ヨーロッパを中心に16年に渡り開催されてきた女性のグローバル・リーダー会議「第4回WINジャパン・コンファレンス—更なる可能性の追求—」が4月18〜19日、東京で開催されている。18日には、WINファウンダー兼CEOのクリスティン・エングビッグ氏のほか、小池百合子衆院議員やカルビーの松本晃会長兼CEOや、各国のリーダーが登壇し、女性の働きかたやダイバーシティ(多様性)に関する全体会議やワークショップが行われた。
少子高齢化が進む日本で、男女ともに働きながら可能性を追求していくには、どうすればいいか。18日のディスカッションの様子をレポートする。
エングビッグ氏(写真)はオープニングで「今、大きな変化が起きています。世界の経済界リーダーは、女性の活用の重要性を認識しています。日本のリーダーも同じ。海外の異なるやり方を学びながら、日本の良さ——高品質、美しさ、創造性を生かした可能性を広げましょう」などと挨拶した。
■女性の活用は、企業の業績に好影響
最初の全体会議には、エングビッグ氏に加えて、インド人ジャーナリストのアニータ・プラタップ氏や、マッキンゼーアンドカンパニー日本支社長のジョルジュ・デヴォー氏、横浜国立大学教授の二神枝保氏らが登壇した。
フランス人のジョルジュ・デヴォー氏は、企業・組織において女性がいかに貢献し、意思決定を改善できるかについて、マッキンゼーの調査結果を発表した。
世界の企業で調査した結果「女性のプレゼンス(存在感)が高い企業のほうが業績がいい」ことがわかったと説明(画像集1枚目)。女性を幹部に登用していない企業と明らかな相関があったという。
また、労働環境やリーダーシップ、アカウンタビリティ(説明責任)など、組織の健全性を測る尺度を設け、企業の業績を分析した場合(画像集2枚目)も、女性を登用している企業のほうが、そうでない企業よりも全てにおいて良い結果が得られた。事業内容や国の違いがあっても、同じ傾向が見られたという。
このような結果が出る理由として、デヴォー氏(写真)は「男女のリーダーシップのあり方の違い」を挙げた。個人で意思決定し、集団行動するのが得意な男性に対して、女性はロールモデルや集団で意思決定することを重視する。両者によって、さまざまな視点が加わることで、経営判断の健全性が高まるという。
企業が実践するためには、経営者や役員のコミットメント(約束)や目標設定、一人ひとりの育成などが重要だとして「多くの組織は、育成カリキュラムは男性向けに作られているが、現実に即して女性に対応したカリキュラムにする必要がある」などと具体例を挙げた。
■日本で女性が会社を辞めるのは、初めて管理職に登用されたとき
また、デヴォー氏は「日本の女性は、初めて管理職に登用されるときに辞めている」という調査結果を発表した。日本では、家庭と仕事の両立が難しいという考えが根強く、家庭を重視するという傾向があることが原因だという。これまで働く女性は出産をきっかけ会社を辞めると考えられていたが、管理職登用も重要なファクターのひとつだったようだ。
世界経済フォーラムの調査によれば、日本における「雇用の男女格差」は、2013年は136カ国中105位。安倍首相は、1月に行われた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で「女性の活用」についてコミットしたが、日本には大きな変化が必要だとデヴォーは語る。「日本は(まだ女性の活用が進んでいない)難しい国だが、その分、潜在性も高い」と語った。
■小池百合子氏「女性の発想を生かすことができる」
次に、小池百合子衆議院議員(写真)がスピーチを行った。2005年、環境大臣在任時に導入したクールビズを例に挙げて「女性の発想を生かすことができる」などと多様性の意義を語った。男女の雇用格差の是正については、安倍首相の「女性の活用」公約が突破口になるとして、先の衆院選前に自民党に提案したという「7つの提案」を紹介した。
1)"2020年30%”(にぃまる・さんまる)の目標達成
2)「ダイバーシティ促進購入法」の制定
3)「残業ゼロ」社会を作る(ワーク・ライフ・バランス)
4)女性候補者・女性議員増加促進のための法律改正
5)女性医師職場復帰プラン支援
6)指導的地位にある女性が極めて少ない日本のアカデミアの改善
7)「参勤交代」のため「道州制」を強力に進める
■政府だけでなく企業の経営層による理解も重要
7つの提案の1つ目「2020年までに女性管理職30%」は、政府の公約となった。しかし、これによって企業側も女性を役員に任命したとしても「(いわれたからやるのなく)経営層が明確なポリシーを持って進めなければ、失敗するかもしれない」として、経営層のコミットメントも重要だと述べた。
「女性を活用することで競争力が高まる。(配偶者特別控除が適用される)130万円の壁を取り除き、経営者や社会が考えかたを変えていけば、女性は今後も目覚ましい活躍をしていくだろう」などと展望を語った。
■カルビー松本会長「日本で最初の2030企業になりたい」
次に行われたディスカッションには、カルビーの松本晃代表取締役会長兼CEOや、フィアット クライスラー・マーケティング本部長のティツアナ・アランプレセ氏、ジェットスター・ジャパン代表取締役社長の鈴木みゆき氏が登壇した。
3月、「なでしこ銘柄」に選定されたカルビーの松本会長(写真)は、「日本で最初の2030企業なりたい」と抱負を語った。「ジョンソン&ジョンソン時代から、ダイバーシティ推進はライフワーク。やめられない、とまらない」と述べ、会場の笑いを誘った。
カルビーは現在、トルコ人の女性や中国人の男性の役員と4名の女性エグゼクティブを抱えている。ダイバーシティを推進するために、以下のような明確な数値の比率目標を掲げているという。
■女性を登用するリスクをとらなければ、成長しない
松本会長は「ダイバーシティーの推進には、1)理解、2)納得、3)行動 の3ステップがあり、成功するには、経営陣によるコミットメントと、具体的な目標設定が必要」などと語った。カルビーでは、いつまでにどれだけの目標を達成するか、部長クラスが理解しているという。
松本会長は、日本で女性の登用が進まない理由のひとつに「業績が悪化した際に批判される可能性がある」と指摘した。しかし「私はリスクを受け入れている。そうでなければ、成長しない」とリスクをとることの必要性を説いた。
■時短勤務のワーキングマザーが執行役員として活躍
この後、カルビーのロールモデルとして、2013年4月に執行役員に就任した福山知子さんが登壇。8歳と10歳の母である福山さんの退社時間は、16時。時短勤務をしながら、中日本事業本部の本部長として活躍している。
福山さんは「松本会長には、週に48時間働けば、退社時間は16時でも15時でもいい。働いている時間が問題なのではない。きちんと結果を出せばいい」といわれたと発表した。福山さんは、限られた時間で生産性を高めた結果、初年度から目標を大きく達成。カルビーでは、4月1日に女性の工場長も誕生したという。
労働時間に関わらず生産性を評価することで、女性も管理職として活躍できる。今後も日本全体で、女性の働きやすい環境の整備やダイバーシティを推進していくことが望まれる。それには、経営者のコミットメントや男性の理解が必要である。ディスカッションのなかで、インド人ジャーナリストのプラタップ氏は「今日の男性参加者は6人。男性にわかってもらうためにも、参加者の5割が男性になればいい」と語った。
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