自衛隊の輸送艦「おおすみ」が1月15日、広島県大竹市の沖の瀬戸内海で釣り船と衝突した。釣り船は転覆して乗っていた4人が海に投げ出された。全員を救助したものの、このうち2人が心肺停止の状態という。NHKニュースが以下のように報じた。
第6管区海上保安本部によりますと、15日午前8時すぎ、広島県大竹市の阿多田島の沖合で、近くを航行していた海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」から、「4人乗りの釣り船に接近して釣り船が転覆した」と無線で連絡がありました。
海上保安本部によりますと、4人は全員男性で、海に投げ出され、「おおすみ」により全員が救助されましたが、このうち2人は心肺停止の状態だということです。
(NHKニュース「海自輸送艦と釣り船衝突 2人心肺停止」2014/1/15 10:03)
今回の事故について、小野寺五典防衛相は「責任者として誠に遺憾」と会見で話している。時事ドットコムは次のように伝えている。
小野寺五典防衛相は15日午前、海上自衛隊輸送艦「おおすみ」と漁船の衝突事故を受けて防衛省で記者会見し、「防衛省・自衛隊の責任者として誠に遺憾に思う。乗員の方の一刻も早い回復をお祈りしたい」と述べた。
(時事ドットコム『小野寺防衛相「責任者として遺憾」=捜査への全面協力指示-海自艦事故』2014/01/15 10:33)
海上自衛隊の艦艇が民間の船と衝突した過去の例は、1988年に、潜水艦「なだしお」が神奈川県の横須賀沖で遊漁船と衝突し、30人が死亡したほか、2008年にイージス艦「あたご」が房総半島沖で漁船と衝突し、漁船に乗っていた親子2人が死亡している。
■「おおすみ」にも空母と疑われた過去が
「おおすみ」は全長は約180メートルある大型の輸送艦。1998年に就役した。広島県の呉に司令部がある「第一輸送隊」に所属し、中に揚陸艇や陸上自衛隊の戦車を格納できる機能がある。かつて自衛隊のイラク派遣部隊の車両輸送をしたほか、2013年11月には台風30号で大きな被害を受けたフィリピンの被災地に支援物資を輸送している。2014年度には、離島防衛に向けて輸送機「オスプレイ」を搭載できるように改修が予定されていた。
釣り船と衝突した海上自衛隊輸送艦「おおすみ」は、離島防衛・奪還作戦における「海兵隊的機能」を付与するため、隊員を乗せて前線に進出する水陸両用車や、垂直離着陸輸送機オスプレイを搭載できるよう、来年度から大規模改修を始める予定だった。
(MSN産経ニュース『衝突の自衛艦「おおすみ」大震災でも物資輸送、離島防衛用に来年度大幅改修予定』2014/1/15 12:43)
2013年に進水式を行った護衛艦「いずも」が「どう見ても空母なのでは?」と話題になったばかりだが、実は「おおすみ」も就役時には「空母ではないか?」と騒がれていたという。
全通式甲板を持つことから就役時に「空母か!」と騒がれましたが、形が似ているだけで性能は輸送艦そのものです。
軍事ジャーナリストの清谷信一さんは「おおすみ」を建造した理由は、海自がいずれ空母を保有するための布石だったのではないかと、「WEBRONZA+」の記事で推測している。
海自がおおすみ級を建造した最大の目的は「単なる輸送艦」に全通甲板を持たせることだったのだろう。つまり、政治家やメディアを含めた国民に全通甲板を持ったフネ=空母ではないよ、という刷り込みをおこなうことが最大の目的だったのだろう。むろん、それは今後空母を持つための布石の一歩だ。
(WEBRONZA+「おおすみ級~いずも級 空母保有に向ける海自の野望と緻密な世論誘導」)
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