[モスクワ 7日 ロイター] - 7日で大統領として10年の節目を迎えたロシアのプーチン大統領(61)。ウクライナ情勢をめぐり西側との間で緊張が高まり、ロシア経済が減速する一方、国民は大統領を「知的で有能、経験豊かで決断力があり、魅力的」だと見ており、驚異的な支持率を誇っている。
欧米諸国がウクライナ情勢へのロシアの関与を非難するなか、ロシアの世論調査は、プーチン氏が国内での支持を獲得するためにウクライナを利用することに成功していることを示している。
ロシアの独立系調査機関レバダが4月下旬に実施した世論調査によると、プーチン大統領の支持率は82%と2010年終盤以来の高水準に上る。
また、国営調査機関VTsIOMが先月行った調査では、61━66%がプーチン氏を信頼していると回答。信頼していないと答えた人はわずか3%だった。
VTsIOMによると、ロシア国民はプーチン氏について、決断力を兼ね備え、知的で有能であるだけでなく、経験豊富だと高く評価。
さらに回答者の8%が、国営テレビでプーチン大統領が狩りをしたり水泳したりする姿を見て、その体格に良い影響を受けているという。
プーチン大統領は2012年に3期目に突入したが、大規模な抗議デモを受けての船出となった。
<デモ鎮圧>
それ以降、クレムリンは次第に抗議活動を沈静化。VTsIOMの調査では、今後デモが増えると答えた人は昨年後半から急減し、回答者の5分の1以下にとどまった。
また、ウクライナ危機がプーチン氏の人気を押し上げ、同氏の支持率が、好景気に支えられて記録的な高水準となった最初の2期(2000━08年)に迫る勢いであることが明らかとなった。
1954年に旧ソ連の指導者フルシチョフ氏によってウクライナに移管されたクリミアを再び編入するなかで、プーチン大統領はロシア国民のプライドと、そもそもクリミア半島はロシアのものだという広く国民に共有された感情を利用した。
政治アナリストのパベル・サリン氏は「プーチン氏はこれまで、経験豊かで安定を保証してくれる指導者として国民から評価されてきたが、今ではクリミアをめぐる感情を支持獲得の第二のエンジンとしてうまく利用している」と指摘した。
ウクライナで2月に親ロ派のヤヌコビッチ大統領が失脚した後、ロシア系住民を守る必要があるとしてロシアはクリミアを占拠した。
レバダとVTsIOMの調査結果は、3月21日の正式なクリミア編入を含めた、プーチン大統領の対ウクライナ政策と、旧ソ連の周辺国に対する影響力を再構築しようとする大統領の意欲を、国民が広く支持していることを示している。
レバダの調査結果はまた、ロシア国民の大半が、クリミアを取り戻すことは、ロシアが「かつてのような世界の大国としての役割に回帰」していることの表れと考えていることを意味している。
<介入する「権利」>
同調査結果では、ソ連崩壊から20年以上が経過しても、ロシア人の多くが、ロシア系住民を守るため、旧ソ連構成国に介入する権利があるとするロシアの方針を受け入れていることも明らかとなった。
回答者の34%がロシアにはそのような権利はないと答えているものの、ロシアのクリミアでの行動は立派であり、国際法に違反していないとも考えている。
クリミア編入が違法だと考えるのはわずか4%で、15%の人は、編入はプーチン大統領の「冒険主義」が強まっていることの表れだと捉えている。
ロシアはクリミア経済の活性化に向けて大量の資金を投入すると言明しているが、レバダによると、そのようなコストを負担する「用意がまったくない」と答えたロシア人はわずか3分の1だった。
ウクライナに対する政府の見解を広めるため、クレムリンは大手メディアへの規制を強化しており、反対意見が伝えられることはほとんどないといえる。
それでも前述のサリン氏は、ロシア経済がリセッション(景気後退)寸前をさまよい、西側諸国からさらなる追加制裁を受ける可能性があるなか、ある時点でプーチン大統領の支持率が低下することは避けられないと指摘。「クリミア熱は半年以内に冷めるだろう。ロシア政府のプロパガンダや『情報戦』で1年はもつ可能性はあるが、プーチン氏の支持率はその後、低下を余儀なくされるされるだろう」と述べた。
(Gabriela Baczynska記者、翻訳:伊藤典子、編集:佐藤久仁子)
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