところがありました。先輩は『今やりたいけどできないものは、優先順位を落とすのではなく、周りに助けを求めて、やれるようにしていったらいいじゃん』といってくれたんです。この言葉で『あ、そうか』と思えました」

廣畑さんは今、子供の病気などで急に会社を休まなければならないときも、事前にチームのメンバーと確認点を共有し、プロジェクトを進められるように工夫している。

「昨日も、代理店との大事なミーティングがあったのに、子供が急に熱を出して会社を休まなければなりませんでした。昔は、大事な会議にプロジェクトリーダーが参加しないなんて......とくよくよしたと思います。でも今は、あらかじめ確認点の指示を出したり、自分の意見を伝えておくことで、上司やメンバーにまかせるようにしています。『私が次にチームやプロジェクトのためにできることをやろう』と気持ちの切り替えができるようになりました」

「周りに助けを求める」という選択肢を素直に活用するようになった廣畑さんは、上司や同僚などのサポートも得ながら、チームで働いている。

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