アメリカの電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モーターズ は6月12日、所有する特許を全て開放すると発表した。最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスクは、全面開放に至った背景をブログに綴り、「真の競争相手は他社ではなく、世界中の工場から吐き出されるガソリン車なのだ」と、自らの信念を述べた。
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当社の特許の全てがあなたのものに
昨日、パロアルトにあるテスラ本社のロビーには、テスラが所有する特許が貼り出されていた。しかし状況は一変し、特許の表示は取り外された。オープンソース化の精神に基づいた、電気自動車技術の発展のための動きである。
テスラ・モーターズは持続可能な輸送手段の到来を加速させるために設立された。魅力的な電気自動車の生産のための道筋を開こうとするときに、他社を邪魔する知的財産権という地雷を埋めることは、目標の達成に矛盾する行動である。
テスラは誠意を持って同社の技術を利用する企業に対して、特許侵害の訴訟を起こさないことを決めた。
私がZip2を起業した時、特許は良いものであると考えていたし、特許を取得するために努力した。それはすごく昔の話であるかもしれないが、近頃、特許は進展を抑えつけ、大企業の地位を確立させ、特許発明者ではなく弁護士の懐を肥やすだけとなっている。
Zip2の後、特許を取得することが、実は訴訟への宝くじを買うようなものであると気づき、できるだけ避けるようにしてきた。
しかし、テスラでは特許を取得せざるを得なかった。
大手自動車メーカーが我々の技術をコピーし大量生産、販売、マーケティングのために利用してテスラを圧倒することを懸念したためだ。
我々は間違っていた。残念なことに現実は正反対だったのだ。大手自動車メーカーの電気自動車開発プログラム(または炭化水素を燃やさない自動車のためのプログラム)はとても小規模であるか、まったく存在しなかったのだ。電気自動車の販売台数は平均して、合計の販売台数の1%以下に過ぎなかった。
良くても、大手自動車メーカーが生産する電気自動車の種類は少なく生産台数もわずかだった。
ゼロ・エミッション(二酸化炭素排出量がゼロの)自動車を全く製造しないメーカーもある。
年間の新車生産台数が1億台を超え、世界全体の車両台数がおよそ20億台となっている今、テスラが二酸化炭素排出量の問題という危機に対処するため、速いスピードで電気自動車を開発することは不可能だ。
これはまた、市場が巨大であるということを意味する。当社の真の競争相手は電気自動車を手掛ける他社ではなく、世界中の自動車工場から洪水のように毎日吐き出されるガソリン車なのである。
テスラや電気自動車を製造する他の企業、世界全体が急速に発展する共有技術プラットフォームの恩恵を受けると信じている。
技術リーダーシップは特許で決まるのではない。歴史が示すように、特許は手強い競争相手にとってはちっぽけな保護にしかならない。むしろ、能力の高いエンジニアを誘致し動機づけをする企業の能力により決まるのである。
我々は、当社が所有する特許にオープンソースの哲学を当てはめることが、テスラの立場を弱めるのではなく、逆に強化させることができると信じている。
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イーロン・マスクは2013年2月に行われた講演で、テスラ・モーターズや民間ロケットや宇宙船の打ち上げ事業を行う「スペースX」といったプロジェクトについて語っている。
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