アメリカのオバマ大統領を国賓として招いて4月24日に日米首脳会談が開かれる。最大の懸案事項は環太平洋連携協定(TPP)だ。日米は首脳会談で、牛・豚肉や乳製品など重要5項目の扱いについて、大筋合意を目指しているが、4月20日時点では双方の溝は大きく合意のめどは立っていない。TPP交渉をめぐる内外の報道をまとめた。
■TPPとは何か?
TPPは太平洋を取り巻く国々の間で経済の一体化を進めるために、農産物や工業品などの関税を撤廃することなどを目指している。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が参加して2006年に発効。その後、オーストラリア・ペルー・ベトナム・米国・マレーシア・メキシコ・カナダ・日本を加えた12か国が交渉中だ。
TPPの参加の是非をめぐって、日本国内の世論は二分されている。コトバンクでは以下のように解説している。
TPPは、自由化レベルが高い包括的な協定だ。モノやサービスの貿易自由化だけでなく、政府調達、貿易円滑化、競争政策などの幅広い分野を対象としており、物品の関税は例外なく10年以内にほぼ100%撤廃するのが原則。
(中略)
参加しなければ自動車や機械などの日本の主要産業が自由化でリードする韓国と比べて海外市場で不利になるなどの試算もあり、経済団体を中心に参加を支持する声が大きい。一方で、関税撤廃による国内農林水産業への影響などを懸念して、農協や漁協などの生産者団体を中心に、参加に反対する意見もある。
(TPP とは - コトバンク)
■重要5項目とは
日本政府は国内の農業を守るために米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、「砂糖やその原料」を重要5項目に掲げ、関税撤廃の対象から外すよう求めている。コトバンクの解説では、重要5項目について次のように書いている。
重要5項目の農産品を、輸入段階の関税品目で数えると586品目。これらの関税をすべて維持すると、貿易自由化率は93.5%になる。日本はこれを上限にしたい考えだが、他の交渉参加国との主張の隔たりは大きく、この線を守れるか予断を許さない。
(TPP交渉と重要5項目 とは - コトバンク)
■牛肉関税10%をめぐって綱引き
47NEWSは、日本が牛肉の関税を現在の38.5%から10%台半ばに引き下げる譲歩案を検討していることが20日に分かったと報道している。アメリカ側は10%以下への引き下げを求めており、日本の譲歩案でまとまるかは予断を許さない状況となっている。
環太平洋連携協定(TPP)交渉の日米協議で、日本が牛肉の関税を現在の38・5%から10%台半ばに引き下げる譲歩案を検討していることが20日分かった。米国は10%を割り込む水準への引き下げを求めており、双方の主張の溝はなお大きい。日米両政府は21日から東京で事務レベル協議を再開、24日の首脳会談に向け詰めの交渉を急ぐ。
(47NEWS「日本、牛肉関税10%台半ば検討 TPP、首脳会談へ詰め」2014/04/20 17:33)
MSN産経ニュースはアメリカ側が強硬姿勢を示す背景に、オバマ政権が11月に中間選挙を控えていることがあると報じている。中間選挙は、大統領の任期4年の中間となる年に実施される上下両院議員の選挙。政権与党の民主党が勝つために、業界団体の意向に配慮せざるを得ないのだという。
米国の強硬姿勢の背景には、11月に中間選挙を控えるオバマ政権が日本の大幅な市場開放を求める米業界団体の意向に配慮せざるを得なくなっている事情がある。日本の政府高官は米国のこうした姿勢が「中間選挙が近づくにつれ強まる」とし、日米交渉の決着はより難しくなるとみる。
(MSN産経ニュース『TPP閣僚会談終了 最大の危機 日米袋小路 牛肉関税 米「数%に」譲歩 日本拒否』 2014/04/10 22:58)
日米の溝が埋まらない中でタイムリミットは刻々と迫っている。ロイターはアメリカの政府高官が「日米首脳会談ではTPPをめぐる合意発表はない」との見通しを4月18日に示したと報じている。オバマ大統領と安倍首相は貿易交渉のこれまでの成果を評価する一方で、焦点となっている重要5項目の詳細には踏み込まない見込みだという。
■アメリカでは「米韓FTAの二の舞になる」との警告も
このように日本では大きく報じられているTPPだが、アメリカ国内での報道は少ない。ロイター通信か共同通信の英語配信を報じる程度だ。
ただ、ハフィントンポスト・アメリカ版では、3月15日に発効から2周年を迎えた米韓自由貿易協定(FTA)を振り返るコラムのいくつかが、TPPについて触れている。アメリカのNGO団体「パブリック・シチズン」のロリ・ワラック氏は、米韓FTAでアメリカの韓国への輸出が11%も減ったことを例に出して、以下のようにオバマ大統領を批判している。
韓国の自由貿易協定(FTA)のテキストは、文字通りの大部分の米国の環太平洋パートナーシップ(TPP)のモデルケースと使用された 。オバマ大統領は韓米FTAの衝撃的な結果を真剣に受け止めるどころか、4月のアジア外遊中に議論を呼んでいる12カ国のTPPを決着させたいと思っている。
(ロリ・ワラック「TPPのモデルケースとして使われる貿易協定は米国の輸出をひどく少なくさせた」 2014 03/17/2:59 )
アメリカ国内では、韓米FTAのメリットがアメリカを享受できてないことから、オバマ政権がTPPに前のめりになることを警鐘を鳴らす声も大きくなってきているという。
日本とアメリカの思惑が絡み合うTPP交渉が、首脳会談で一気に前進するかどうか注目される。
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