ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は11日、米国に対し国際通貨基金(IMF)改革案を年末までに批准するよう求め、批准できなかった場合は米国抜きでIMF改革を進めるとする共同声明を採択して閉幕した。
今回のG20会議では、新興国の発言力向上につながるIMF改革が最大の懸案。声明には、G20は「IMFのクオータ(出資割当額)およびガバナンスの改革の進展が依然として遅れていることに深く失望している」と明記された。
このほか、声明は、ウクライナの経済状況を注視するとともに、経済・金融の安定に対するあらゆるリスクに留意するとした。
<IMF改革>
2010年に合意したIMFのクオータおよびガバナンスの改革が実行に移されれば、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5か国(BRICS)などに代表される新興国の発言力が増し、IMFのリソースは倍増する。
声明は、改革の遅れに「深く失望している」とし、IMF改革が年末までに批准されなければ、「これまでの作業を土台にして次なる措置の選択肢を策定するようIMFに呼びかけ、これらの選択肢に関する討議を行う日程の設定について(IMF国際通貨金融委員会と)協力する」とした。
関係筋によると、ブラジルがG20はIMF改革の遅延により強い姿勢で対処する必要があると主張していた。
今年のG20議長国を務めるオーストラリアのホッキー財務相は記者団に対し、「この機会を利用して、米国に対し喫緊の課題として迅速に改革問題に取り組むよう呼びかけたい」と述べた。
米国では今年11月に中間選挙が行われるため、年末を期限としたことで米議会が批准しやすくなる可能性があるとの見方も出ている。
G20では、もし米国が年内に批准できなければIMFに次のステップを講じるよう要請する方針が示された。
ある関係者によると、ブラジルはより強硬な姿勢を示しており、米国が行動しない場合の選択肢についてすぐに準備を始めるべきと主張した。
マンテガ財務相は、米議会による改革案の批准について「年末が最終期限と考える。4年間も待ち続けており、これ以上は無理だ」と述べている。
<ウクライナ情勢>
G20は声明でウクライナ危機に関連して、経済的な課題に直面している国に対し「政策上の助言とカタリティック(触媒的な)資金提供を通して」支援するにはIMFと世界銀行が引き続き最も適切な機関となっていると表明。
声明は「ウクライナの経済状況を注視するとともに、経済・金融の安定性に対するあらゆるリスクを留意する。当局が意義ある改革に取り組むなか、ウクライナをめぐるIMFの最近の関与を歓迎する」とし、「金融危機にまず初めに対応する機関としてのIMFの役割の重要性が、ウクライナ情勢により浮き彫りにされている」とした。
ロシアもG20に参加しているが、声明では同国に関する言及はなかった。また関係筋によると、対ロシア制裁は議題に上らなかった。
オーストラリアのホッキー財務相は、ウクライナ情勢をめぐり国際的な緊張が高まっているものの、G20会議の場では緊迫したやりとりはなかったとし、「世界的な地政学リスクに関する全般的な話し合いが行われた。ウクライナに特化した議論はなかった」と述べた。
前日には日米欧7カ国(G7)の財務相が会談。ドイツのショイブレ財務相はこの日、G7財務相はウクライナ危機の打開に向けて連携し、ロシアも取り組みに加わる必要があるとの認識で一致したことを明らかにした。
同財務相は記者団に対し、「この問題を一丸となって解決しなくてはならないことで意見が一致した」とし、ロシアも解決に向けた取り組みに参加する必要があるとの考えを示した。
オーストラリアのホッキー財務相は、ロシアは11月に開催されるG20首脳会議には参加するとの見方を示している。
<情報伝達の確約>
声明はまた、政策が「再調整」されるなか、世界経済への影響を注視しながら「明確で時宜にかなった」情報伝達を確約すると表明。
米連邦準備理事会(FRB)など主要国中央銀行の政策が及ぼす世界的な影響について言及したと見られるが、金融政策との明記はなかった。
また、2月の会議の声明には各国中銀は景気刺激策を引き揚げる際には慎重に行う必要があるとの文言が盛り込まれたが、今回の声明にはこうした言及はなかった。