2月9日投開票の東京都知事選で、舛添要一(65)、細川護熙(76)、宇都宮健児(67)、田母神俊雄(65)の主要4候補が初めて同じ場に集まり、政策について語った。日本テレビの報道番組「news.every」の企画として、約50分間、各候補が政策を語る場面が放映された。
番組では4つの項目について、各候補が司会者の質問に答えるなどした。候補者同士が議論したり、話し合ったりすることはなかった。主なやりとりは以下の通り。
【子育て支援】舛添氏「多摩ニュータウン建て替えて保育所建設」
――待機児童の問題をどうお考えか
田母神:東京は8100人ほど待機児童がいるそうだ。保育園とか託児所をつくって希望にかなう態勢を強化することも必要だが、横浜市では子育てコンシェルジュという制度があって、たとえば8100人でもある人は朝の2時間、ある人は夕方の3時間とか、ニーズが違う。子育て終えた45-60歳ぐらいの女性を各地区に配置して悩みを聞いて行政に反映させる。これはとても評判が良い。東京が取り入れてもいい。それから3世代同居型の団地ができないか。1階にお年寄り、高層階に家賃を安くして若い人が住む。昔の大家族制度のようなものが団地や町内会でできないか。
舛添:私は厚労相のときに頑張ってやったがまだゼロになってない。この4年間で誰でも保育所に入れるようにしたい。たとえば多摩ニュータウンの建て替え、高層化で1階に介護施設と保育所を設けて、都議会の自民、公明も同意していますから、予算的な問題も片付く。
細川:実数はその数倍と言われている。女性が社会進出して仕事に就くのが当たり前の時代になった。待機児童の問題は女性がもっと仕事について、日本がもっと発展していくか、その活力は女性が握っていると言っても過言ではない。お二人の言ったこと、いずれも同感。有資格者の就労支援や待遇改善などを通じて、私も4年でゼロと言っている。
宇都宮:待機児童の問題は深刻。我々の試算では2万人ぐらいいる。早急に解決するには保育園と保育士を増やす。環境が整うことで、お母さんたちが働ける環境づくりをやりたい。待機児童の問題も深刻だが特養ホームに入れない高齢者が4万3千人越えている。これも力を入れてなくしていく。医療も18歳までの無料化、将来的に65歳、当面75歳以上の医療費を無料化する。高齢者が街に出られるように、都営交通のシルバーパス無料化を復活させたい。
――実際にどうやって足りるような形にもっていくのか
田母神:実際には家庭で子育てしたい女性も多い。家庭で子育てに専念する女性も都営アパートの家賃を減免するとか、何らかの支援を得られるような態勢に。多様なライフスタイルを。
――だけど今、問題になっているのは、子どもを預けたくても預けられない…
田母神:だけど現実には、保育所1人預かるのに60万円ぐらい経費がかかっている。ひょっとしたらほかに方策があるかもしれない。
舛添:最大のネックは土地の値段が高いこと。ところが使用されてない都有地がいっぱいある。新しい仕組みをつくって、都民のものだから家賃タダ同然で使ってもらっていいじゃないか。あとは規制緩和。都でやれることは認証保育所をやって先行的に、100%基準を満たさなくても8割型満たしてれば(認証する)、そういう緩和もやりたい。
――成長産業ではない。担い手の育成はどうする
細川:資格を持っておられる方々に呼びかけてできるだけ寄り合っていただく。待遇の改善の問題が密接に絡んでくる。それはできないことではない。待遇をアップするしかない。場所については、今お話があったように、活用できる場所がいくつかあるし、これから人口も減っていく。そういうところを有効活用して民間にも参入してもらって活用していくことで何とかやっていける。
――都が事業計画などで先行取得していく土地などのことかと思うが
宇都宮:都有地は舛添さんが言われたような、空いたところがありますから、活用するのが最優先。保育士は賃金が非常に安い。介護の労働者も賃金が安い。保育園増設だけじゃなくて働く人を育成して労働条件を改善する。そうすれば新たな雇用が生まれる。保育園や特養を建設することで仕事が生まれて雇用を増やす経済効果がかなりある。
田母神:雇用だけでは難しくなってくるのかな、と(思う)。3世代型みたいな住宅ができて、田舎だと「ちょっと子どもお願いね」と出かけられる。ああいうシステムがもっとできれば、東京ももっと優しい街になる。
宇都宮:住宅の問題は重要で、石原・猪瀬都政で都営住宅を1戸も建設してない。ところが都営住宅に入りたくても入れない人が20万人を超えている。民間の75万個の空き家を買い上げて公共住宅にする。住まいの問題も重要。
【東京オリンピック】宇都宮氏「8万人入る競技場、集められるのは嵐とAKBだけ」
――オリンピックまであと6年、どのようなオリンピックにしたいか。計画を見直すつもりはあるのか。
