登場人物が福島第1原発を訪れて鼻血を出すなどの描写が議論を呼んだ連載漫画「美味しんぼ」の続編が、5月12日発売の漫画雑誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」に掲載された。第604話「福島の真実23」では、福島県双葉町の井戸川克隆・前町長が、鼻血の原因を「被ばくしたから」と語る場面があった。
最新話で、井戸川氏は、福島で鼻血やひどい疲労感などの症状が出ている人が大勢出ているとして「私が思うに…被ばくしたからですよ」と語った。また、井戸川氏は「私は前町長として双葉町の町民に福島県内には住むなと言っているんです」と述べる姿が描かれている。また、福島大学准教授の荒木田岳氏が除染作業に携わった経験を基に「除染をしても汚染は取れない」として「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんて、できないと私は思います」と語る場面も登場する。
岐阜県環境医学研究所所長の松井英介氏が、大阪市が受け入れた震災がれきの焼却場の近くで眼や呼吸器系の症状が出ていると話す場面もある。
福島県は12日、県の公式サイトで見解を発表した。大阪府と大阪市も同日、小学館に「事実と異なる」として抗議したことを明らかにした。
福島県は「作中に登場する特定の個人の見解があたかも福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねない」として、「本県への風評を助長する」と批判した。
登場人物が放射線の影響により鼻血が出るとありますが、高線量の被ばくがあった場合、血小板減少により、日常的に刺激を受けやすい歯茎や腸管からの出血や皮下出血とともに鼻血が起こりますが、県内外に避難されている方も含め一般住民は、このような急性放射線症が出るような被ばくはしておりません。また、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書(4 月 2 日公表)においても、今回の事故による被ばくは、こうした影響が現れる線量からははるかに低いとされております。
(中略)
さらに、「福島を広域に除染して人が住めるようにするなんてできない」との表現がありますが、世界保健機構(WHO)の公表では「被ばく線量が最も高かった地域の外側では、福島県においても、がんの罹患のリスクの増加は小さく、がん発生の自然のばらつきを越える発生は予測されない」としており、また、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の報告書においても、福島第一原発事故の放射線被ばくによる急性の健康影響はなく、また一般住民や大多数の原発従事者において、将来にも被ばくによる健康影響の増加は予想されない、との影響評価が示されています。
「美味しんぼ」及び株式会社小学館が出版する出版物に関して、本県の見解を含めて、国、市町村、生産者団体、放射線医学を専門とする医療機関や大学等高等教育機関、国連を始めとする国際的な科学機関などから、科学的知見や多様な意見・見解を、丁寧かつ綿密に取材・調査された上で、偏らない客観的な事実を基にした表現とされますよう、強く申し入れます。
(福島県『「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号における
「美味しんぼ」について 』より 2014/05/12)
原作者の雁屋哲氏は4日、自身のブログで鼻血の描写について「当然ある程度の反発は折り込み済みだったが、ここまで騒ぎになるとは思わなかった」と記した上で、漫画が「風評被害を助長する」とする意見を批判している。
その23、特にその24ではもっとはっきりとしたことを言っているので、鼻血ごときで騒いでいる人たちは、発狂するかも知れない。
今まで私に好意的だった人も、背を向けるかも知れない。
私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない。
真実には目をつぶり、誰かさんたちに都合の良い嘘を書けというのだろうか。
「福島は安全」「福島は大丈夫」「福島の復興は前進している」
などと書けばみんな喜んだのかも知れない。
今度の「美味しんぼ」の副題は「福島の真実」である。
私は真実しか書けない。
自己欺瞞は私の一番嫌う物である。
きれい事、耳にあたりの良い言葉を読み、聞きたければ、他のメディアでいくらでも流されている。
今の日本の社会は「自分たちに不都合な真実を嫌い」「心地の良い嘘を求める」空気に包まれている。
「美味しんぼ」が気にいらなければ、そのような「心地の良い」話を読むことをおすすめする。
(雁屋哲の今日もまた「反論は、最後の回まで,お待ち下さい 」より 2014/05/04)
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