ウクライナで親ロシアのヤヌコビッチ政権が崩壊した。旧ソ連圏の盟主を自任するロシアにとっては大きな痛手だ。それに対して、欧米各国は新たな政権への移行を後押しする姿勢をとっている。一方、ウクライナでは、東西対立がさらに進む恐れも指摘されている。
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解任されたヤヌコビッチ大統領に代わって、大統領代行に就いたトゥルチノフ議会議長が2月23日演説し、ヨーロッパ連合(EU)加盟に意欲を示した。
トゥルチノフ議会議長が23日、国民向けに演説した。「欧州の家族のもとに戻る」として、将来の欧州連合(EU)加盟に力を入れる考えを表明した。
トゥルチノフ氏は一方で「ロシアとの関係の重要性を理解している」とも述べ、隣国ロシア・プーチン政権との対話も継続しながら徐々に欧州統合への道を歩む方針を示唆した。
(朝日新聞デジタル「ウクライナ、EU加盟へ意欲 大統領代行が演説」より 2014/02/24 13:51)
トゥルチノフ氏は、ヤヌコビッチ氏の政敵で2004年のオレンジ革命を主導したティモシェンコ元首相の側近。2月22日に釈放されたティモシェンコ氏は、5月25日に実施が決まった大統領選への立候補を表明している。
ウクライナをめぐり、ロシアのラブロフ外相とアメリカのケリー国務長官が2月23日、電話で会談した。ロシア側が野党勢力を強く批判したのに対して、アメリカ側はロシアの介入に強い警戒感を示しており、両国の立場の違いが一段と浮き彫りになっている。
アメリカ国務省によりますと、この中でケリー長官は、野党勢力が主導権を握るウクライナの議会が大統領代行らを任命したことに支持を表明したうえで、(中略)「ウクライナの主権と領土の一体性、それに民主的な選択の自由は、すべての国によって尊重されるべきだ」と述べ、ロシアは不要な介入をすべきではないとして強い警戒感を示しました。
ロシア外務省によりますと、これに対しラブロフ外相は「野党勢力は武器を放棄することに応じず、政権を事実上奪い取り、合意の実行を拒んでいる」と述べ、幅広い勢力が参加した形の連立内閣の樹立など、政権側と野党側の合意が実施されないおそれがあるとして強く非難しました。
(NHKニュース「米ロ外相電話会談 ウクライナ巡り隔たり」より 2014/02/24 10:17)
親ロシアのヤヌコビッチ政権が崩壊したことについてロシアは強く反発、経済的圧力をかける可能性もあるという。アメリカのウォールストリート・ジャーナル紙は、「大敗北を喫した」「西側がクーデターの企みに成功したというのが我々の結論だ」などとロシア政府のある高官の言葉を交えて次のように報じた。
親欧州の新政権は、ウクライナの主要な燃料供給国で貿易相手国であるロシアから大きな経済的圧力を受ける恐れが大きい。パイファー元ウクライナ米大使は、「ロシアには使える経済的なてこがたくさんある」と語る。
アナリストらは、ロシア政府はウクライナでの大幅後退を受けて、オレンジ革命後のようにロシア国内での反政府派への弾圧を強化する可能性があると警告する。
ロシア政府当局者によれば、政府内では西側諸国がロシアでも同じような革命を企てようとしているとの見方が大勢を占めているという。
(WSJ.com「ロシア、ウクライナのヤヌコビッチ政権の崩壊で痛手」より 2014/02/24 11:30)
ただし、ヤヌコビッチ氏の政権復帰は非現実的と見られている。ロシアは駐ウクライナ大使を一時モスクワに呼び戻し、情勢を分析するという。
EUとアメリカはウクライナに対する財政支援を表明した。一方ロシアは今回の政変で、ヤヌコビッチ政権のロシアへの接近の見返りに合意した150億ドルの融資のうち、残る120億ドルの実施を当面見送る考えだという。
さらにウクライナでは、親ロシアの東部と、親ヨーロッパの西部とが対立している問題がある。
ウクライナで反政権デモが拡大した背景には、経済をめぐる東西の温度差がある。ロシアに接し、親露派住民が多いウクライナ東部には、国内経済を牽引(けんいん)するドネツクなどの工業地帯が集中。一方、西部は東部に比べて立ち遅れているため、欧州連合(EU)との統合を求める声が強く、東西分裂の危険性もはらむ。欧米各国は国家分裂を回避させようと躍起になっている。
(MSN産経ニュース「【ウクライナ情勢】米露、駆け引き新局面 安保・経済をカードに」より 2014/02/24 07:48)
反政権派がこのまま一方的に事態を進める状況が続けば、ウクライナが分裂する可能性も現実味を帯びてくると指摘されている。
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