米国の約100都市で12月5日(米国時間)、ファストフード店の従業員によるストライキが行われた。参加者たちは、「時給を15ドルまで引き上げること」と、「報復を恐れずに組合を結成できる権利」を主張した。
このストライキの背景にある経済的状況を、以下で説明していこう。
米国のファストフード店の従業員に対する賃金の中央値は、時給8ドル90セントだ。
この金額は、米連邦政府が定める最低賃金の時給7ドル25セントをやや上回ってはいるものの、一般的な生活を送るのに十分な額であるとは到底言えない。
実際、「女性のための機会拡張の会(WOW)」が行った分析によると、米国でもっとも安く生活できる場所であったとしても、家賃や食費、光熱費などの基本的な出費をまかなうには、時給にして10ドル20セントが必要になるとされている。米国内全体で見た場合は、生活の維持には14ドル17セントの時給が必要だ。
ファストフード店の多くは、従業員の生活に対する十分な賃金を支払っていない。この事実は、企業側も認めている。マクドナルド社にいたっては、従業員に対して、副業を持つことや、フードスタンプ(低所得者向けの食料費援助)に応募することを勧めている。マクドナルド社は従業員向けに、毎月の生活費をどう管理するかというページを立ち上げたが、それは副業が前提で、退職金はもちろん、暖房などの必要な費用がほとんど入っていないと批判された(以下の動画)。
ファストフード企業側は、店舗のほとんどはフランチャイズ経営であり、わずかな利益で運営されているため、従業員の賃金を上げることは難しいと主張している。
全国レストラン協会(NRA)の政府業務担当副会長を務めるスコット・デファイフ氏は、メールによる声明の中で、「外食産業は、景気後退期にも継続して雇用を創出した数少ない産業の1つであり、過去数年間で何十万もの新規雇用の機会を提供している」と主張している。
確かにそのとおりだ。ファストフード業界は過去14年間にわたって、ほかのどの業界よりも仕事をつくりだしている。しかしそれは、高賃金の仕事が少なかったことが原因とも言える。過去3年間に創出された雇用の半分は、賃金が低い仕事なのだ(以下のグラフ)。
ファストフード店で働くのは、お小遣いを稼ぎたい若者たちだけではない。従業員の約40%は25歳以上で、子育てをしている人は25%以上にのぼる。また、従業員の31%が大学以上の教育を受けている。
この結果として、結局は、ファストフード店の低賃金を社会保障がカバーすることになる。以下のインフォグラフィック(左側)は、それぞれのファストフード企業の労働者たちが、社会保障から年間どのくらいの補助を受けているかをまとめたものだ。マクドナルド社の場合、この数字は12億ドルにもおよぶとされている。
Infographic by Alissa Scheller for the Huffington Post
従業員たちが、育児費を得るために複数の仕事をしたり、病気でも職場に向かったりする一方で、企業のトップたちは多額の給料を得ている(上のインフォグラフィック右側では、マクドナルドCEOの給料と、時給8ドル94セントで1週間24時間働く従業員の給料を比較している)。
ブルームバーグが行った分析調査によると、マクドナルド社の前CEO、ジェームズ・スキナー氏の給料は、一般従業員の平均賃金と比べて351倍だったという。また、ケンタッキーフライドチキン、ピザハット、タコベルなどの企業を保有するヤム・ブランズ社のCEOには、一般従業員の819倍の給料が支払われている(2011年)。
[Jillian Berman(English) 日本語版:兵藤説子、合原弘子/ガリレオ]
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