菅義偉官房長官は5月12日、午前の記者会見で、漫画「美味しんぼ」で東京電力福島第1原発を訪れた主人公らが鼻血を出すなどの描写が議論を呼んでいる問題について「住民の被ばくと鼻血に関係があることは考えられない」と述べた。
菅官房長官は、作中に実名で登場した福島県双葉町の井戸川克隆・前町長が、鼻血の原因を「被ばくしたから」と語ったことについて、井戸川氏は現在民間人となっているため、政府としてのコメントは控えたいとしながら、「福島の原発事故に伴う住民の被ばくと鼻血に関係があるとは考えられないと、専門家の評価がなされている。科学的知見に基づいて正確な知識をしっかり伝えていくことが大事だ」と述べた。
■地方自治体などからの抗議や反論などが相次ぐ
問題は小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日発売号に掲載された「美味しんぼ」で、登場人物が福島第1原発を訪れて鼻血を出すという描写があったことに端を発した。これを受け、双葉町は5月1日に抗議文を発表。石原伸晃環境相は9日の記者会見で「専門家からは福島第一原発の事故による被ばくと鼻血との因果関係はないと評価が出ている。風評被害を引き起こすようなことがあってはならないと思う」と述べた。さらに同日、作中に登場した井戸川前町長が会見で「風評被害ではなく実害だ。被害を受けている人は、正々堂々と賠償請求するべきだ」と述べ、石原環境相の意見に真っ向から対立した。
5月12日に続編が掲載された号が発売され、そこで、井戸川前町長が「(鼻血などの症状は)被ばくしたからですよ」と述べる場面や、大阪の岐阜県環境医学研究所所長の松井英介氏が、大阪市が受け入れた震災がれきの焼却場の近くで眼や呼吸器系の症状が出ていると話す場面が描かれた。これについて同日、福島県が「作中に登場する特定の個人の見解があたかも福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねない」として、公式サイトで見解を発表し、大阪府と大阪市も「事実と異なる」として小学館に抗議したことを明らかにした。
■「作者に表現の自由がある」という声も
作品に対する抗議や反論が相次ぐ中、お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さんは11日、フジテレビの番組「ワイドナショー」に出演し持論を述べた。政治への抗議は当然としながらも、「作品やから。みんなで作るもんじゃない。作者のものであって、周りが抗議したって…外部の人間がストーリーを変えろとかいうのは、ちゃんちゃらおかしい」とコメントした。
自身も映画監督として活躍しているだけに「これに関しては漫画家さんが神、映画に関しては映画監督が神なんですよ」と芸術作品は作者の側に“表現の自由”があると主張。「周りがごちょごちょ言って変えろとか言うのは神への冒とく」と続けた。
(スポニチ『松本人志「美味しんぼ」問題に持論「作品はみんなで作るもんじゃない」』より 2014/05/11 10:51)
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