「日本では同性愛を話題にすらしない」LGBTの祭典「東京レインボープライド」参加者が訴え

世界ではセクシャル・マイノリティ(性的少数者)への理解や同性婚の法制化が進んでいる。日本でも、差別を撤廃して性の多様性をアピールするためのイベント「東京レインボープライド2014」が4月27日、東京都渋谷区で開催された。パレードには約3000人が参加し、「差別しない寛容さを持って」と口々に訴えた。

女優のジョディ・フォスターさんが4月、女性写真家と同性婚をしたことがわかりニュースとなったが、世界ではセクシャル・マイノリティ(性的少数者)への理解や同性婚の法制化が進んでいる。日本でも、差別を撤廃して性の多様性をアピールするためのイベント「東京レインボープライド2014」が4月27日、東京都渋谷区で開催された。LGBT(レズビアン/女性同性愛者、ゲイ/男性同性愛者、バイセクシュアル/両性愛者、トランスジェンダー/心と体の性の不一致など)といった人たちのイベントで、来場者は約1万4000人。午後1時半から行われたパレードには約3000人が参加し、「差別しない寛容さを持って」と口々に訴えた。

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■ 世界で加速する同性婚法制化の流れ

現在、LGBTに対する差別の撤廃と同性婚を認める流れは世界各国で加速している。

2001年にオランダで世界初の同性結婚法が成立したのを皮切りに、その後ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカ、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、アルゼンチンなどで認められている。近年では、2013年4月にフランスウルグアイ、8月にニュージーランド、2014年3月にイングランドとウェールズ(スコットランドは2月に法案通過)で同性婚を認める法律が施行された。

アメリカでもニューヨーク州はじめ18州で同性婚が認められており、2013年6月26日には連邦最高裁が男女の結婚に限定した連邦法「結婚防衛法(DOMA)」を違憲とし、同性婚者にも異性婚者と平等の権利を保障するという判決を下した。その結果、2008年11月に同性婚の執行を停止していたカリフォルニア州で同性婚者に対する結婚証明書の発行が再開された

■ 同性愛に対する圧力を強める国も

しかし一方で、LGBTに対する差別や圧力を強める国もある。2013年6月11日には、ロシア下院議会が未成年者に「非伝統的な性的関係」(ロシアでは同性愛についてこう表現する)について情報提供することを禁じた「同性愛宣伝禁止法」が成立した。こうしたロシアの人権問題に抗議する意思表示として、アメリカやフランス、ドイツなどの各国首脳は2014年2月にロシアで行われたソチオリンピック開幕式への出席を見送ったが、ロシアのプーチン大統領は「ソチオリンピックではあらゆる差別は排除される。同性愛者も安心してほしい。ただし、子どもには近づかないように」と発言するなど、同性愛宣伝禁止法を撤回する意思は示していない。

また、2014年1月にはナイジェリアで「2013年同性婚(禁止)法」、2月にはウガンダで「反同性愛法」が成立し、同性愛者に対する刑罰が強化された。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、アフリカの54カ国のうち、38カ国で同性愛行為が禁じられている

2013年9月26日には、国連でLGBTの人権問題に関して議論する閣僚級会合が初めて実施され、潘基文国連事務総長は、「我々の時代において極めて重大で、無視されてきた人権上の課題」であると指摘した。

■ 日本で同性婚は認められるのか。イベント参加者に聞く

日本では、同性婚への機運が高まっているという状況とはほど遠い。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、日本国憲法第24条の「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」という条文により同性婚が認められていないとした上で、国民のなかで同性婚に対する関心が低いことや、夫婦別姓も認められていない日本の保守的な風土が背景にあると指摘している。

では、セクシャルマイノリティの当事者と支持者はどう考えているか。「日本で同性婚は認められるか、そして認められるために必要なことはなにか」を東京レインボープライドのパレード参加者に尋ねた。

同性婚はLGBTの権利が法的に認められることを意味しますが、日本の文化の中でそこまで行き着くかはまだ分かりませんね。昔に比べたら同性愛に対する偏見はなくなってきたとは思いますが、何年後、何十年後かくらいにはパートナーシップ制度くらいは成立するのかな、とちょっと期待しています。


そのためには、同性愛の人たちをネタ扱いしているメディアが認識を改めてもらいたいですね。あとは、教育が未来の日本を作っていくものなので、親御さんから子ども、あるいは周囲の人たちというように、日常生活の中で考え、伝えていけるようにすることが一番大切ではないかと思います。


(リョウスケさん)

同性婚は認められるべきだと思いますし、そのうちなると思います。そのためには人々の寛容、理解が求められると思います。


寛容さを得るためには、セクシャルマイノリティの当事者がアピールしていくことかなと思います。こういうパレードに参加することもそうですけど、もっと知ってもらうために活動するかなと。難しいですけどね、嫌な人もいますから。


(チナツさん)

友達は理解できても、職場や家族などから理解されなかったりするので、そのハードルを乗り越えていきたいですね。


(ルミさん)

教育的にも「そういう人たちがいることが当たり前なんだよ」ということを、小学生からとまでは言わなくても、中学校くらいの義務教育の段階でやるべきではないかな、と思っています。


(ジュンさん)

同性婚は、今の段階では厳しいと思います。相当がんばらないと無理だと思う。日本の政党には、まだ同性婚を考える余裕がなさそうなのでとりあえずはパートナーシップ法(注)の整備でいいのではないでしょうか。僕たちは特別扱いもされたくないから、普通に近くにいるんだ、ということくらいは認識していただければと思います。


