商船三井の船を中国の裁判所が差し押さえ 戦後補償の貸借めぐる訴訟

中国の上海海事法院(裁判所)は4月19日夜、日本の商船三井の船を浙江省の港で差し押さえたと発表した。上海の船会社の親族が、1930年代に日本の船会社に船を貸した際の賃貸料が未払いだとして、賠償を求めていた裁判で、商船三井の敗訴が確定したにも関わらず、賠償金を支払っていなかったためとしている。
Mitsui O.S.K. Lines, Ltd.

中国の上海海事法院(裁判所)は4月19日夜、日本の商船三井の船を浙江省の港で差し押さえたと発表した。上海の船会社の親族が、1930年代に日本の船会社に船を貸した際の賃貸料が未払いだとして賠償を求めていた裁判で、商船三井の敗訴が確定したにも関わらず、賠償金を支払っていなかったためとしている。日本企業の資産が中国側に差し押さえられるのは極めて異例だという。朝日新聞デジタルなどが報じた。

同法院は19日、上海沖合の浙江省嵊泗列島に停泊していた商船三井の鉄鉱石運搬船「BAOSTEEL EMOTION」を差し押さえた。商船三井が損害賠償の支払いに応じなければ、「法に従い船舶を処理する」として競売などの措置に出る可能性を示した。

中国側の報道などによると、中国の船会社「中威輪船公司」は36年、日本の「大同海運」に船2隻を1年間賃貸する契約を締結。2隻は日本で軍に徴用され、賃料が支払われないまま契約終了後も使われ、44年までに沈没したという。

(朝日新聞デジタル「上海の裁判所、商船三井の船舶を差し押さえ」より 201404/20 20:50)

1988年に船会社創業者の親族が、約330億円の損害賠償を求めて提訴。大同海運を前身とする商船三井側は、「賠償責任はない」と主張したが敗訴した。

88年に「中威」の創業者親族が20億元(現在のレートで約330億円)の損害賠償を求めて提訴した。

大同の流れをくむ商船三井側は、「船舶は旧日本軍に徴用されており、賠償責任はない」と主張したが、海事法院は大同が船舶を不法占有したと認定、2007年に約29億2千万円の賠償を商船三井に対して命じていた。10年に上訴審で1審支持の判決が出て確定したものの、商船三井側は賠償を拒否していた。

(MSN産経ニュース「中国が商船三井の船舶差し押さえ、戦前の貸借めぐる訴訟で対日揺さぶりか」より 2014/04/21 10:00)

菅義偉官房長官は21日の記者会見で、「極めて遺憾だ。中国側の一連の対応は、1972年の日中共同声明に示された日中国交正常化の精神を根底から揺るがしかねないものだ」として強い不快感を示したという。

日本政府は1972年の日中共同声明で、戦時中の日本の行為に対する中国の賠償請求権は「放棄された」とする立場をとっている。中国政府は「個人の請求権は放棄していない」と主張する一方で、これまでは強制連行訴訟などは裁判所が訴訟を受理しない姿勢を維持していたという。

中国では、戦時中に日本に強制連行されたとする中国人の元労働者や遺族が日本企業を相手に損害賠償を求める訴訟が相次いでいる。今回の差し押さえにより、今後中国での戦後賠償に関連する裁判で原告側が勝訴した場合、日本企業の中国国内にある資産が差し押さえられるおそれもある。

■中国は強制連行訴訟で方針転換

中国の裁判所は3月18日、日中戦争時に中国から日本に強制連行されたとする中国人元労働者らの損害賠償を求める訴えを初めて受理した。こうした、方針転換の背景には、日中関係の悪化や、安倍晋三政権の歴史認識問題に対する反発があると見られている。

中国側の方針転換の背景には、日中関係の悪化や、安倍晋三政権の歴史認識問題に対する反発があるとの見方が強い。中国の司法関係者は「現在の日中関係で受理しないとの判断はあり得ない。党指導部はいま、歴史問題で日本に融和的と思われる姿勢を国民に見せることは絶対に出来ない」と解説する。

(朝日新聞デジタル「中国、戦後補償問題で方針転換 強制連行の提訴受理」 より 2014/03/18 22:40)

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