写真家レイチェル・サスマン氏は10年ほど前から、「最も高齢な」世界の植物たちの姿を写真に収めるべく各地を旅している。

写真家レイチェル・サスマン氏は10年ほど前から、「最も高齢な」世界の植物たちの姿を写真に収めるべく各地を旅している。

撮り集めた写真がこの春、1冊にまとめられ出版された。タイトルは「The Oldest Living Things in the World(最も長く生きている世界の生き物たち)」。長寿を誇る生命体たちの写真は、人がほとんど足を踏み入れない場所に生きづく彼らの歴史を見事に物語っている。

1.チリ、アタカマ砂漠の「ヤレータ」(2000歳以上)

「コケに覆われた岩のように見えるが、実際は、密にぎゅっと詰まった小さな植物で、セリの仲間だ。アタカマ砂漠の高地に自生している。(標高3200メートル4500メートルに自生しており、3000歳を超える個体も多い)」

2.南アフリカ共和国クルーガー国立公園にあるバオバブ(樹齢およそ2000年)

「このバオバブは、南アフリカ共和国のクルーガー国立公園禁猟区にあり、武装した護衛と一緒でないとたどり着けない。バオバブは、成長に伴って幹の中心に空洞ができる。そうしてできた穴はそのまま動物のすみかとなるが、人間にとってもなかなか使い勝手が良く、トイレや牢屋のほか、バーとしても利用されている」

3.スウェーデンのフルーフィエーレット国立公園にあるオウシュウトウヒ(根の部分の推定9550歳、写真は冒頭に掲載)

「根の部分の推定年齢が9550歳とされるこの"Old Tjikko"は、気候変動を身をもって表している。根元の周囲では、およそ9500年にわたって同じような成長をみせていたが、中央のひょろっと細長い幹はここ50年ほどで成長した(全体がわかる写真はこちら)。スウェーデン西部に位置するこの高原山頂の気温が上昇したためだ」

4.カリフォルニア州モハーヴェ砂漠にあるモハーヴェ・ユッカ(樹齢1万2000年)

「樹齢およそ1万2000年のメキシコハマビシおよびモハーヴェ・ユッカはいずれも、まんなかの中心幹から外側に向かってゆっくりと成長し、見事な放射状を描いている。新しい幹が古い幹に取って代わるが、根元は同じクローン群落(一定の場所に生成し同一の遺伝子を持つ植物の個体群)の地下茎ですべてつながっている」

5.西オーストラリア州シャーク湾カーブラ・ステーションのストロマトライト(2000歳から3000歳)

ストロマトライトは、シアノバクテリア類の死骸と泥粒などによって作られた、層状の構造をもつ岩石で、生物でもあり地質でもある。化石となったストロマトライトは、世界各地で発見されるが、現生のものはシャーク湾など、ごくわずかな水域のみで発見される。先カンブリア時代には世界各地に存在し、地球に大量の酸素を提供したとされる。最古のものなかで確実とされる化石は27億年前のもの。

6.タスマニア、マウント・リードのヒューオン・パイン(推定樹齢1万500年)

「マウント・リードに自生するヒューオン・パインのクローン群落は、山火事でその多くが破壊されてしまったが、生き残った部分も少なくない。群落の年代については、近くの湖底で発見され、現存する群落と遺伝的に一致する古代の花粉を、放射性炭素年代測定にかけて特定された」

7.南極、エレファント島のコケ(5500歳)

「この苔むした岩は、今から100年前の1914年、英国の探検家アーネスト・シャクルトン率いる帝国南極横断探検隊の船が氷塊に阻まれて身動きが取れなくなり、エレファント島に上陸した場所のすぐ近くにある。私たちがこの場所にたどり着けたのはまさに幸運としか言いようがない」

8.ナミビア、ナミブ=ナウクルフト国立公園のウェルウィッチア(2000歳)

「ウェルウィッチアは原始的な裸子植物で、海の水蒸気が砂漠にぶつかるナミビアとアンゴラの海岸沿いにのみ自生する。見た目に反して葉は2枚しかなく、決して落ちない。ナミビアの国花でもある」

ウェルウィッチアの和名はサバクオモト(砂漠万年青)やキソウテンガイ(奇想天外)。短い茎から、生涯2枚だけの葉を伸ばし続ける。この葉は裂けやすく、一見何枚もあるように見える。葉先は葉脈に沿って裂け、次第に枯れていくが、葉の基部に分裂組織があり、伸び続ける。長さ3~10メートルにも達する根によって地下水を吸い上げている。

9.オーストラリア、ニューサウスウェールズ州にあるユーカリの一種(樹齢1万3000年)

「このユーカリは絶滅危惧種であり、樹齢はおよそ1万3000年。残っているのは5本に満たない。自生する場所を特定されないよう、正確な名前は伏せてある」

10.カリフォルニア州、ホワイト・マウンテンズのブリッスルコーン・パイン(推定樹齢5000年)

「ブリッスルコーン・パインは、単体有機体としては世界最高齢の樹木であり、樹齢は5000年を上回っているとされる。1960年に最高齢だとされていた木は、当時のある大学院生が、紛失したコアリング調査用のサンプルを再度採集しようとして切り倒してしまった。その木の標本はネバダ州のカジノに飾られている」

11.スペイン、バレアレス諸島の海洋性植物「ポシドニア・オセアニア・シーグラス」(10万歳)

「この海洋性植物は、10万年も前から生い茂っている。この植物が最初に根を張ったのは、人類最古の祖先に数えられる南アフリカの古代人が、世界で初めて象徴表現を生み出したとされる時代だ。地中海に浮かぶイビサ島フォルメンテラ島の間にある自生海域は、ユネスコの世界遺産に指定され保護されている」

[Katherine Brooks(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]

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