自民党の石破茂幹事長は6月21日、読売テレビの番組に出演し、自民・公明で議論が続いている集団的自衛権行使容認をめぐる協議について、なぜ政府・与党が今国会で、集団的自衛権の議論を積極的に行っているのか、さらに、なぜ今の状況で集団的安全保障の話を持ちだしたのかについて説明した。
集団的自衛権を巡っては、自民党は遅くとも7月上旬までに、行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定を行いたいとしており、20日まで開かれていた国会期間中に、閣議決定案をまとめたいとしていた。
これに対し公明党は、行使容認に歯止めをかけたいとしていたため、調整が難航。さらに19日になって自民党は、侵略行為を行った国に、国連加盟国が共同で制裁を行う「集団安全保障」についても行使を容認するような案を示し、公明党の猛反発を招いた。集団安全保障はこれまでの憲法解釈では認められないとされており、今回の協議も集団的安全保障について議論しているわけではなく、集団的自衛権に関するものとしてきたためだ。
そもそもなぜ今、集団的自衛権の議論が行われているのか。また、自民党が集団的安全保障を持ちだした理由は何だったのか。
■なぜ今、集団的自衛権の議論が行われているのか
番組出演者のフリーキャスター・伊藤聡子氏は、現状の日本を取り巻く安全保障の問題について「今、日本の中で、本当に不安だと思っている人は少ないのではないか」と述べ、集団的自衛権の問題が積極的に議論されていることに疑問を呈した。また、閣議決定では国民に議論の内容が明らかにされないまま進むとして、「国会の場で議論すべきではないか」と石破氏に質問した。
これに対し石破氏は、「不安が現実になってから、法律や(自衛隊の)装備を整えるとなっては遅い。不安が現実にならないようにするために備えをするのが安全保障のわかりにくいところ。実際にみんなが不安になったりしないように、今やっておかなきゃいけない」と述べた。
また、閣議決定内容を議論していることについても、「閣議決定でなんでもできるようになるわけではない。閣議決定して初めて、法律が書ける」として、法律については国会で議論することになるという考えを述べた。また、医療、年金、介護などについても、近々、閣議決定することも明らかにした。
■なぜ今、「集団安全保障」を持ちだしたのか
集団安全保障とは、多数の国が条約などによって武力の行使を禁止し、これに違反した国に対して国連などが組織的な制裁を加えて戦争を防止する制度だ。
個別自衛権、集団的自衛権、集団安全保障の違い
自民から集団安全保障が持ちだされたことに公明党側は、「安倍総理大臣はこれまで、自衛隊が武力行使を目的に湾岸戦争やイラク戦争のような戦闘に参加することはないと発言しており、矛盾しているのではないか」と反発。北側一雄副代表も19日、「そういう極めてレアな話を議論してどうすんねん」と記者団に述べている。
石破氏は、国連自体が集団安全保障のシステムであると説明。自衛隊が行うのは空爆などの戦闘行為ではなく、機雷の除去などの「受動的、限定的」な内容だとしたうえで、番組内で次のように述べた。
「国連で、アメリカやロシア、中国、フランスなど(安全保障理事国)が拒否権を行使したら、集団安全保障機能は動かないんです。動くまでの間、個別自衛権や集団的自衛権を行使してもいいですよというのが、国連の仕組みなんです。
それまで集団的自衛権では行っていた機雷除去を、(集団安全保障で)国連が(制裁を)やっていいということになったときに、日本は参加しませんというのは、おかしくないですか」
また、集団安全保障についての議論がこれまで行われてこなかったことを、この時期に俎上にのせたことについては、「今後も議論が行われないと、かえって国際社会から浮いてしまう」と明言。閣議決定案に含めるかどうかではなく、集団的自衛権についての議論を、今後継続して行うのかどうかを、自民党の高村正彦副総裁と北側副代表の間で調整するとした。
石破氏は閣議決定案の文言の調整について「国会休会中も自民党、公明党の中で議論は行う。来週のなるべく早い時期に、合意を得たい」と述べ、自公合意について意欲を示した。