「ダース・ヴェイダーがイクメンだったら...!?」暗黒卿に学ぶ子育て術 −大人が読みたい絵本

絵本『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』(辰巳出版)は、あの映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場する暗黒卿ダース・ヴェイダーが4才の息子ルークをひとりで育てるストーリーだ。奇想天外な設定が反響を呼び、大人向けの絵本ながら13万部のヒットを記録。
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遠い昔、はるか銀河の彼方で……

エピソード3.5:

ダース・ヴェイダーとルーク(4才)

シスの暗黒卿ダース・ヴェイダーは、

反乱同盟軍の英雄たちと戦うべく、

銀河帝国軍を率いる。

だが、そのまえに、まずは4才の

息子、ルーク・スカイウォーカーと

遊んであげる必要がある……

こんなフレーズで始まる絵本『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』(辰巳出版)は、あの映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場する暗黒卿ダース・ヴェイダーが4才の息子ルークをひとりで育てるストーリーだ。奇想天外な設定が反響を呼び、大人向けの絵本ながら13万部のヒットを記録。続編の『ダース・ヴェイダーとプリンセス・レイア』と合わせて、21万部を突破する人気シリーズとなっている。

今回は、翻訳出版の編集を担当した辰巳出版の小泉宏美さんに、絵本の魅力や制作秘話、ダース・ウェイダーの子育て術について話を聞いた。

■働きながら子育てに奮闘する父親ダース・ヴェイダーに共感

「けっこうやさしいんですよね(笑)。ダース・ヴェイダー」

小泉さんは、絵本のなかで子育てに奮闘するダース・ヴェイダーの魅力について「実際の映画では、ルークとダース・ヴエイダーは敵同士ですし、本当の親子として接する機会はほとんどないですが、絵本のなかのダース・ヴェイダーは、ルークと一緒にお絵描きしたり、子供の成功を誇らしげに隣にいる人に伝えたりと、とても愛情豊かにルークを育てています」と説明する。

絵本のなかのダース・ヴェイダーは、暗黒卿として帝国軍を指揮しながら、4才のルークを懸命に育てている。朝ごはんを作り、食事のマナーを教え、寝る前には絵本を読み聞かせをする。ひとりの父親らしく、自由奔放なルークを温かく見守っている。

一方で、働きながら子育てをする親ならではの悩みも描かれている。部下を前にしたダース・ヴェイダーの傍らで泣き叫ぶルーク。マスターに呼び出されているときも、ルークは遠慮なく「パパ! パパ! パパ!」と話しかける。仕事に集中したいときも、「聞いてよ!」……。ダース・ヴェイダーでなくとも、親なら思わず共感してしまうポイントがいくつも描かれている。

銀河帝国に名を轟かず暗黒卿が、子育てする父親として、私たちと同じ悩みを抱えて悪戦苦闘している。その意外性と共感性が、絵本の魅力のひとつとなっている。

■「スター・ウォーズ」ファンも、そうでない人も楽しめる作品

小泉さんは当初、「40代以降の熱烈な『スター・ウォーズ』ファンのお父さん」を読者の想定をしていたという。

この絵本を手がけたアメリカのグラフィック・ノベル作家、ジェフリー・ブラウンさんが筋金入りの「スター・ウォーズ」ファンだったからだ。ブラウンさんは、小さい頃から映画『スター・ウォーズ』を観て、アクション・フィギュアで遊び、スター・ウォーズのトレーディング・カードを集めていたという。

しかし、予想に反して「スター・ウォーズ」ファンだけでなく、スター・ウォーズにそれほど詳しくない一般の20〜30代の女性にも響いたようだ。

「ルークがかわいい、絵がかわいい、というのが一番の魅力だったようです(笑)。女性の方には、父の日のプレゼントにされた方もいらっしゃいましたね。絵本をきっかけに、映画を観たくなったという声も寄せられましたね。女性の方には、父の日のプレゼントにされた方もいらっしゃいました」

もちろん、ファンにとっても「スター・ウォーズ」の世界観を存分に楽しめる作品になっている。絵本のなかでルークが遊んでいるのは、すべて「スター・ウォーズ」に登場したキャラクターやアイテムたち。壁に貼ってあるポスターや、ダース・ヴェイダーと一緒に聴いている音楽まで「スター・ウォーズ」好きは楽しめるという。

■「スター・ウォーズ」の世界観を大切にした作品

この作品は、富永晶子さんが翻訳、高貴準三(たかぎ・じゅんぞう)さんが監修を担当している。ともに「スター・ウォーズ」関連書籍の翻訳を多数手がけるなど、「スター・ウォーズ」の世界観をよく知るふたりだ。

小泉さんは、翻訳作業について「日本語版でもキャラクターならではの言葉遣いを大切にしましたね。普通に読むと違和感のある言葉に思えるものも、映画にベースとなるシーンがあり、そのままのほうがいいとご意見をいただいたり……。おふたりのおかげで、『スター・ウォーズ』の世界観を生かした絵本になりました」と振り返る。

監修の高貴さんは、本書の魅力や反響についてコメントを寄せる。

「『スター・ウォーズ』愛が強い人ほど楽しめる本です。エピソード1~3は観てなくても大丈夫。「クラシック」「旧3部作」と呼ばれる、1977~1983年に発表されたエピソード4、5、6を好きな人向け、つまり大人向けの絵本なので、決して子供へ読み聞かせるための本ではありませんでした。だから、これほど多くの人々に支持されるとは想像できませんでした」

「スター・ウォーズでほのぼの、ほっこりした気分になれる本は、これが初めてでしょう。好きな部分は、物語(やネタ)以上に「4才のルーク」の可愛さでしょうか。やや猫背のヴェイダーは、今なら「あまちゃん」の主人公みたいで……これも好感度というのでしょうか?」

■もしもダース・ヴェイダーがイクメンだったら……

小泉さんによると、映画をよく知っている人からは、「もしもダース・ヴェイダーとルークが、本当に親子として過ごす時間があったとしたら……想像したら感動して泣けてきた」「実際にそんなシーンはないけれど……もしあったとしたらと思うと感動した」といった感想が寄せられたそうだ。

絵本には、不器用なダース・ヴェイダーがルークの誕生日プレゼントを用意する場面が描かれている。絵本のように、ダース・ヴェイダーが子育てに熱心なイクメンだったら、ふたりが同じ時を過ごし親子の絆を感じることができていたら……映画『スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲』はなかったかもしれない。また違う物語が生まれていたかもしれない。そんな思いを巡らすのも、この絵本の楽しみなのだろう。

続編『ダース・ヴェイダーとプリンセス・レイア』では、4才のプリンセス・レイアが16才の少女になるまでが描かれる。レイアの反抗期や思春期、恋の悩みを通じて、ダース・ヴェイダーが女の子を持つ父親のとまどいに直面している。2014年度版のカレンダーには、クリスマスを過ごすダース・ヴェイダーとルークなど、新たな書き下ろし作品も収録されている。

子供を持つお父さんやお母さんは、この機会に、働きながら懸命に子育てをするダース・ヴェイダーの絵本を読んでみるのもいいだろう。

※ダース・ヴェイダーの子育て絵本を読んでみたいと思いますか? あなたの声をお聞かせください。

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