人口減少を食い止めるためには、出生率の具体的な数値目標が必要なのではないか——。
内閣府の有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」で4月21日、少子化対策のため、出生率に数値目標を設定するかどうか検討が始まった。会議の参加者からは何らかの形で少子化対策の「成果目標」を定めることを支持する意見が相次いだ。一方、「産まないという権利の尊重は大事」などの慎重な意見も出て、今後も議論を続けることになったという。朝日新聞デジタルが報じた。
この議論は3月に政府の経済財政諮問会議で民間議員が出した少子化対策の提言がきっかけだった。「目標を明確にし、政策の優先順位を明らかにして着手しなければならない」。具体的には2020~30年に「合計特殊出生率」を人口規模が均衡する「2・07」まで回復させ、50年後も1億人の人口規模を保つという目標を提案した。
(朝日新聞デジタル『(時時刻刻)何人産むか目標必要? 「出生率2.07回復」政府会議が検討開始』より 2014/04/22 05:00)
2012年の合計特殊出生率は1.41と前年を0.02ポイント上回ったが、出生数は過去最低の103万7101人だった。
有識者会議「少子化危機突破タスクフォース」は2013年、「生命(いのち)と女性の手帳」(通称「女性手帳」)を提案し批判を浴びた。高齢になると妊娠しにくくなることなど妊娠・出産についての知識を手帳に盛り込むとしたことから、「出産時期などの個人の人生選択に国が口を挟むべきではない」といった意見も出ていた。出生率の数値目標の設定も、国が子どもを産むまない人に対して圧力をかけることにつながりかねず、議論を呼びそうだ。
安倍晋三首相は3月19日、経済財政諮問会議で森雅子少子化相に、「人口減少に歯止めをかけるための目標の在り方を含め、少子化対策の具体化について、様々なアイデアを集めながら検討を進めていただきたい」と指示している。
一方で、諮問会議後に会見した甘利明経済財政相は、「産む、産まないは強制されるものではないし、目標として掲げるものではない」と述べた。
「子供を産む、産まないというのは強制されるものではないし、目標として掲げるものではない、つまり女性の自由な意思であると、それはそのとおりであります。そのとおりである中で、人口の維持に必要な出生数になるような環境整備。産む、産まないという選択の中には、産みたいけど現実は難しいという事由があると思います。子供をつくりたい、増やしたい人が、自らの意思が発揮できるような環境整備をしていくことが、やはり政府の役目だと思います。その結果、人口維持に必要な2.07にまで達してくれれば、それは大変良いことだと思っております。」
(内閣府「甘利内閣府特命担当大臣記者会見」2014/03/19 より)
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