“忍耐の限界” 米高官、日韓の和解を強く求める 中国・北朝鮮の脅威が背景
米国政府の東アジア外交のトップが、上院の公聴会で4日、日本と韓国に対し、早急に緊張関係の緩和を求めた。背景には、日本の「河野談話」作成過程検証の動きや、韓国の中国での「安重根記念館」開設など、両国の対立要素がさらに増していることがあるとみられる。
【日韓両国は「早急に」和解を】
「歴史認識の問題は非常に難しい。だからこそ、両国は和解を目指して早急に冷静さと自制心を取り戻してほしい」
上院の東アジア太平洋小委員会の公聴会でこう述べたのは、ラッセル国務次官補(東アジア・太平洋担当)だ。アメリカ政府の東アジア外交のトップで、その発言はオバマ政権の外交政策に大きな影響を与えるとみられる。
ロイターによると、ラッセル次官補はまた、拡大路線をあらわにする中国や北朝鮮の脅威にさらされている北東アジアにおいて、「アメリカ、日本、韓国の戦略的協力は安全保障上不可欠だ」と述べた。
そのうえで、日韓の間に横たわる「歴史の重み」によって、「将来の地域の安全が妨げられるようなことがあってはならない」と強調。アメリカの主要な同盟国である日韓の緊張を「早急に」緩和する努力をするのは、アメリカの外交的優先事項だと語った。
【「日韓関係はより悪化している」】
ロイターは、この発言の背景にある日韓の対立事項の一つに、いわゆる「河野談話」の作成過程を検証するという日本の動きを挙げる。「(ラッセル発言の)前日には、何百万人もの女性が強制連行されたというのは『完全な嘘だ』と、日本の国粋主義的な政治家たちが1993年の従軍慰安婦への謝罪を見直すよう求めた」と、日本維新の会の国会議員らが3日に開いた集会を指した。
韓国側は日本のこうした動きに対し、尹炳世(ユン・ビョンセ)外務大臣がジュネーブで開かれている国連人権理事会に現地時間5日に出席し、国際社会に対して従軍慰安婦問題の解決を訴えた。
ラッセル次官補とともに公聴会で証言した大手シンクタンクAEIのマイケル・オースリン氏は、「東京とソウルの関係は今、非常に悪い。対話もなく、より悪化していっているように見える」と述べた。そのうえで、「アメリカは、忍耐には限りがあることをもっとはっきりと日韓両国に伝えるべきだ」などと訴えた。
【中韓の接近も懸念】
公聴会に出席したベン・カーディン上院議員(外交委員会東アジア太平洋小委員会委員長)は、ロイターに対し、「私が心配していることの一つに、中国の動きがある。中国は韓国との関係をより密接にすることにより、日韓関係にくさびを打ち、日本にダメージを与えようとしている」と危機感を訴えた。
中国は、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の要請に応じ、今年1月、ハルビン駅構内に「安重根記念館」をオープンさせた。
安重根(アン・ジュングン)は、日本の初代韓国統監・伊藤博文元首相を中国のハルビン駅で暗殺した人物。韓国では「英雄」とされるが、日本にとっては「テロリスト」だ。報道によると、記念館の来場者の3分の1は韓国人だという。
カーディン上院議員らの指摘は、特に歴史問題において、近年中国と韓国が歩調を合わせて日本批判を繰り広げる情勢への懸念からのものだといえる。
関連記事