舛添:最高のおもてなしをして史上最高のオリンピックだったな、といわれるようにしたい。施設もちゃんとしないといけないし、道路、交通、鉄道網をまだ改善しないといけない。首都高速の老朽化したところの整備もしないとけない。テロリストがいるといけないんで治安対策もがんばってやる必要があるだろう。都民の皆さんにも通訳ボランティアやってもらって、みんなの力で成功させたい。
細川:ロンドンオリンピックは持続可能性をうたった最初の五輪。これから東京の後続いてやるところが、これから先は各国とも財政課題かかえてるから、過大な投資ができない。だからロンドンの考え方を継承していくべきだ。今度は自然エネルギーをフルに使って原発ゼロにして再生可能エネルギーとか、エネルギー効率化をして、選手村などあらゆるもので、自然エネルギーを使ったオリンピックを世界にアピールできたら、世界に衝撃を与える。
宇都宮:シンプルで環境に配慮したオリンピックにすべきだ。あとの競技施設の利用を考えた建設が必要で、多額の投資で巨大な建物を造るのは卒業しなければいけない。新国立競技場の建設や、自然生態系が豊かな葛西臨海公園のカヌー競技場は見直す必要がある。全国民が歓迎できるオリンピックのため、東日本大震災の被災者支援や、原発事故被災者の救済を急ぐ必要がある。アジア諸国との関係改善が必要。東京の街をバリアフリーの街にすることも重要。
田母神:1964年を見てもわかるように、公共事業をどんどん行って景気を良くし、国の経済が強くなって日本を発信するチャンス。さすが日本、さすが東京と呼ばれるオリンピックにする必要がある。東京のインフラが老朽化しているので総点検して耐震性を強化する。これにあわせて万が一震災が起きたときに、即時に救助活動に警察や消防や自衛隊や民間土木会社などがどっと動けるような体制にしておくべきだ。日本は今、災害起きてからどんな組織で動くか話し始める。諸外国に比べると遅れている。
――その象徴となっているのは新国立競技場。総工費1692億円となっているが。
宇都宮:見直す。8万人が埋まる競技場、終わったらどうする。8万人集められるのは嵐とAKBだけ。使いようがない。
細川:私も過大な施設は見直すべきだ(と思う)。
舛添:8万人を収容してやることを前提に誘致が決まった。もちろん後どうするか考えないといけないが、慎重に見極めないと。すべて施設の基本方針は決まっているが、改善すべきは改善するという立場で望みたい。
田母神:舛添さんとまったく同感。オリンピックで必要なものは必要だ。最大限に日本の発信、宣伝に使うべきだ。あとあと効果もあるし、経費を効率的にやることももちろんだが、計画の延長上にやるべきでは。
――開催地の選定段階ですでに約束しているが、今から変えるのは可能か
宇都宮:ロンドンもメーンスタジアムは仮設の椅子も使った。終わったら仮設を取り除いた。今回は常設8万席。固定化するのはどうなんでしょうか。終わった後も維持が大変だし、赤字だけが残る。
細川:柔軟にそこのところは対応できることがあるんじゃないか。
田母神:デフレですから公共事業やらないと景気回復は無理。これが必要だと思ったら金をかけて景気回復すれば税収が増える。今年の東京も3000億の税収が増える。公共事業をやめてきたのがこの十数年だが、景気は回復していない。
【原発】田母神氏「福島の原発周辺は危なくない。動物は元気に走り回っている」
――原発ゼロを訴える方は、どのように実現するのか
宇都宮:東京電力の大株主なので、福島の廃炉と柏崎刈羽の廃炉を提案する。自然エネルギーの支援を全力あげてやる。ただ途中経過として火力の利用は必要だ。もう一つ、脱原発を進めるためには被災者の支援。福島の原発の被害者が東京にも6千人近くがいる。この人たちの被害救済と向き合った形でやらないといけない。それから脱被曝。東京にも放射線量の高い所がある。子供の健康守るために東京都自ら線量を調査して、子どもの安全、給食の安全を守る政策が重要。
細川:今言われたこととダブることは控えるが、株主として東京都が言いたいことを言える責任も資格もある。まさにこれからは脱原発。即ゼロを明確にして初めて自然エネルギーが成長産業になる。そう考えると即ゼロと言って初めて日本の経済がもたらされる。東京が先頭に立って、具体的には首都大学東京で戦略をいろいろ考えていただきたい。
田母神:原発を安全に使いながら景気回復をしていくべきだ。今は原発をほとんど止めてているから年4兆円の油代がいる、国民生活を豊かにするはずの4兆円が産油国に取られているから、景気回復は難しいし、電気代が15%上がってる。中小企業の経営も苦しい。原発を使わなかったら中小企業が次々つぶれていき、日本経済はどうしようもなくなる。原発を50年使ってきて運転中の事故で死んだ人はいない。実績からみれば原発の安全を確保しながら電力を供給することは可能。
