コンセプチュアル・アーティストの第一人者として世界的に知られる日本人画家の河原温氏が亡くなったと、7月10日ハフィントンポストUS版が報じた。81歳だった。
訃報は、まずツイッターで広まったが、David Zwirner Galleryの代表によって確認された。そのギャラリーは、1999年以来河原氏の窓口を務めている。
河原氏は1933年生まれ。1950年代初頭に東京で初の展覧会を開催している。謎めいた抽象芸術作品で有名になったが、始まりは全く違う作風だった。10代の頃は、広島と長崎に原爆が落とされた太平洋戦争の時代で、初期作品(その多くは河原氏自身の手で廃棄された)は、戦時中のグロテスクな心象風景を描いており、その作風は体の一部を切断された人の習作などに見られる。彼の「人の死」をテーマにした作品は主に海外で高い評価を得ている。
最近の河原氏の作品は、「人間の存在における時空」に関するものだった。河原氏の最も有名なプロジェクト、the Today Series(日付絵画)は、彼が作業を終えた日が完成、というものだった。一連のコンセプチュアル絵画は、河原氏が発明したルールによって導かれる。各キャンバスには、各々が描かれた国の言語と監修に則った制作日のみが記載されている。このシリーズの第一弾は、河原氏が最終的に故郷と呼んだニューヨークで描かれた。
河原氏はキャンバス1枚の完成に1日かけ、常に同じブランドの絵の具を四、五重に塗るというものだった。手作業で白く描かれたレタリングは、キャンバスのサイズにかかわらず一貫して同様に描かれていた。
河原氏の後期の作品の多くと同様、このシリーズは人道的かつ臨床的というものだった。作品は予め決められたガイドラインに沿って構成されていたが、また、これら作品は鑑賞する者に独特の感情を呼び起こすというものだった。河原の作品の出版社、Phaidon Pressのウェブサイトでのエッセイでは、公案(禅の問答)、「答えのないパズル」のトリックについて比較している。
「日付絵画は、臨床的に客観的なものですが、あなたの結婚式や、お子さんの誕生日などの日と出くわすと、突然、その時点から個人的で刺激的なものに変わるのです」
それと同等に、作品に取り組んでいた時の河原氏の存在の状態、そして、より一般的な存在の性質というものにも重点が置かれていた。描かれた日付は河原が生きていた日を表す。作品のない日は「一体河原温とは何だったのか?」という謎かけが添えられる。
昨年のDavid Zwirner Galleryでの展示会カタログでは、日本の作家、山辺冷が、この未知の状態を「生と死の間の点滅」と呼んでいる。
「このシリーズは河原の肉体が消滅した時に完成します」「重責されたものがついに、完全に崩壊し、河原が「死」という不可逆な状態に入った時」と山辺は書いている。
「河原温--Silence」が来年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で展示される予定だ。
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