ロシア人男性の飲酒量と、10年間での死亡率の間には関連性があることが、医学誌「ランセット」に発表された新たな研究から明らかになった。
1週間のウォッカ消費量が1本(500ml)未満の男性は、3本以上の男性より、早死の危険性が小さいことがわかったのだ。
研究によれば、現在ロシアでは、55歳未満で死亡する割合は4人に1人の25%だという。英国はわずか7%だ。
また、ロシアにおける若者および中年の死亡率がアルコール消費量と関連性があることと、アルコール消費量はロシア政府による過去のアルコール規制と連動していることが指摘されている(15~54歳の男性死亡率は、ウォッカの生産・販売が規制された1985年から数年間下がったが、ソ連崩壊(1991年)の前後に急上昇。2000年代後半から再び下がっているとされる)。
今回の研究は、15万1000人分の健康データ分析をもとにしている。ロシア全体の死亡率と似かよった傾向を持つ3都市(バルナウル、ビイスク、トムスク)の住民を対象に、ウォッカを主とした飲酒習慣について面談を行ない、10年後に追跡調査を行なった。
データは、次の3グループに分類された。飲酒量の少ないグループ(お酒を一切飲まない人、病気を理由に飲酒をやめた人、ウォッカ消費量が週1本未満の男性と、週4分の1本未満の女性)、飲酒量が中程度のグループ(ウォッカ消費量が週1本以上3本未満の男性と、週4分の1本以上1本未満の女性)、飲酒量が大量のグループ(ウォッカ消費量が週3本以上の男性と、週1本以上の女性)だ。アルコールを大量に消費するグループの大半は、喫煙者でもあった。
その結果、35歳から54歳の喫煙者で、ウォッカ消費量が週3本以上の人々は、20年間での死亡率が35%も高かったことがわかった。
「あまり飲まないと答えた人がのちに大量のウォッカを飲むようになったり、その逆のケースもあったりするため、死亡率に違いがある点は見えたものの、アルコールの大量摂取による実際の危険性を大幅に低く見積もっている可能性が非常に高い」と述べるのは、この研究を行なった、世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関のポール・ブレナン医学博士だ。
アルコール中毒症のほか、暴力、自殺、事故、内臓疾患(がん、肝疾患、肺炎、膵炎など)が、アルコール大量摂取者の死亡率拡大を招いているようだ。
非喫煙者が大量に飲酒するケースは少ないが、(飲酒による)死亡率の拡大傾向は、非喫煙者にも当てはまると研究は指摘する。
これに関連して、トロント大学中毒および精神保健センターのヨルゲン・レーム教授はこうコメントしている。「ロシア人男性の平均寿命は64歳と低く、平均寿命が短い国々50カ国に入っている。アルコールおよびタバコに対する、より効果的な対策が急務だ」
この研究は、国際がん研究機関、ロシアがん研究センター、オックスフォード大学、ニューヨークのマウントサイナイ医科大学アイカーン医学部の研究チームによって実施された。
[Amanda L. Chan(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]
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