舛添:将来的に原発依存しない社会をつくっていくべきだ。東京は最大の電力消費地。福島、新潟の生産地の方にお世話になって本当にありがとうございます。供給地からみると使うばかり。都民は全体エネルギーの6%しか自然エネルギーを使っていないので、20%に上げる。その分を原発をなくしていく。
――再生可能エネルギーは電気料金の値上がりが心配だ
細川:経過的な問題としてあるでしょう。しかしドイツでは6年で20万人も雇用が増えた。
田母神:日本の放射線量ですね、基準が厳しくて原発が危ないことになっていることが多い。たとえば1リットルあたり10ベクレルの放射性物質を超えると日本では汚染水だが、欧米より100倍以上厳しい。
――人件費、コストもかさんでくると思うが
細川:全体として成長が非常に伸びているということが言われているから、私は日本も一刻も早く切り替えるべきだと思う。
舛添:火力発電を増やせばCO2の問題もある。コストをかければ経済が動かなくなる。しかし全体のバランスのかじとりをするのがリーダーだ。
――再稼働に反対しているが、再稼働しないと東電の事業計画では電気料金を最大10%値上げするということになっている
宇都宮:事故を起こしたら大変な損害賠償が発生する。廃炉の費用、高レベル放射性廃棄物の処理をほとんどコストに入れていない。原発は実は高い。化石燃料の価格交渉をきちんとやっていない。交渉すればもっともっと天然ガスやシェールガスが増えて電気代の高騰はかなり抑えられる。その努力をしてこなかった。
――安全に絶対はない。どうやって安全を確保するのか
田母神:どんなものにもリスクはある。だけど福島の原発周辺はたぶん放射能的に危なくない。動物はみんな元気に走り回っている。原発の上を飛んでいるカラスも落ちてこない。だけど危ないといって強制避難させている。放射能で障害を受けたり、亡くなったりした人はいない。強制避難でいっぱい亡くなっている。核のゴミでいっぱいになるとか、核の技術者に聞きました。柏崎刈羽の7基を23年間使って、総量は10メートルの立方でしかない。再処理すればもっと減る。もんじゅと六ケ所村の再処理施設を使って核のリサイクル循環型を目指してきた。それが止まってしまうことが恐ろしい。韓国も中国も使っているのに、日本だけ止めたってどうにもならない。
【政治とカネ】細川氏「猪瀬さんのことは関心がない」
――今回の知事選は猪瀬前知事の問題が発端だった。どう考えるか。知事になったら猪瀬氏を追及するか
細川:猪瀬さんのことはあまり関心がない。どういう経緯なのかつまびらかに承知しない。私もいろいろ言われました。20年前のことを党利党略で取り上げられて、その当時私を追及していた方々が、真実はこうだったと最近発言している。とにかく人気のあった細川政権を倒すために政争の具にした。そういうことはこれから勘弁してもらいたい。猪瀬さんと私は全く異なる。私のホームページでも掲載している。
――猪瀬さんを追及するお考えはない?
細川:それは検察にお任せします。政治資金の問題は公明正大にやっていくことに尽きる。
宇都宮:猪瀬さんのお金は単なるスキャンダルではない。徳洲会という東京都が許認可権限を持ち、過去に補助金も出している、そういう医療法人から5千万円を受け取ったのは非常に問題だ。しかしこれは東京都においても真相究明は必要だと思ってますので、知事になったら都議会に要請して百条委員会設置を要請する。金や利権と決別したクリーンな都政をつくることが必要。
田母神:政治家はきちんと法律を守って法の範囲内で行動すべきだ。猪瀬さんの件は検察に任せればいい話。都議会が前知事のスキャンダルを追及するひまはない。
舛添:すべて法に則って適切に処理すべきということに尽きる。都議会で追及されたが、十分やったかどうかは有権者が判断する。私は知事になったら、防災、景気回復、政策の優先順位をつけていく。
――都の年間予算は13兆円。誘惑も少なからずあると思うが、決別する姿勢を示すべきだと思うが、たとえば任期中は政治献金を受け取らないということを示すということは考えていないか
細川:難しい。現実に政治にはお金がかかる。
田母神:法律に則ってきちんとやること。うちの事務所にも、5人でコーヒーのみに言ってもおごるなと。きちんとやっていればいいんではないか。
舛添:一緒にカンパして頑張ろうという方の献金まで断るのは政治活動できない。
宇都宮:企業からの献金は受けつけない。都が許認可権限を持つところなどの献金は受けるべきじゃない。
舛添:それは都でも決まっている。それを守ればいい。
田母神:都職員の皆さんからの信頼を得られなければ仕事はできない。
宇都宮:都民からの不信も抱かれたら困る。