4月16日、小保方晴子さんとSTAP細胞の論文の主要執筆者である、理化学研究所の笹井芳樹副センター長が都内で会見する。理研が認定した論文の不正や、STAP細胞の存在などについて、どのような発言をするのか、注目されている。
小保方さんの上司にあたり、疑惑が生じた当初から「STAP細胞のキーマン」とされていた笹井氏はどんな人物なのか。まずは簡単に経歴を追ってみよう。
1962年生まれ、京都大学医学部を卒業し、神戸市立中央市民病院での研修を経て、京都大学大学院医学研究科生理系入学。1993年、博士号(医学)取得。カリフォルニア大学(UCLA)医学部客員研究員、京都大学医学部助教授を経て1998年、京都大学再生医科学研究所教授に。2000年から現職である理化学研究所発生・再生科学総合研究センター グループディレクターを務めている。36歳で京大教授になった点から見ても、順風満帆な研究者人生を送っていたと言っても過言でないだろう。
笹井氏はES細胞の権威で、2011年にマウスのES細胞から人工網膜組織を作ったと発表。万能細胞であるES細胞から望む組織を作り出す過程の研究に大きな貢献をもたらした。
万能細胞であるiPS細胞とES細胞、STAP細胞の違いは作り方にある。このなかで最も歴史があるのがES細胞で、生体の受精卵から作る。一方、iPS細胞は通常の体細胞を取り出し遺伝子操作をして作成する。今回、問題になっているSTAP細胞は、体細胞を弱酸性の溶液に浸して培養するだけで万能細胞ができるとされていた。
笹井氏はSTAP細胞の論文執筆に主要な役割を果たしており、笹井氏自身は不正を行ってはいないが、確認を怠ったとして、責任は重大、と理研の最終報告書でも認定された。
9日の小保方さんの会見後、笹井氏は「STAP細胞は本物の現象」と取材に答えた上で、以下のように語った。
9日の小保方氏の会見については「ご本人の率直なお考えやお気持ちが述べられたと思うが、こうした会見を彼女がする事態になった責任は、私の指導不足にあるとも思い、大変心を痛めた」とした。
(MSN産経ニュース『「もう1人のキーマン」理研の笹井氏、来週会見し謝罪 STAP問題』より 2014/04/10 18:09)
2013年のインタビューで笹井氏は、今後の展望について以下のように答えている。
今後の10年では、体の中の細胞の社会を再構成することを可能にしていくための研究が進むと思います。そこには、体の組織の形や大きさなどを制御するための研究や、なぜその形や大きさになるのかを理解するための研究もあります。私自身も、細胞が相互作用しあって組織をつくっていく、その創発の原理を理解していきたいと考えています。
(iPSTrend「笹井 芳樹 氏 インタビュー『この人に聞く』(2) : Trendウォッチ」より 2013/01/29)
ハフポスト・ブロガーでサイエンスライターの鹿野司さんは、今回の問題の背景について、笹井氏のこれまでの功績について触れつつ、以下のように予測している。
笹井さんは、世界で初めてマウスのES細胞から立体的な網膜全体を作った人で、押しも押されもせぬ世界トップクラスの研究者だ。
近く、iPS細胞を使った網膜再生の臨床研究が、高橋政代プロジェクトリーダーのもとにはじまる。iPSでこの臨床研究ができるのも、笹井さんのES細胞による研究の基盤があったからこそだ。
つまり、笹井さんは、今さら、自分の功を焦る必要なんてない人なのね。
しかし、それでもある種、焦らざるを得ない状況ができてしまっていたのではないかとも思う。
そのきっかけは、iPS細胞の登場だ。
山中伸弥さんがノーベル賞を受賞して、iPS細胞が華々しく注目されたことで、日本のES細胞研究には北風が吹き付けた。
これは、しかし、山中さんがそうなるように意図したことでは決してない。
ノーベル賞を受賞したとき、山中さんはES細胞の研究も非常に大切で、これからは両者が協力してやっていかなければならないということをいっていた。
しかし、政府は結局、政策的に、予算をiPSに集中投下して、ES細胞研究は削るということをやってしまっている。
(「科学が好きということとSTAP騒動(その4)」より 2014/03/31)
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