拉致被害者の再調査、北朝鮮が約束 日本側は制裁を一部解除へ

安倍晋三首相は5月29日、報道陣に対し、北朝鮮側が拉致被害者や、拉致の疑いがある特定失踪者を含む日本人について再調査することを約束したと明らかにした。
時事通信社

北朝鮮による日本人拉致問題が、再び動き出すことになった。

安倍晋三首相は5月29日、報道陣に対し、北朝鮮側が拉致被害者や、拉致の疑いがある特定失踪者を含む日本人について再調査することを約束したと明らかにした。発言は以下の通り。

ストックホルムで行われた日朝協議の結果、北朝鮮側は拉致被害者および拉致の疑いが排除されない行方不明の方々を含め、全ての日本人の包括的全面調査を行うことを日本側に約束をしました。

その約束に従って、特別調査委員会が設置をされ、日本人拉致被害者の調査がスタートすることになります。

安倍政権にとりまして、拉致問題の全面解決、最重要課題の一つであります。

全ての拉致被害者のご家族がご自身の手でお子さんたちを抱きしめる日がやってくるまで、私たちの使命は終わらない。この決意を持って取り組んできたところでありますが、全面解決へ向けて第一歩となることを期待しています。

(MSN産経ニュース『安倍首相「全面解決へ向けて第一歩となる」 ぶら下がり会見全文』より 2014/05/29 18:56)

続いて菅義偉官房長官も記者会見を開き、調査開始の段階で、日本が独自に課している北朝鮮への制裁措置を解除し、人道支援の実施を検討することとした。調査の開始時期は「今後3週間前後」との見通しを示し、北朝鮮側は開始前に組織や構成などについて日本側に通報することとした。

再調査の「特別委員会」には、第2次世界大戦直後に北朝鮮で死亡した日本人の遺骨問題や、北朝鮮に渡った日本人妻なども含まれる。

官房長官が発表した合意の概要は以下の通り。

1、北朝鮮は拉致被害者、特定失踪者を含む全ての日本人に関する調査を包括的、全面的に実施

1、北朝鮮は特別の権限が付与された特別調査委員会を設置

1、北朝鮮は調査状況を随時通報し、生存者発見の場合は帰国させる方向で日本側と協議

1、日本は調査開始時点で、人的往来の規制、送金報告・携帯輸出届け出の金額規制、人道目的の北朝鮮籍船舶の入港禁止を解除

1、日本は在日朝鮮人の地位に関する問題について、日朝平壌宣言にのっとり誠実に協議

1、日本は人道的見地から、適切な時期に北朝鮮に対する人道支援の実施を検討

(時事ドットコム「日朝合意骨子」より 2014/05/29 19:37)

朝鮮中央通信も29日、以下のように報じた。

「会談で双方は、朝日平壌宣言に従い、不幸な過去を清算し、懸案を解決して国交正常化を実現するために真摯な協議を進めた。

日本側は1945年前後に共和国内で死亡した日本人の遺骨問題と残留日本人、日本人配偶者、拉致被害者および行方不明者を含むすべての日本人について調査を我が方に要請した。我が方は日本側が過去に拉致問題に関して共和国がしてきた努力を認めたことを評価し、従来の立場はあるが、包括的で全面的な調査を進め、最終的に日本人についてのすべての問題を解決する意思を表明した。

日本側は現在、独自に課している対朝鮮制裁措置を最終的に解除する意思を表明した。

(中略)

日本側は、日本人遺骨問題について、共和国側が遺族の墓地訪問に協力したことを評価し、共和国領内に放置されている日本人の遺骨および墓地の処理、墓地訪問について共和国側と協議を続け、必要な対策を立てることとした。

我が方は、日本側の遺骨および墓地と残留日本人、日本人配偶者、拉致被害者および行方不明者をふくむすべての日本人に対し、包括的な調査を全面的に同時並行で進めることとした」

■横田めぐみさんら12人が再調査の対象に

2002年9月に小泉純一郎首相(当時)が平壌を訪問して金正日総書記(当時)と会談し、金総書記は拉致を認め謝罪した。日本政府は拉致被害者として17人を認定し、うち5人は2002年に日本に帰国したが、残る横田めぐみさんら12人について北朝鮮側は「死亡」「入国していない」などと発表し、日本側が再調査を求めていた。

5月26~28日にスウェーデンのストックホルムであった日朝局長級協議で、拉致被害者の再調査などが協議されたが、両国の当局者は結果について明言せず、日本では「合意せず」と報じられていた。

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