［バンコク ２２日 ロイター］ - タイのプラユット陸軍総司令官は２２日、政府機能の全権を軍が掌握したと明らかにし、クーデターを宣言した。政治改革を推進し、秩序を回復させるという。
テレビ放送で司令官は「迅速に平時の状況を回復して社会を平穏に戻すとともに、政治・経済・社会構造を改革するため、軍が全権を掌握する必要がある」と宣言した。外交には影響しないとしている。
タイ軍は全土に午後１０時から翌朝午前５時までの夜間外出禁止令を発令した。
米国防総省はこれを受け、タイとの軍事協力体制を見直すと発表。現在実施中の約７００人の海兵隊を動員した訓練も見直しの対象に含まれるとしている。
タイ軍のウィンタイ報道官はテレビ放送で、プラユット司令官が率いる軍事評議会が同国を暫定統治すると述べた。また、憲法を停止したと表明。ただ、議会の上院とすべての裁判所は引き続き機能する。 これに先立ち、プラユット司令官はすべての勢力を集めた会議を開いていたが、反政府デモを続ける人民民主改革委員会（ＰＤＲＣ）のステープ元副首相は、会議の場から兵士により連れ出されていた。
＜デモ隊は散会＞
タイの政府を支持するタクシン派グループ、赤シャツ隊のリーダーは、軍がクーデターを宣言した後も集会を継続するとしたが、軍側は空砲で威嚇、デモ参加者は特に抵抗もせず散会しているもようという。 ウィンタイ報道官は、テレビ放送を通じて、バンコクで集会を開いている政府派と反政府派のデモ隊に撤収を命じた。ただ、ロイターのカメラマンによると反政府派デモ隊は集会の場所から離れる様子はないという。ただその後、デモ隊は平和的に散会した。
報道官は、５人以上の集会を禁じるとも発表。違反者は１年以上の懲役に科される可能性があるという。
同報道官はまた、すべてのテレビおよびラジオ局に通常の放送を中止し、陸軍に関連するものだけ放映するよう命じた。
＜タクシン派は直ちに反対集会開かず＞
前年末に反政府デモの活動が高まって以来、２８人が死亡、７００人が負傷している。
サイアム・インテリジェンス傘下のシンクタンクのKan Yuanyong氏は、「戒厳令は動向をうかがうために発令された可能性がある。軍は対立する双方の陣営が解決に向けた協議が行えるようにした。ただ、最終段階では常に軍が実権を掌握する」と指摘。「タクシン派は反撃する」とし、「混乱が深まる可能性は今は一段と高まっている」と述べた。
タクシン元首相からコメントは得られていないが、タクシン派の活動家Mahawon Kawang氏は、当面はこの日の動きを精査するとし、直ちにバンコクで反対集会を開く予定はないとしている。
＜国際的な非難高まる＞
タイ軍によるクーデターに対し、国際的な非難が高まっている。日本政府は、軍によるクーデターに遺憾の意を示し、直ちに民主体制を回復するよう求めた。また、オーストラリアのビショップ外相も深い懸念を表明。国連も非難する立場を示している。
政情不安を受け、タイの国内総生産（ＧＤＰ）は第１・四半期は前期比２．１％減少。２期連続のマイナス成長となる恐れも出ている。
クーデターを受け、バーツは対ドルで下落。１ドル＝３２．５４バーツと、クーデター前の３２．３８バーツから下落した。
バンコク株式市場は軍がクーデターを宣言する前に取引を終了。ＳＥＴ指数
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