この試算を発表したのは、持続可能な建物の設計を行なう建築事務所「Terreform Research Group(テレフォーム・リサーチ・グループ)」だ。アメリカの食卓には世界中の食材が並ぶが、その食料を輸送するために消費されるエネルギーは気候変動に多大な影響をもたらしている。
北米で生産される食料だけをとってみても、生産地から消費地まで、平均しておよそ1900キロメートルもの距離を移動している。この「フード・マイレージ」問題こそ、同建築事務所の研究チームが、アメリカの大都市が食料とエネルギーの自給自足を実現するには、町がどんな風に変貌するべきかを構想してみようとしたきっかけだ。
同チームは、「New York (Steady) State(“安定した”ニューヨーク)」プロジェクトを開始した。完全自給自足を達成したニューヨークの姿を思い描く、いわば「思考実験」だ。このシナリオでは、ニューヨーク市に立ち並ぶ高層ビルがすべて、食料を生産する建物へと改造され、市民たちの食料需要をまかなう。
同チームは、ニューヨーク市の人口が850万人で、1人あたりの必要摂取量を1日2500キロカロリーとした場合に、公害を最低限に抑えた「完全循環型」システムを用いて、ニューヨーク市の行政区5区(マンハッタン、ブロンクス、ブルックリン、クイーンズ、スタテン・アイランド)内で必要とされる食料をすべて自給するビジョンを構想した。以下で紹介していこう。
マンハッタン内にあるほぼすべてのビルの屋上が緑化される。
各ブロックに緑地帯があり、周囲には、垂直農法(高層建築物の階層、及び高層の傾斜面を使用して、垂直的に農作業や動物の育成を行う方法)用の建物が立ち並ぶ。
垂直農法ビル、別名「フード・タワー」には、屋外テラスが設置され、家畜が放牧されている。
フード・タワーは、従来からある線路の真上にも建築される。食料が輸送用の改造列車に直接積みこまれ、住民のもとに届けやすくするためだ。
マンハッタンを東西に貫くフルトン・ストリートには、改造を施された高速バスが止まるバスターミナルが設置されている。車やタクシーの利用を必要最小限に抑えるためだ。
多くの道路がコミュニティー・ガーデンへと変わる。以下の画像は、アッパー・マンハッタンにあるアムステルダム・アベニューの予想図。
ハーレムの147丁目ストリートは、食料生産および流通の拠点という新たな顔を持つ。
ブルックリンには水耕栽培指導センターが開設され、土を一切使わず、水だけを用いた持続可能な植物栽培方法の指導が行われる。
[Kevin Short(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]
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