メディアは固定的な、伝統的なゲイを描く時に、いわゆるオカマっぽいものをイメージさせるように伝えますが、オカマっぽくないゲイの人もいるんだ、ということを伝えていってもらいたいですね。


(匿名)

同性婚は認められるとは思いません。無理だと思います。日本ではセクシャルマイノリティや同性愛を話題にすらしないから、みんながこういう人たちもいるんだということを知って、話題にあげて、存在を認めてくれたら意識も変わるでしょうが、今のままでは時間がかかりそうですね。


外国のように、新聞やテレビで有名人がカミングアウトしたり、サポートしたりしてくれるようになると認知度は上がると思います。海外ではTVショーの司会者がレズビアンだったりしますが、日本ではまだ有名人が言えないですから、環境が変わって、メディアが取り上げてくれるようになったら前進すると思います。


(ケイコさん)

同性婚は難しいと思いますけど、みなさんがんばっていますよね。政府が認めてくれないと前に進まないと思いますので、私たちにできることとして、こういうパレードで盛り上げていきたいです。


(メイさん)

近い将来は難しいかもしれませんが、何十年か経てばいずれは認められると思っています。私はパレードに参加するような活動しかしていませんが、たとえば海外でさらに同性婚が進んで、世界全体が変わっていけばそのうち変わっていくと思います。だからメディアもそうですけど、オカマだ! みたいに煽るのはやめてほしいですね。


(ハルカさん)

私は将来的に同性婚は認められると思います。周囲の理解と多くの人が考えられるように、「ここに問題がある」ということに気づくことでしょうか。だから賛成でも反対でもいいので、メディアがこの問題を広めてくれるといいですね。メディアの方は広めることが一番得意ですからね。


(フクスケさん)

日本では同性婚は難しいでしょうね。でも、同性愛だけではなく、私たちが啓蒙活動を行っているHIVにしても差別がありますから、いろんな差別問題が改善する方向に向かえば、同性婚を議論する流れになるのではないでしょうか。


(オドリコさん)

社会の中で全然理解が得られていないですし、同性婚に対してもいわれのないバッシングを受ける状況があるから、そこが改善されない限り同性婚は難しいでしょうね。セクシャルマイノリティは当たり前の存在なんだということを教育レベルでも、メディアレベルでも周知していくことがとても大事だと思います。


(コウタさん)

現実問題として、同性婚は日本でも可能だと思います。自分たちの活動自体が、自分の性を受け止めて生きていこうという活動ですから、同性婚が認められてほしいという思いもありますし、フランス大使館のブースを見てみたんですが、同性婚が法制化されるなど、性の多様化が認められてきているので、今後は認められるといいな、という願望があります。現実にはわからないですけどね。


(タオさん)

カミングアウトする有名人は少しですけど増えてきていますよね。彼らの露出がもっと増えて、今はまだ偏見が強い環境が少しづつ薄まっていけばいいと思います。


(カイトさん)

私たちは同性婚が認められることを願っています。セクシャルマイノリティの人たちがもっと声を出していくことが、認められる道筋になっていくのではないかと思います。


彼ら以外の人たちは、そういう人たちの存在を知って、「別にいいんじゃない」というくらいのスタンスで、心を広く持ってもらうのがいいのではないかと。


(明治大学セクシャルマイノリティサークル ソウシさん&アスカさん)

同性婚への道のりはまだまだ長いとは思いますが、必ず実現できると思っています。実現のためには、周囲の理解はもちろん、私たち自身が、レズビアン、ゲイ、それぞれ違ったニーズがありますから、そこはお互いに理解し合って、同性婚の仕組みや実現のために必要なことを自分たちの中でももっと考えていくことが必要なのかな、と思います。


特に、レズビアンの女性の場合だとお子さんがいらっしゃる一方で、ゲイの方はいらっしゃらない場合が多々ある中で、同性婚を考える時に、性同一性障害の特例法(注)のように要件を満たす人に限ってスタートするのか、子どもがいる人もOKの形でスタートするのか、あるいは段階的に緩和していくのかということも、当事者の間でまだまだ議論が必要なんじゃないかな、と思います。


ただ、世界的に同性婚が認められているという流れもあるので、後退することなく進んでいくのではないかと思います。LGBTの姿を知ってもらうために、いろんなパートナーシップの形があること、家族にもいろんな形があるんだということを多くの人に理解してもらいたいですね。


(中野区議会議員 石坂わたるさん)

日本の家族法制全体、つまり嫡出子のあり方や結婚のあり方が大きな議論の転換点になっていると思うので、その中で同性パートナーシップや同性婚も新しい家族の一つとして、議論になる余地は十分あると思います。しかし、社会的気運として同性婚だけがとりたてて法制化させる雰囲気にはなっていないと思います。


法律ができるのは一番最後で、むしろ日常生活の中でセクシャルマイノリティが存在するんだというちょっとした配慮や、心のなかに持っている価値観を変換して、当たり前のこととして偏見をなくすことが必要だと思います。


(弁護士 南和行さん)

このように、当事者であるセクシャルマイノリティの人たちや支持者たちの間でも、同性婚法制化への道のりはまだまだ遠いという認識が多数を占める。日本人の大多数はLGBTに対する差別意識以上に、「無関心」であることが大きな要因と考えられる。東京レインボープライドに参加したセクシャルマイノリティとその支持者たちの声が社会に行き渡った時、初めて同性婚の議論がスタートできる環境が整うであろう。

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