安倍晋三首相は北朝鮮を訪問するのか? 日朝協議、7月に再開

10年近く停滞していた拉致問題の進展ぶりに、「安倍晋三首相が北朝鮮を訪問するのではないか」との観測も流れ始めた。
AFP時事 / AFP via Getty

北朝鮮による拉致被害者などの再調査を巡り、日朝外務省局長級協議が7月1、2日に開かれる見通しとなった。

2014年5月の日朝協議で合意した、日本人拉致被害者などの調査機関設置、その見返りとなる経済制裁の一部解除などが議題となるとみられるが、10年近く停滞していた拉致問題の進展ぶりに、「安倍晋三首相が北朝鮮を訪問するのではないか」との観測も流れ始めた。

8月の外遊が延期に

5月の日朝協議とほぼ同時に、安倍首相の外交日程が変更され、これが「首相訪朝の準備か」と臆測を呼んだことを、朝日新聞デジタルは伝えている。

5月末、安倍晋三首相が8月に予定した中央アジア外遊の日程を外すよう関係省庁に指示。外遊は延期された。理由は極秘とされたが、情報に接した複数の政府関係者は口をそろえた。「考えられる理由は内閣改造か訪朝だった。だが、タイミングを考えれば訪朝に備えた動きとしか思えない」

中央アジア外遊は本来、8月25日から31日まで、カザフスタンなど計5カ国を訪れる計画だった。政府内には「(交渉が進んだ)万が一の場合に備えた準備」との見方もある。ただ、首相訪朝の準備を想定すると2カ月ほどしか残っていない。

(朝日新聞デジタル『「首相訪朝か」拉致巡り波紋 8月の外遊延期受け』より 2014/06/20 05:00)

総連本部ビルの競売手続きも停止

もう一つは、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の中央本部ビル(東京都千代田区)を巡る動きだ。

バブル期に在日朝鮮人向けの金融機関・朝銀信用組合が全国で経営破綻した処理を巡り、整理回収機構が申し立てていた競売は、紆余曲折の末、2014年3月24日に高松市の不動産投資会社「マルナカホールディングス」に売却が許可された。

この手続きを、最高裁は6月19日付で、いったん停止することを決めた。

手続きに必要な書類が落札者に届き、代金を納めれば所有権が移転する。しかし、マルナカHDには地裁から書類が届かず、決定から1カ月以上も手続きが進まない異例の状況になっていた。

一方で、売却可能な状態は続いており、朝鮮総連からの不服に対する最高裁の結論が出る前に、マルナカHDに所有権が移転すれば、不動産の権利関係が複雑になるおそれがあった。このため、最高裁は売却手続きを正式に止め、マルナカHDへの売却許可が妥当だったのか、時間をかけて審理することにしたとみられる。

(朝日新聞デジタル「総連本部売却、最高裁が手続き停止 決定の有効性を審理」より 2014/06/20 20:14)

背景には、「事実上の北朝鮮大使館」とも言われる朝鮮総連の中央本部ビルの売却には、北朝鮮政府が強く反発していたことがある。2014年5月の日朝協議の合意文には、日本が「在日朝鮮人の地位に関する問題について、日朝平壌宣言にのっとり誠実に協議」するという一文がある。北朝鮮側は総連ビルの競売問題が、在日朝鮮人の地位に関する問題に「含まれる」との見解を示し、「合意文書の中にはない」(菅義偉官房長官)とする日本側とは見解の相違があるとみられていた

これについて、日朝交渉にともなう政治判断との見方も一部にある。

岸田文雄外相は6月3日の参院外交防衛委員会で「訪朝についても考えていく」と含みを持たせた答弁をしたが、安倍首相は6月24日の記者会見で「現時点で検討をしているということは全くない」と否定した

日本人拉致問題は、2002年9月17日に小泉純一郎首相(当時)が北朝鮮を電撃的に訪問して、故・金正日総書記と会談。金総書記が拉致の事実を初めて公式に認めて謝罪し、被害者5人の帰国につながった経緯がある。

ただ、当初「一時帰国」としていた方針を、帰国後に永住帰国に変更したため、北朝鮮側が反発。2004年5月に小泉首相が再訪朝して金総書記と会談した結果、2年前に一時帰国した被害者の家族5人が日本に帰国した。

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