インターネット上に掲載された個人情報の削除を求める「忘れられる権利」が、ヨーロッパ連合(EU)で認められたことで、欧州の報道機関に多大な影響が出ている。7月2日には、少なくとも2社の報道機関が、自社の記事へのリンクがGoogleによって消されたことを明らかにした。
EU司法裁判所は5月、Google社に対し、記事で取り上げている人物が求めた場合は、検索エンジンから記事へのリンクを削除するよう命じた(日本語版記事)。EU司法裁はその際の条件として、それらの情報が「検索の目的に関連して、また経過時間を考慮して、不適切もしくは無関係、または、もはや関係がないか、あるいは行き過ぎている」場合に、リンクを削除できるとした。
しかし、この判決が下された際には、自身について好ましくない情報(特にマスコミ報道)が表に出ないようにしたいと考える著名人の手に、あまりに大きな力が委ねられることになると懸念する声もあった。
イギリスの「ガーディアン」紙と「BBC」は2日、まさにそのような事態が自社の記事で発生したことを明らかにした。
BBCの方が、問題は厄介かもしれない。なぜなら、「ウォール街の大物」が関係しているからだ。BBCで経済を担当するロバート・ペストン記者はブログ投稿で、自らが2007年に執筆したスタン・オニール氏についてのコラム記事が削除されていることを取り上げた。
ペストン記者のブログ投稿で名前が挙がったのはオニール氏だけだった。同記者のコラム記事で面目を失った元有力者が、Google社に働きかけてリンクを削除させたのではと推測されやすい状況だ。
ペストン記者は、次のように不満を訴えている。
私のコラム記事では、投資会社のメリルリンチ社が無謀な投資を行ったことで莫大な損失を被った後、オニール氏がいかにして同社から追い出されたかを説明していた。この記事にある情報は、「不適切か無関係、または、もはや関係がない」ものだろうか? それは疑問だ。
ほとんどの人は、ビジネス世界におけるリーダーの行動を、その善しあしは別として、公の記録として残すことは適切だと考えるだろう。記憶にある限り最悪の金融危機で重要な役割を果たしたと広く考えられている人物の場合は、特にそうだ(破綻寸前になったメリルリンチ社は翌年の2008年、バンク・オブ・アメリカ社に買収された)。
一方、ガーディアン紙のジェームス・ボール記者は、同紙の記事6本が、Googleのヨーロッパ版サイトから削除されたとの通知をGoogle社から受け取ったと書いている。
そのうち3本は、ダギー・マクドナルド氏に関する2010年の記事だった。同氏はサッカーの元審判員で、ある試合で下した判定について「嘘をついた」と告白し、その後辞職した人物だ。
残りの3本は、あるコラムニストの2011年10月と11月の記事一覧と、詐欺事件の被告となった弁護士に関する2002年の記事、それと、パリで開催されたポストイット・アートに関する2011年の記事だ。
ボール記者はこれらの記事について、Googleのアメリカ版ではまだすべて表示される(EU域内のユーザーがアメリカ版Googleを使えば表示される)と指摘した。そして、こうした記事の削除は、「報道の自由に対する、間接的だが巨大な挑戦」だと付け加えた。そして同記者は、記事を削除する決定を行うという重い責任をGoogle社に負わせることが果たして適切なのか、と問いかけている。
[Jack Mirkinson(English) 日本語版:湯本牧子、合原弘子/ガリレオ]
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