外国人労働者の実質的な受け入れ拡大に向け、自民党日本経済再生本部の労働力強化・生産性向上グループが3月26日に提言をまとめた。外国人の技術習得を名目に、事実上の労働力として受け入れている「技能実習生」を、一時帰国を条件に上限3年から5年に延長するほか、1企業が受け入れられる人数を増やすことや、受け入れ可能な職種の拡大などが柱となる。
2020年東京オリンピックに向けて建設現場の労働力不足が予想されることから、建設分野で実習を終えた外国人に、別枠で在留資格を与え、建設労働に従事することを認めることも検討を求めている。
〈技能実習制度〉 外国人を最長3年間、労働者として受け入れる制度。1993年につくられ、いまは中国やベトナムなどから約15万人いる。学んだ技術や知識を母国に役立ててもらう狙い。3年働けるのは縫製や機械加工、建設、農業など68職種。実習生は制度の再利用はできない。低賃金の単純労働者として違法に扱われる例が相次ぎ、2010年には出入国管理法が改正され、実習生の保護対策を強めた。
(朝日新聞デジタル「外国人労働者の拡大提言 自民、技能実習を延長し5年に」より 2014/03/27 10:01)
技能実習生の期間延長は、人手不足に悩む中小企業から要望があがっていた。朝日新聞デジタルは、岩手県久慈市の縫製工場社長の声を伝えている。
10年ほど前までは地元高校から新卒をとった。だが、すぐに辞めてしまう。そこで専用寮をつくり、2006年から実習生を受け入れた。最長3年の期間中、最低賃金(岩手県は時給665円)に近い給与で働いてくれる。桑田社長は「実習生が3年以上、働けるように制度を見直してほしい」。
(朝日新聞デジタル「(東日本大震災3年)被災地、仕事は外国人頼み 人手不足、実習生がカバー」より 2014/03/07 05:00)
一方で技能実習制度自体の問題も指摘されて久しい。日本弁護士連合会は、受け入れ先で賃金不払いや最低賃金以下での労働、労災などの問題が横行しているとして、外国人技能実習制度を速やかに廃止し、新たな在留資格の創設を提言している。
専門職でない非熟練外国人労働者の受け入れ拡大は、安倍政権が新たな成長戦略の一環と位置づけてきた。2020年の東京オリンピックを見据え、2014年始めから動き始めてきた。1月24日に関係閣僚会議を開き、2015年春からの実施を目指すことを申し合わせた。
一方で、建設業労働者は、非熟練外国人労働者の増加で雇用に影響を受けることを懸念し「日本の若者が建設業に就職するような対策を取」るよう政府に求める。
建設業で働く全国の労働者で作る組合、全建総連=全国建設労働組合総連合は26日、東京・千代田区で労働者の待遇の改善を求める集会を開き、およそ700人が参加しました。
(中略)
政府が6年後の東京オリンピックの開催などに伴う建設業の人手不足を補うため、時限的な措置として、外国人労働者の受け入れ拡大の方針を示していることについて、「人手不足は、外国人に一時的に頼るのではなく、若い人が建設業に就職するような対策を取ることが大切だ」と訴えました。そのうえで、人手不足から労務単価が上昇していることを歓迎したうえで、現場の第一線で働く建設労働者や職人の賃金引き上げは、一部にとどまっているとして、下請けを含むすべての労働者の賃金引き上げや労働環境の改善を求める決議をしました。
(NHKニュース「建設現場 外国人受け入れ拡大に懸念の声」より 2014/03/26 19:48)
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