貿易赤字、過去最大の13.7兆円 初の3年連続

財務省が21日に発表した3月貿易統計速報によると、2013年度の貿易収支(原数値)は13兆7488億円の赤字となった。赤字額は12年度の8兆1578億円を上回り、現行統計が始まった1979年以降で最大。第2次石油危機時の1979年度と80年度の2年連続を上回る初の3年連続赤字を記録した。
Reuters

財務省が21日に発表した3月貿易統計速報によると、2013年度の貿易収支(原数値)は13兆7488億円の赤字となった。赤字額は12年度の8兆1578億円を上回り、現行統計が始まった1979年以降で最大。第2次石油危機時の1979年度と80年度の2年連続を上回る初の3年連続赤字を記録した。

円安でも輸出の伸びが低調で、原子力発電所の稼働停止により原粗油や液化天然ガス(LNG)などの燃料輸入が増大。輸入の伸びが輸出の伸びを上回る構図が続いている。

ただ、財務省では貿易赤字拡大が「構造的要因か循環的要因か判別できない」(財務省筋)とし、先行きについても内外経済動向や原油価格・為替レートなど様々な要因で動く」(同)として判断できないとしている。

<13年度輸出は3年ぶり増加、輸入は過去最大>

13年度の輸出は前年度比10.8%増の70兆8564億円で、3年ぶりの増加に転じた。米国向け自動車や中国向け有機化合物が増加に寄与した。数量ベースでも3年ぶりに増加に転じたが、伸び率は0.6%の微増にとどまった。

地域別では、米国向けが2年連続の増加、中国向けは3年ぶりに増加した。

為替レート(税関長公示レート平均)は1ドル99.97円で、対前年度比21.1%の円安だった。

輸入は前年度比17.3%増の84兆6053億円で、過去最大の額となった。原粗油や液化天然ガス、半導体等電子部品が増加した。原粗油輸入額は4年連続で増加。金額ベースでは過去最大となった。

13年度の輸入原粗油単価は前年度比16.6%上昇の6万9215円/キロリットル。ドルベースでは同3.7%低下の110.1ドル/バレルだった。

地域別では、対米国では4年連続で増加し、対中国、欧州連合(EU)、アジアで過去最大の輸入額を記録した。

<3月は輸出が予想下振れ、輸入は高水準>

3月の貿易収支は1兆4463億円の赤字となった。赤字額は3月としては過去最大で、79年の統計開始以来4番目の大きさ。赤字は21カ月連続。輸出が伸び悩む一方、輸入が2桁増の高い伸びを見せ、1兆円台の大幅な赤字となった。

輸出は前年比1.8%増の6兆3826億円。13カ月連続で増加したが伸び悩んだ。数量ベースは同2.5%減と2カ月ぶりに減少した。

為替レート(税関長公示レート平均)は1ドル102.30円で、対前年比8.7%の円安。円安進行による輸出押し上げ効果に息切れが出てきたともみらるが、財務省では「判断はつかない」(財務省筋)と述べるにとどめた。

品目では、自動車(9.0%増)、鉱物性燃料(31.6%増)、鉄鋼(5.4%増)などが増加した。

地域別では、中国向け輸出は同4.3%増と12カ月連続で増加した。自動車(61.2%増)、鉄鋼(27.2%増)などが増加した。

米国向け輸出は前年比3.5%増。15カ月連続で増加したが、伸び率は2012年12月(同0.8%減)以来の低さだった。欧州連合(EU)向け輸出は前年比10.0%増で、10カ月連続で増加した。

輸入は同18.1%増の7兆8289億円で、17カ月連続の増加。増加品目は、原粗油(18.7%増)、液化天然ガス(14.0%増)、半導体等電子部品(45.9%増)などだった。輸入額は過去2位の大きさで、3月としては過去最大となった。

輸入原粗油単価は前年比3.5%上昇の7万0843円/キロリットルで、ドルベースでは同4.8%低下の110.1ドル/バレルだった。

季節調整値では、輸出が前月比2.7%減、輸入は同5.0%増。差引貿易赤字は前月比44.8%増で、2月より赤字額が拡大した。

ロイターが民間調査機関を対象に行った調査では、予測中央値は1兆0704億円の赤字。輸出は前年比6.3%増、輸入は同16.2%増だった。

<構造問題変わらず、市場では今後の輸出増に期待の声も>

指標発表後の市場では、「依然として輸出の数量が伸びず、特に中国を中心にしたアジア減速の影響が出ている。日本の産業構造そのものが問われている状況に変わりはない」(国内金融機関)との声が出ていた。

輸出の伸び悩みに比べ、エネルギーを中心に輸入が増加していることについて三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「中長期的に見れば、こうした状況が続くのは国全体の富という観点からみると非常にマイナス。天然ガスや原油の輸入代金によって自己資本が毀損(きそん)されており、言い換えれば、日本の輸出産業が獲得したマネーが中東に落ちているという構図が浮き彫りになったと言える」と指摘している。

一方、三井住友アセットマネジメント・チーフエコノミスト、宅森昭吉氏は、13カ月連続で輸出は伸びているうえ「機械受注でみると外需が足元で拡大しており、今後の輸出増加が期待できる。輸入額が大き過ぎるために、赤字はなかなか解消できないとみられるが、幅は徐々に小さくなりそうだ」と見込んでいる。

貿易赤字全体についても、「米国を中心に先進国の景気が回復していくという前提に立てば、今後、日本の貿易赤字がどんどん膨らむということにはならないだろう」(SMBC日興証券のシニアマーケットエコノミスト、嶋津洋樹氏)との見方もあった。

(吉川裕子 編集:田中志保 田巻一彦)

[東京 21日 ロイター]

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