出生率、目標数値の提言見送り 「国民の目標ではなく、政府と企業の目標にすべし」との意見も

出生に関する数値目標を定めるかを検討してきた内閣府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」は、出生率の目標について具体的な提言を行うことを断念した。出生率を「国民の目標ではなく、政府と企業の目標にすべし」との意見も出た。
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出生に関する数値目標について検討してきた内閣府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」は5月15日、出生率の具体的数値目標は提言を行うことを断念した。「国が女性に出産を押し付けると誤解されかねない」との意見が相次いだためだ。朝日新聞デジタルが報じた。

安倍晋三首相の指示を受け、有識者会議が検討を開始。大半の委員が、何らかの目標を掲げることを支持した。しかし出生率の目標には、「少子化対策に実効性を持たせるために必要」と支持する意見の一方で、「個々の女性に国が出産を押しつけると誤解されかねない」といった慎重論も相次いだ。「1年間に国内で生まれる子の数」を目標とするなど、別の案も出された。この日の会合で、斉藤英和座長(国立成育医療研究センター副周産期・母性診療センター長)は、「いろいろな意見があったので、一つに収斂(しゅうれん)するのは難しい」と述べた。

 

(『出生率目標、提言見送り 政府会議、賛否割れる:朝日新聞デジタル』より 2014/05/16 05:00)

出生率は、出生に関する数値目標の中の一つの指標として、具体的な数値目標を設定すべきかどうかの検討対象になっていた。

「日本の経済成長を維持するためには、労働力人口の減少に歯止めをかけることが必要で、なんらかの数値目標を定めて取り組むべき」との意見が、経済財政政策を議論している政府の経済財政諮問会議から出たためだ。「一人の女性が一生に産む子どもの平均数である『合計特殊出生率』を、2020〜30年ごろまでに2.07とすることで、人口が減らない水準となる」そのような具体的な数字で指摘されていた。

しかし、出生率に具体的な数値目標を設けることについては、効果的な対策のために目標をかかげるべき、とする賛成意見や、女性の出産を行政が強制すべきでない、という反対意見もある。

そのため、甘利明・経済再生担当相は、「産む、産まないという選択の中には、産みたいけど現実は難しいという事由があると思います。子供をつくりたい、増やしたい人が、自らの意思が発揮できるような環境整備をしていくことが、やはり政府の役目」と述べており、安倍首相も森昌子・少子化担当相に対し、出生率に限らず様々な観点から「少子化対策の具体化について、様々なアイデアを集めながら検討を進めてほしい」と要請していた。

しかし、出生率2.07という数字がひとり歩きしていたと、少子化危機突破タスクフォースに参加した株式会社ワーク・ライフバランスの代表取締役の小室淑恵さんは指摘する。小室さんは出生率の数値目標について、国民の目標ではなく「政府と企業の目標」にすべきと提案したという。

今、さかんにメディアでは「政府が女性に出生率の目標を作ろうとしている!」と流布されていますが、実はそんな議論は全然されていなくて、「国民が子どもを持ちたいと思っている数と、現実に持てているこどもの数が大きくかい離しているので、それは環境のせいなのだから、それを大至急整備するために、数字の目標を決めないと」という議論をしていました。それをかなり曲げて流布されているようです。 私は資料を作っていき、以下のように発言しました。

 

「出生率が国民の目標であるかのように誤解されてはいけない。むしろ”政府と企業の目標”であるべき。出生率向上のためには育児環境整備がきちんと目標設定されるべきであり、特に第1子の子育て期に夫が長時間労働で育児・家事の参画が少ないと、第2子以降の出産が少なくなるという内閣府のレポートを引用して、長時間労働の撲滅と、待機児童ゼロ、政府の家族関係社会支出の対GDP比3%以上を目標にすべき」

 

(『株式会社ワーク・ライフバランスのFacebookページより』より 2014/05/15 19:50)

【※】出生に関する数値目標としては、どのようなものがふさわしいだろうか。あなたのご意見をお寄せください。

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